第百二十一話・お前がドラゴンだというのは内緒!これ絶対な!
「さぁてっと...レンヤの紹介も済んだみたいだし、次はあたしの紹介の
番だねっ!」
ルコールが椅子からバッと立ち上がる。
「ウッホォンッ!あたしの名はルコール...ルコール・アジョッキンッ!
種族は聞いて驚き、絶叫しろ!そして尊敬の念を込めて膝まづき、頭を
垂れるのだっ!そう...あたしの種族はこの地を畏怖で轟かせるは最上位種ッ!
その名も誇り高きドラ――」
ルコールはムーホ達の前にビシッと人差し指を突き出してニヤリと口角を
上げると、自分が偉大なるドラゴンだという事を大々的に告げようとする。
そんなルコールを見た瞬間、レンヤの脳裏に...
い、いかんっ!?
ルコールがドラゴンだという事を内緒にしておかないと、
余計な面倒に巻き込まれるっ!?
...という直感がピキンッと走り、
「ス、ストォォォォップ!その紹介、少し待てぇぇぇぇええっ!!」
「――へっ!?ち、ちょっと、レンヤ!?いきな―――ゴォニャ!?
ガニャ!!?ムニャニャッ!??」
レンヤは慌てる様に自分の両手をルコールの口に向かって素早く持っていき、
ルコールの口元を強引に覆い隠す。
「モガモガ......ぷっはあぁぁっ!?もう、いきなり何すんのさ、レンヤッ!
そんな力で口を抑え込まれたら、息ができなくて苦しいでしょうがっ!!」
「おっと、スマン。慌てていたから、つい手に力が入ってしまった!
そ、それよりもだ!」
プンプンと怒ってくるルコールに俺は軽く謝罪し、口元を覆っていた両手を
ルコールの口からソッと退かすと、顔をルコールの耳元に近づけて
小さな声でこう呟く...
「お前がドラゴンって事は絶対にバラさないようにしてくれ!」
「何でよ?」
「お前の正体がバレたら、多分...いいや、確実の百パーセントで
碌な事にならないのが目に見えてくる!だ、だからお前がドラゴン
だっていうのは、絶対の絶っっ対に内緒だぞっ!いいなっ!!」
「オッケー!わかった♪」
「ホ、ホントか?何か、納得がとても軽いんだけど?」
「うふふ、大丈夫大丈夫。わかってるってば、レンヤ!それだけ何度も
念を押すって事はさ、あたしがドラゴンっていう事をバラせっていう
フリなんでしょ♪」
「わかってねぇじゃねぇかぁぁぁあっ!バラすなっ!この言葉通りの
意味だっ!いいか、これは冗談でもフリでも決してないからなぁあっ!
いいな!絶対の絶対の絶っっっ対に、な・い・しょ・だからなぁぁあっ!
分かったなぁぁぁああっ!!」
悪びれない表情で冗談を抜かしてくるルコールに、俺は目を大きく見開き、
真剣な表情で絶対にバラすんじゃないという忠告を釘刺し終えると、
ルコールから離れていく。
「え、えっと、そ、その...どうしたんですか、レンヤさん?い、いきなり
コソコソと内緒話をして?」
「あ!?も、もしかしてわたし達、何かレンヤさんに対して気に障る事でも
言ってしまったんでしょうか?」
目の前でいきなり内緒話を始めるレンヤ達を見て、ムーホ達がレンヤを
怒らせるような事を言ってしまったんじゃという動揺の表情で見てくる。
「ああ。スマン、スマン。別にキミ達がどうだこうだという事じゃないんだ。
ただちょっと、こいつに相談したい事があったのをふと思い出してな!」
そんな動揺で不安がっているムーホ達二人に、レンヤはそう伝え安心させる。
「ゴッホンッ!お互いの自己紹介も無事に終わったみたいだし、取り敢えず
反れてしまった話を元に戻すぞ。ではレンヤ、改めてお前に聞く。どうする?
こいつの...ランカの処遇をよ?」
軽く咳払いをしてギルマスが自分に注目を集めると、改めてランカの罰の
有無をどうするのか、それをレンヤに問うてくる。




