第百十三話・ズキンの青年三人組の最後
「はぁあっ!?いい、いつの間に俺の後ろに移動し――――ホゲエッ!!」
不意に肩を叩かれ、慌てざまに後ろへと振り向いた黒いズキンの青年の頬に、
レンヤは力を込めたビンタを思いっきり食らわせた。
「あが...あが、がぁぁ...がが......ぁ」
「こいつはオマケだ......」
頬を思いっきり引っ叩かれ、意識を朦朧とさせている黒いズキンをかぶった
青年に、レンヤがトドメと言わんばかりにギフト技の『気合い』を発動させて
攻撃力をドンドン上げていく。
そして再び『瞬歩』を発動して大地を静かにパンッと蹴り上げると、レンヤは
相手の懐まで一気に接近し、
「......取っときなっとっ!」
「ぶほっ!!?」
スクリューの如く回転する拳を下から上へと振り上げて、黒いズキンを
かぶった青年のみぞおちに叩き込んだ!
「いぎゃい...ああ...いだい...あ......あが...が...ぁぁ......がぁ......ぐはぁ!?」
みぞうちに走るあまりの激痛に、黒いズキンの青年は吐く様に痛声を
荒らげ、ヨタヨタと後退して行った後、両の瞳が白目へと変わり、
口から大量の泡をブクブクと吹き出す。
そして黒いズキンの青年が大きな音を立てて、その場にバタンと
崩れ落ちた。
「あわわっ!?な、なな、何だよ、あの動きはぁああ!?う、嘘だろ!?
あのおっさんもめちゃくちゃ強えじゃねえかよぉぉおっ!?」
レンヤの見せる圧倒的な強さに驚愕した黄色いズキンの青年が、身体を
ブルブルと震わせる。
「油断大敵だぞ、そこの黄色いの♪」
「ハッ!し、しま―――」
レンヤの強さに恐怖し、集中が欠けてしまった黄色いズキンの青年の
真正面にルコールが素早く移動して近づく。
そして、
「はい、王手♪」
「―――ガハァ!!」
ルコールがニカッと笑って八重歯を光らせると、黄色いズキンの青年の
首元に手刀をトンッと打ちつけた。
「ぐぬぬ...む、無念...ラン...カ、さ......ん...」
ルコールの手刀を食らい、意識が薄れ遠のいていく最中、黄色いの
ズキンの青年はブツブツと細い声で何かを呟いた後、意識を真っ白に
変えて気絶する。
「ふう......これで戦闘は終わりって事でいいのかな?」
ひと息ついたルコールが、両の手をパンパンと叩き払った後、
「残党はもういないよね?」
近くにまだズキンの青年三人組の仲間が潜んでいないかどうか、
気を巡らせて探ってみる。
「ふむ、殺気らしき気はどこにも感じないね?どうやらこいつら
ズキン組と、あの森の茂みに潜んでいた連中以外に残党らしき者は
誰も残ってないみたいだねぇ♪」
「そうみたいだな。俺も軽く周囲を見渡して見たけど、こいつらの
仲間から追撃がくるような気配はなさそうだ!」
レンヤも残党が残ってないか、反撃がどこからかこないか、辺り一面を
キョロキョロと凝視で見渡すが、何もこないと確認した。
「そんじゃ。黒ズキンと黄色ズキンのそいつらをリタイの町の衛兵に
突き出しちゃえば、取り敢えず万事は解決だね♪」
「あとそれから、お前の蹴りを食らってぶっ飛ばされた、あそこで
気絶しているあいつも回収しておかなきゃな!」
レンヤが先程ルコールの回し蹴りでふっ飛んでいった青いズキンの
青年に目線を移す。
でもあいつ、生きてる......のか?
ルコールからぶっ飛ばされ、未だに動かない体勢で地面に転がっている
青いズキンの青年の生死を確認する為、レンヤが冷や汗を掻きつつ、
近づいて行く。
「............どれどれ」
お!
今、ちょっと肩が動いたな?
あの蹴りを食らって生きているとは...
「お前、悪運が強いんだな!」
青いズキンの青年の生存を確認したレンヤは、黒と黄色のズキンの青年達の
いる場所に、青いズキンの青年を引きずって行くと、アイテムボックスから
取り出したロープで、三人をグルグル巻きの素巻き状態にするのだった。




