これくらいでそうそうダメになってちゃあ
まあ、結論から言やあ、
『さすが野生』
ってえことだな。巣に戻った蟷姫の様子を、俺も内心焦れながら見てたけどよ、まあなんか普通にしてただけだな。別に気にしてる様子もなかった。
カマキリ怪人にとっちゃこれ自体が日常ってヤツだろうしな。これくらいでそうそうダメになってちゃあ、ここじゃあ生き延びることもできねえか。
だから俺もホッとしたよ。
それでも、いつでも何度でも大丈夫とは限らねえしな。だから俺も、縄張りの見回りをこれまで以上にしっかりとやることにした。他のカマキリ怪人が現れりゃ、先手必勝でぶちのめした。
命までは取らねえが、様子見はしねえ。初見殺しの<対カマキリ怪人用戦術>で、一方的にボコる。
卑怯だとかそんなもん知ったことか。ってえか、蟷姫がカマキリ怪人を追っ払った時に分かったんだよ。とにかく出し惜しみしねえでこっちの力を見せ付けんのが結局は一番ダメージが少ねえってこった。そうすると相手もな、致命傷を負う前に引き下がってくれる。
そりゃそうだろ。生きるために縄張りが必要なんだからよ。<なるべく楽に勝てる相手>を選ぶよなあ。大きなダメージを負っちゃあ、せっかく奪った縄張りを他のカマキリ怪人から守るのもままならねえだろうし、狩り自体ができなくなりゃあそれこそ本末転倒ってやつだ。
<無事に縄張りを奪うことができねえ相手>
だってのを見せつけてやりゃあいいわけだな。
俺もようやくその辺が掴めてきたよ。
けど同時に、カマキリ怪人と変わらねえくれえにヤバそうなのもいるのが分かったぜ。
正直、最初に見た時は十二か十三くれえのガキかと思ったんだけどよ。たぶんそうじゃねえな。必要だから体が小せえだけで、あれでもう十分に大人なんだろ。
薄い黄色の羽毛に覆われてて、頭にゃオレンジ色の飾り羽みてえのがついてて、カマキリ怪人のカマの代わりに羽が生えてやがんだ。広げりゃ三メートルくれえになる羽で、空も飛んでやがる。
さしずめ今度は<鳥怪人>ってえとこか。
これがまたぱっと見は可愛いらしい感じなのによ、そのクセとんでもねえ狂暴さなんだ。サルの足にそれこそナイフみてえなでかい爪を生やして、殺意の塊どころか殺意しかねえ奴だな。
俺が木の実を取ろうとして木に登ってたら、その爪で確実に目と耳を同時に狙ってきやがったからな。目も耳も、あの大きさの爪を確実にぶっ刺しゃ余裕で脳にまで届くだろ。
カマキリ怪人だけでもたいがいだってのによ。よくまあこんなとんでもねえ奴らがいるもんだぜ。




