第百三十六話・そうだ!似顔絵を描こう!
「記憶しているなら良し!だったらさ、その勇者のおじ様の似顔絵を
描けるって事だよね?」
「え?あの御方の似顔絵を......ですか?」
リコットはアリアの案に対し、どういうことだと首を傾げてハテナ顔を
見せる。
「うん、似顔絵。リコットが描いた勇者のおじ様の似顔絵をさ、ここから
一番近い町に『この人を探しています。』っていう感じで貼り出して情報の
提供を求めるんだよっ!」
「わ、私の描いた似顔絵で、あの御方の情報をですか!?」
「そうそう♪私もレンヤおじ様の似顔絵を描くからさ、リコットもその
追い出してしまったっていう勇者のおじ様の似顔絵を描いて、私の似顔絵と
一緒に町に貼り出そうよ!」
アリアがしたり顔で人差し指をビシッと突きつけると、リコットに
そう述べる。
「その似顔絵を見て、勇者のおじ様やレンヤおじ様を見たっていう
情報が手に入るかもしれないじゃん。そしたら二人の現在地もわかる
じゃん!あんた...じゃない、あんたんとこのバカ共が勇者のおじ様を
追い出してからの時間と、私達の救出劇からの時間の経過はまだそんなに
経っていない訳だし、もし二人の現在地さえわかれば、今からでも掴まえに
行ける可能がなくもないじゃん!そうでしょう♪」
そしてリコットの探し人と、
自分の恩人を見つける為のアイデアを提案してくる。
「で、どうするのリコット?私はレンヤおじ様の情報が欲しいから
似顔絵を描いちゃうけどさ?」
「わ、私だって描きますよ!私もあの御方の情報が少しでも欲しいですから!」
アリアがもう一度リコットに似顔絵を描くかどうかの確認を聞くと、
リコットはその身をバッと乗り出し、意気揚々の表情でアリアの出した
提案に賛同を示す。
そして二人は、お互いの思い人であるレンヤの似顔絵を描き始めた。
――それから幾数時間。
「で...できましたわっ!」
リコットがにこやかに微笑んでそう叫声を上げると、両手に持っていた
完成した似顔絵を大きく掲げる。
「おお。完成したんだね!どれどれ?あんたが恍惚する勇者様のおじ様と
やらはどんな感じなのかなぁ~♪」
アリアは完成したというリコットの似顔絵に目線を移す。
「へ、へぇ~。これがあんたの惚れ込んだっていう勇者のおじ様なんだ?
ふぅ~む、なるほど、なるほど。これは中々ダンディズムなおじ様だねぇ?」
そこにはダンディー百パーセント以上で描かれた勇者のおじ様こと、
レンヤの似顔絵があった。
「うふふ。どうよ、アリア!この似顔絵から滲み出てくるダンディーさは!
私がテンパっちゃう気持ちもわかっちゃうでしょう♪」
「う~ん。た、確かにカッコいいとは思うけどさぁ......」
「思うけど?」
「でもその似顔絵、いくらなんでも渋すぎやしない?」
リコットの描いた似顔絵は、いわゆる彫りの深い劇画調風に描かれていた。
「そ、そんな事はないと思うんだけど!?そ、そういうアリアの似顔絵だって、
かなりの贔屓が入り過ぎてるじゃないのさぁ!」
自分の似顔絵を膨張して描きすぎじゃとアリアから指摘されたリコットは、
眉をピクッと動かし激おこすると、アリアの似顔絵を向かって指を差し、
仕返しと言わんばかりにアリアの描いた似顔絵のおかしな箇所を指摘する。
「はぁぁあ!?ひ、贔屓?ど、どこがどう贔屓だっていうのよっ!?」
「どこがって...あなたの言うレンヤおじ様って......おじ様なんだよね?」
「え?そ、そうだよ?でもそれが一体どうしたっていうのよ?」
「いや...だって、あなたが描いたその似顔絵、どう見てもおじ様度が完全に
ゼロなんですけど......」
そう...アリアの描いた似顔絵は、絵本等に出てくる様な沢山の綺羅びやかな
お花をバックに飾る、爽やか全開のイケメン王子様風に描かれていた。




