第百八十二話・アイス・カッターの名付け
う~ん。こ、この子に名前かぁ。
「しかしここ名前をつけてしまったら、キャンセルという道が完全に断たれて
無くなってしまうしなぁ......」
「はう!?そ、そんなに...おじさんはボクの事、キャンセル...したいんっすか?
う......ぐす......ううぅ...ひ、ひく......うぐぐ」
レンヤのどうしようかという悩んでいる姿を見て、アイス・カッターの少女の
目尻に再び涙が溜まっていき、ポロポロと落ちていく。
「おいおい...レンヤ......」
「ハァ...レンヤ様......」
ちょっと、ギルマス&サオリナさん!
そ、そんなジト目でこっちを見んといてぇぇぇっ!
「で、どうすんのよ、レンヤ?やっぱ面倒だっていうなら、いっそそいつを...
あ、ついでにそっちの赤いのも纏めてこの世から完全に消し去ってあげっよか♪」
俺がどうしようかと困っていると、ルコールが再び身を乗り出し、両の指を
ワキワキとさせながら、ニヤリとした笑顔で物騒な事をのたまう。
「「―――け、消すっ!?」」
すると、フレイとアイス・カッターの少女が目を大きく見開き喫驚して
動きをピタリととめる。
「あ、主ぃぃいぃ~~~っ!」
「お、おじさぁぁぁ~~~んっ!」
そして慌ててふためきながら、俺の後ろにやってきてその身を隠す。
「お前の消すはマジでシャレにならんからやめろ。ほれ見てみろ、この子達も
お前の闘気にスッカリ怯えて震え上がっているじゃないか!」
俺はルコールに待ったをかけて静止させると、寄り添って震え上がっている
二人の少女の頭をよしよしと撫でて落ち着かせる。
「ふぅ...しかたない。よし、わかった!つけるよ、キミの名前つけてあげる!」
レンヤが息を軽く吐くと、アイス・カッターの少女に顔を向けて名前をつける事を
渋々とだが承諾する。
「ホ、ホントっすか、おじさん!ありがしゃっす!そんじゃ早速、よろっす!」
それを聞いたアイス・カッターの少女は顔を大きくバッと俺に向けると、レンヤを
期待と羨望に満ちたキラキラした両の瞳で見つめてくる。
「あはは、了解。さて......アイス・カッターだから......」
う~ん、そうだな.....フレイと一緒の感じでアイスからアイとつけたいけど、
恐らくルコールのやつ、めっちゃ小馬鹿にしてくるだろううな。
じゃあ、氷...こおり...りおこ......
「え、えっと、氷を逆読みした言葉から取った『リオ』というのはどうかな?」
俺が顔を少し下に俯いてしばらく思考した後、何とか捻り出した名前を口にする。
「おお!結構頑張ってそれっぽい名前つけたじゃん♪レンヤの事だからさ、
アイスとかアイとかってつけると思ったのになぁ~♪」
ルコールが俺のネーミングセンスに対し、ケラケラと笑いつつも、一応のお褒めの
言葉をくれる。
ぐぬぬ...悪かったな、本当にネーミングセンスがなくてさ!
「そ、それでどうする?フレイと同様、キミの魔法名の省略から取った名前を
つけてみたんだけど?キミと認識しやすいし、呼びやすいと思ったからつけた
名前だったんだけど?も、もしもキミがこの名前が嫌だって言うんなら、
他の名前を考えても良――」
「あ、はい。他の名前でヨロっす!」
レンヤの考えた名前...『リオ』をアイス・カッターの少女はあっさりと
した口調で速攻に却下しまう。
「えええぇぇぇっ!」
そ、そこはさぁ...渋りつつも仕方がないってオッケーとする所だと
思うんだけど...
別にいいじゃん、リオでさぁ!良い名前じゃん!
可愛いじゃん!
自分の魔法の文字が入っているんだぞ、それでヨシとしておこうよ!
俺ってば、ルコールの言うようにネーミングセンスが皆無なんだからさぁ~っ!
まさかここまでアッサリと断ってくるとは思わず、俺の思考はそのせいで
テンパってしまい、頭の中がグルグルと回っていた。




