第百四十二話・仲の良い、おっさん達
「だ、誰がハゲ顔だぁ!ごらぁぁあっ!これは剃っているだけだって、
何度も何度も言っているだろうがぁぁっ!!それに人の名前を
笑うんじゃねえぇぇぇっ!失礼千万だろがぁぁあぁいっ!!」
「わかってるって、わかっていますって......うぐ、うくくく♪」
「なら、笑うんじゃねぇぇぇよっ!このぉ、このぉおぉぉっ!!」
「いででで、ひひゃるな、ひぎれる...く、口がひぎれるからぁぁ~~!」
カンカンに怒っているギルマスが、これ以上笑わせるかと言わんばかりに、
レンヤの口を指で左右にグイッと力任せに引っ張り上げる。
「あらあら。あなた達ってとっても仲が良いんだね♪」
俺とギルマスのやり取りを見た女将さんが、笑顔の表情でクスクスと笑う。
「ところであなた?」
「――うへ?な、なんでしょうか、女将さん?」
「あなた、この町ではあまり見かけない顔だよね?いつ、どこでこの
ハッピーちゃんとお知り合いなったの?」
「あ、はい。それはですね、先日...いや、正確には日が替わったので
先々日になりますか?その日にここ...リタイの町に冒険ギルドに加入したく
田舎から遠路遥々とやって来まして、そして冒険ギルドにて冒険者の登録を
させてもらっている際、そこにいるギルドマスターがその場におりまして、
ギルドマスターとは年齢も近いという事もあって、それから仲良くさせて
いただいている次第です」
女将さんの質問に対し、俺はギルマスとの出会いを真面目なトーンで
説明すると、
「ええ!あ、あなたって冒険者だったの?そ、そういえばあなた、さっき
先々日に冒険者の登録をしたとか言っていたわよね?そ、その...わるい
言い方になってしまうけど、あなたって結構な年齢だよね?さ、流石に
その年齢で冒険者をやるのは、少々おキツくはなくて?」
俺の説明を聞いた女将さんが、同情した表情をして俺にそう述べてくる。
「あはは。キツイと言われれば、正直キツくはありますね。ですが......」
俺はそう言うと、この町に来た時に門番へ話した、あの嘘の言い訳を
女将さんにもう一度説明していく。
「そっか...それは一大決心をしたものね♪でもワタシ、そういう気概を
持った人は嫌いじゃないわよ♪」
俺の言い訳を聞き終わった女将さんが、感心と敬意の込もった表情で
パチンッと軽いウインクをする。
「あ、ごめんなさいね、いつまでもお客様に立ち話をさせてしまって。
取り敢えず椅子に座って下さいな、二人とも♪」
「おう。そうだな、そんじゃ...よっこいしょっとっ!」
「それでは、失礼して...」
女将さんが立ち話をさせてしまって申し訳なかったと謝罪した後、
俺とギルマスは女将さんの目の前のカウンター席に移動して椅子に
腰をトンと下ろす。
それから俺とギルマスは、女将さんの作った料理をつまみながら、
酒を酌み交わしていく。
そしてその際、ギルドから紹介されたあの宿屋で遭遇した、あのAランク
パーティのポンコツどもに絡まれた経緯を、愚痴と説教を入り混ぜながら
ギルマスに全て伝える。




