第百八十八話・予定通りに行こう
「んな事、あたしにもわかるって!でも王家がこの案件に絡んでくる
可能性は少ないと言うか、多分ないと思うよ?」
「はぁ!なんでそう言い切れるんだよ!」
「だっていくら名前が一緒だからといっても、この人相書きとレンヤの顔は
全く違い過ぎるじゃん。くさっても依頼主は王家なんだよ?だから余程の
現状証拠でもない限りは誰も迂闊な情報を訴え出るなんて行為、絶対に
しないと思うよ♪」
「そ、そうなのか?」
「そうそう。レンヤも言ったけど、王家は厄介で面倒だからねぇ。あやふやな
情報を鵜呑みにして王家に報告したら、あの小太り貴族が王家から怒りを
買っちゃうだろうし。それにあの小太り貴族にしても、あいつら貴族達が
理不尽の塊で出来てるっていうのは平民なら誰もが知る所だし、だから
不確定な情報なんて、誰も迂闊には持っては行かないって♪」
ああ......確かにそうだった。
「俺もあの城の連中の一件で、その理不尽さをたっぷり味わい体験した
から、どういう扱いを貴族らから受けるのか、思いっきり想像が
つくよ......うん」
「まあ、そんな訳だから、最悪な事でも起こらない限りはギガン城に
レンヤの情報が行く事もないだろうし、それにギガン城の連中があんたを
それに描かれた人相書きと思っているんだったら、例えギガン城から
レンヤを捕縛する為に来たとしても、気づかれない可能性が大きいだろうし。
これを踏まえると、ギガン城からの追っ手を恐れる必要がなくなったと
見てもいいかもねぇ♪」
王家からの追っ手を気にしているレンヤに対し、あっけらかんとした態度と
表情で、ルコールが貴族どものプライドと愚かさ、そして追っ手がこないだろう
理由を十二分に説明し終えた後、
「......で、これからどうする、レンヤ?」
...と、レンヤに聞いてくる。
「ん?これからどうするって、一体なにをだ?」
「いや、だからさ。王家からの追っ手を取り敢えず心配をしなくても
よくなったわけだし、前に立てていた予定を変更してこのリタイの町で
しばらくの間、旅の路銀や資金稼ぎをしていくのかどうかって聞いたの!」
「ああ、はいはい。なるほど、そういう事ね。いいや、今の所は予定の
変更はないかな?」
「え?何で?」
「あの城には俺を見知った連中も数人はいるしな。もしそいつらがここ...
リタイにやって来て俺を見たら、一発で俺だというのがバレてしまうのは
瞭然だしな...」
「見知った連中...ああ、はいはい。リコット王女やあんたと一緒に召喚されたって
いう、勇者達の事だね?」
レンヤの言う連中が誰だと首を軽く傾げ思考すると、しょうかん主のリコット
王女とそのリコット王女にてレンヤと共に召喚されたという勇者達を思い出す。
「そういう事。そいつらがここに来る可能性は決して低くないと思うからさ......」
「それこそ大丈夫だと思うけどな。だって、リコット王女は立場状からそんな気楽に
あっちこっちと行ける訳がないから論外だし、勇者達だってこんな何もない辺鄙な
町に来る可能性はないと思う。だから、あの小太り貴族の様な三流がここに来た
訳だしさ!」
「た、確かに王族上位の立場にいる王女様が先頭をきってお尋ね者を追ってなんて
くるわけがないか。それに魔王を倒すべく呼ばれたあいつらもまた然り......か」
「でしょ♪でもまあ、どうしてもレンヤがそれを気になり、心配するって
いうんなら、あたしはレンヤの決定に従うよ!で、どうする?この町にしばらく
残っちゃう?それとも......?」
「う~ん。そ、そうだな......」
王女様やあいつらがここに来る可能性が少しでもある限り、慎重に越した事は
ないだろうからなぁ........。
「よし...決めた!やっぱり宿屋で決めた予定通りに行動をするぞっ!」
「それじゃ予定通りの日に、このリタイを離れるって事でいいんだね?」
「ああ、それでいい。そういう訳だから、その予定の日にここを出る為にも
隣の大陸の地図を買いに行くぞ!」
「オッケー♪その地図を買った後は、ギルドに寄って薬草集めのクエストだね♪」
俺はルコールと今後の行動を改めて話し合った結果、予定通りにこの町を出て
いく事を決定し、今日の予定を実行するべくアイテムを買うべく店の並ぶ通りへと
移動を開始した。




