そもそも生き物なのかどうかすら
落雷の直撃を受けてもそいつはすぐには死ななかった。まあそもそも生き物なのかどうかすら分かんねえから、死ぬのかどうかも分かんねえけどよ。
けどまあとにかく、フルフルと揺れてるだけで、それ以上は俺を追っても来なかった。だからせっかくだってことで、少し離れたところから様子を伺う。
そしたらよ、なんか形が崩れ始めやがって。
元々決まった形なんざねえ奴だったけどよ、そういうんじゃねえんだよな。それこそ溶けるみてえな感じか。
でも、
「……あ……?」
溶け落ちたみてえになったのの中に、流れねえ部分があって形が残っていったんだよ。それが、
「人間……? じゃねえ。こいつあ……」
人間みてえな形をしてたと思ったら、そうじゃなかった。人間だと思ったそれと、でけえ虫みてえなのが現れたみてえな気がしてたら、そいつ、繋がってやがって。人間みてえなのの腰のところで。
「なんだ……こりゃ……」
そう思ってる間にも形がはっきりしてきて、完全に人間みてえなのと虫みてえなのが繋がった<何か>になっていきやがった。しかも、
「エドナ……?」
思わず声が出ちまった。人間みてえなのの顔が、見知った奴の顔そのものだったんだ。<エドナ>っていう、俺と同じ、コーネリアス号のメンバーで、データヒューマンになってた奴。
それだけじゃねえ。エドナとは別に、
「こっちは、ジャックか……?」
ああそうだ。他にも見知った奴の姿があった。こっちは普通に人間の姿のまんまだったけどよ、どっちも透明なんだよ。
「ああ……なるほど、俺もこうやってできたってえことかよ……」
さすがの俺もピンときちまった。この<透明な得体の知れねえ怪物>が基になって俺ができてるってのが。
マジ意味分かんねえ。なんなんだこいつはよ……!?
でもな、今はそれどころじゃねえ。
「エドナ! ジャック! 生きてるか!?」
俺は思わず声を掛けてた。近くに行って助け起こそうと頭じゃ思うんだけどよ、足が動かねえんだ。なんか得体のしれねえヤバさを感じたからかもしれねえ。
で、その勘は当たってた。
「……!?」
エドナの方が意識が戻ったみてえだったけどよ、体を起こしたけどよ、その姿が完全に人間じゃなかったんだよな。
パッと見じゃあ人間にも見えるってのに、やっぱ腰のところで虫みてえな、てか、クモみてえなののと完全にくっついてて、間違いなく人間じゃねえ。
しかも、
「ジャアッッ!!」
俺に気付くなり、獣の声で吠えやがったんだ。
こういうの、マンガとかで見たことあんぜ。確か、<アラクネ>とかってえ怪物だったか……!




