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第60話 勇者と最強アンデッド軍団

「マジかよ――! そんな気配はまるで無かったぞ……? 何が原因でそんな事になりやがる……!」


 レベル500越えの勇者にも分からない何かがあったという事か?

 アルマだってレベル500を越えているし、レナだって400は越えているのに――

 ちなみに一般人というのはせいぜい10前後だ。俺達の存在は現代日本においては完全に突き抜けている。

 しかし、この超高レベルPTを欺くような事態が……?

 だとしたら、流石に放っておくわけには行かない。

 せっかくムダな前振りの時間に付き合って、服まで脱がせた茜社長が目の前にいるんだがな……


「とにかく早く戻って来い。私はレナがいるほてるに向かっておくぞ」

「ああ分かった。あーあ……もったいない」


 今思えばあの時間がムダだったな!

 オトナの余裕がとか言っている場合ではなかった!


「直君、どうかした?」


 ベッドで待つ茜社長が、甘えたような声を出す。

 それは早くしましょう、という催促でもある。

 しかし、ここはもう『だが断る』せざるを得ない。もう一時間あればなぁ!


「いえ、その――」

「む……おいナオ、今の女の声は何だ? お前私を放っておいて何を――」

「んー……まああれだ、営業活動の一環ってとこだ。とにかく俺もすぐ戻るからな、切るぞ」

「あ、おいこら――!」


 ぽち。通話終了。


「すいません! ちょっと社内の事で緊急事態が! 一刻を争うんで、残念ですけど今日は失礼します!」

「ええっ……!? ちょっとここまで来て――!」

「ホントすいません! もしよければ、また! それじゃ!」


 不満そうな茜社長にもう一度頭を下げて、俺は部屋を後にした。

 こんな恥をかかせるようなことをしてしまうと、もう次の機会は無いだろうな――

 こういう人は俺と次の機会を待つのではなく、次の相手を探すだけだ。刹那に生きてるからな。

 俺としてもちょっと残念だが。

 今回はご縁がありませんでしたが、あなたが今後充実した性生活を送られることをお祈り申し上げます――って感じか。


 俺は部屋を出るとホテルの出口ではなく屋上に向かう。

 本当に急ぐならば、タクシーを捕まえて急かすより自力で帰った方が早い。


「――銀騎士の鎧!」


 装着! さま〇うよろいスタイルも久しぶりだな。

 これで姿を隠しつつ、ビルを飛び移って行くのが一番早い。

 今は深夜だし、一番人目に着かない時間帯だ。中の人さえ隠していれば大丈夫だろう。

 さぁスパ〇ダーマンとかは糸出してビルを伝っていくが、俺は純粋な跳躍力だけで行くぞ!


「行くぞ――! とうっ!」


 ビルの屋上をジャンプで飛び移りながら、臨時オフィスのある新宿のホテルを目指した。

 そして――


「うっは……! アルマの言ってた通りだな!」


 新宿が近づいてくると、結界と魔の森の姿も見えて来る。

 確かに電話でアルマが言った通りで、低級のスケルトンやゴーストなどよりも遥かに大きいアンデッドがゴロゴロしていた。

 不死の王(ノーライフキング)やデュラハンやドラゴンゾンビ――最高峰のアンデッドの見本市のようになっている。

 そいつらが自分達を閉じ込める結界に対し、ガンガン攻撃を加えている。

 結界はまだ健在なものの、だんだんと歪み、崩壊しかかっている。


 如何にハイエルフ様のありがたい結界だろうと、結界を張ってからの時間も結構経っているし、広域なためピンポイントの強度はやや薄めだ。

 そこに数十体からの最強レベルのアンデッド共の攻撃だからな。

 これは急いでなんとかせねば――

 唯一好都合だったのは、結界を取り囲んでいた自衛隊が後方に下がった事か。

 中のアンデッド共の暴れ方が余りにも激しいので、ビビッて距離を取ったようだ。

 うん、その方がこちらとしては助かる――邪魔が入らなくていい。


 俺が臨時オフィスになった会議室に入ると、アルマとレナと和樹が先に集まっていた。


「悪い遅くなった! 来る途中に様子は見た。こりゃ早いとこ手を打たねえとな――」

「どうします――お兄ちゃん?」


 いつもゆるふわなレナも、流石に表情が真剣だった。


「こうなっちまったら、いつまでも魔の森を残しておくのは危険だな――中をめちゃくちゃに荒らされて、投資した元が取れなくなる可能性がある。ここらが切り上げ時だろう」

「じゃあ結界を解いて浄化ですね」

「ああ。だが中にいる強めのアンデッド共は先に掃除しとかねえとなぁ。奴等、結界を解いた瞬間外に飛び出して暴れ回りやがるぞ。自衛隊の皆さんが襲われかねん」


 自衛隊対最強アンデッド軍団も気にはなるが、これは怪獣映画でも何でもない。

 自分のコントロールできる範囲で被害を避けられるならそうするべきだろう。


「そうですね。避けられる被害は避けないと――」

「では私がナオを転移魔法で結界内に送り込んでやろう。そこでナオが中のアンデッド共を一掃した後、結界を解いて浄化だな。私は魔法で送り込む側だから一緒には行けんし、レナも銀騎士の鎧のような変装手段が無いので行かない方がいい。ここはナオが一人で行く方がいいな――」

「でも遠くから幻獣を操る事はできますから、お兄ちゃんと一緒に幻獣を送って――」

「幻獣とて下手をすればこちらの身元に繋がる情報になり得る。ナオ一人で片が付くなら一人の方がいいだろうと思うが?」


 アルマがこういう言い方をするのは珍しいな、と聞いていて俺は思った。

 こんなシチュエーションだと、俺について前線に来たがるはずなんだが――?

 回復・補助系の魔法キャラの割に、性格は武闘派だからな。

 何だかんだ言いつつも結構俺の身を案じてくれている所もある。

 それがこう主張するのは……?

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