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第56話 勇者とレベルアップ

「だけど今の科学力じゃあ、流石にあれは造れませんよお? そこまで技術が進んでいませんからねえ」

「むぅ――そうなのか? ならば魔術を組み合わせればどうにかならないか? 巨大な入れ物を作って、中から傀儡として操れば……」

「あ、そうですよねえ。この辺りにはマナも現れていますし、魔術でなら……」

「おい話が脱線し過ぎだろ。それにそんな魔術誰が使えるんだよ?」


 俺は事象加重(インクリース)系習得に全振りしたため、一般の魔術は数えるほどしか使えない。

 アルマも回復・補助系がメインなので、モノを操作するような魔術は使えない。


「レナ、お前はどうなんだ? 幻獣を使役しているだろう?」

「う~ん、わたしは召喚して協力して貰っているだけですからねえ。意思のないものを意のままに操るというのはちょっと――そういうのはゴーレムとかを操る錬金術師の方とかが得意なんじゃあ……?」

「ぬう――誰も使えないじゃないか」

「諦めろって事だろ? ほらさっさとやる事やりに行こうぜ」

「いいやまだだ――! ナオ、お前は勇者なのだからレベルアップ時のボーナスを自由に振れるんだろう? それで傀儡系の魔術を覚えれば解決するぞ!」


 それはアルマの言う通りで、勇者に覚醒するとレベルアップした時のボーナスを自由に選んで割り振る事が出来る。

 普通の人間にはそういうものは見えず、勝手に割り振られているようだが――

 よく使っていた能力にボーナスが振られやすいので、つまる所努力して使い込んだ能力が上達するという当たり前の現象になるわけだ。


 ボーナスだとか割り振りだとかいう用語を取り払えば、別にごく普通の事だろう。

 ただ勇者だけは例外であり、極論すればサッカーの練習をして野球が上手くなるとかいう訳の分からない事も引き起こせるというわけだ。

 それがボーナスを自由に振るという事である。


 才能とか可能性を可視化して、自分で編集する能力とでも言えばいいのか。

 ちなみに見た事のあるものなら、何でもポイントを割り振る事で使えるようになる。

 俺はそれを事象加重(インクリース)系習得に全振りしてきたわけだ。

 習得に必要なポイントも恐ろしく重かったので、既に俺自身のレベルは500を超えている。


「今さらレベル上げろってか? 1上げるのでも大変だぞ? 必要経験値がハンパないんだからな」


 この間アンデッド共を大量殲滅したが、レベルは1たりとも上がっていない。

 あれは最下級クラスだったとはいえ――何故か経験値高めの瘴気にやられた人間も混じっていた上、あれだけの数を倒してもレベルが上がらないのだ。

 今更何をどうやったら必要な分のレベルを上げられるというのか。


「むう――結界の中に不死の王(ノーライフキング)あたりでもゴロゴロ現れはしないものか……あれが数百数千いればお前のレベルも上がるだろう?」

「年単位で放置しないと、生まれるわけないだろ! 流石にそんなに長い事そのままってわけには行かねえぞ」

「確かにな――おお、いいことを思いついた! ならば呪怨樹を事象加重(インクリース)する事により瘴気の発生を促進し、いいアンデッドが育つようにできないか!?」

「ダメだ危険だ。やり過ぎてとんでもないのがボコボコ生まれて、結界をぶち破ったり、中で暴れて建物を破壊されたりしたら計画が狂う。何事も無かったかのように原状復帰させないと、結界を解いても下がった株価が戻らなくなる」


 今はまだ低級のアンデッドしか生まれてはいない。

 奴等は得物がいないとそこらをウロウロしているだけなので、中の建物等に新たな被害は出ていない。

 これが強いアンデッドになって来ると行動も凶悪になり、無差別に破壊行為を働いたりするので、中のオフィス街も無事には済まない。

 その段階になるまでには、この状況を解消しなければならない。


「むぅぅぅ――お前さっきからあれはダメこれはダメと……! ナオ、お前は本当にガン〇ムを作りたくないのか!?」

「いや誰が作りたいって言った!? いやまあロマンは感じるが、それでこの財テクが失敗したら意味ないだろうが! とりあえず今はレナ達の言う通りに結界を狭めて浄化だ」

「ちっ。つまらん……」


 アルマは不満そうに唇を尖らせていた。

 どんだけガン〇ムの魅力に取りつかれたんだよ、こいつは。


「まあまあアルマ様、また別な何かがこちらに現れた時にお兄ちゃんのレベル上げは考えましょう? あちらでは魔の森だけじゃなくて色々な物が消えましたから、モンスターとかダンジョンとかも、そのうちこちらに現れますよお。お金を稼がないと、新しい家も買えませんし、ソフトクリームが食べ放題の生活もできないですからねえ」

「仕方がない――か。しかしナオのレベルを軽く上げられるようなヤツと言うと――魔王の復活でも祈るしかないかも知れんな」

「ガン〇ム乗りたさに魔王の復活を祈るな。お前一応神の使い的存在だろうに。世界平和はどうした世界平和は」

「あちらでは――な。こちらでは単なるエルフ好きのこすぷれいやーなのでな。気の向くまま好きにさせてもらうさ。お前と同じだ、ナオ」

「……ま、それはいいが取り合えず仕事はやっちまうぞ。行こうぜ」

「ああ。早く終わらせて続きを見よう」

「お願いしま~す♪」


 というわけでその日、新宿のオフィス街に張られた結界とその中の魔の森は、その領域を縮小し、東側の一角が完全に正常化した。

 それが大々的に伝わると、解放された会社の株価や土地の値段は、一時的に爆下げした分を取り戻そうと上昇に転じた。

 それを見越して全資本を投資にぶっ込んでいた俺達は、莫大な利益を上げ――

 都合、約100億の儲けとなった。う、うますぎる……!

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