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第39話 勇者とテレビ中継

「そ、そういうものなのか……」


 アルマは平然とページを捲るレナに吃驚しているようだった。


「そうですよお。向こうの世界だと、下手すればこの一冊で宗教戦争でも起きかねませんけどねえ。わ~アルマ様、ここすっごいあれじゃないですかあ?」

「ば、バカ者! 私に見せるな……っ!」

「ふふふ……アルマ様ってこんなに可愛かったんですねえ。子供の頃のわたしは畏まってばかりいましたから――」

「変わったなお前は――すっかりこちらの世界の住人だ。性格も体つきも下品になった」

「大人になったって言って下さいよお。プロポーションには結構自信あるんですから」


 と胸を張ると、大きな胸がゆさゆさしている。

 いやマジでそれに関しては非の打ち所がないなー。本当に綺麗になった、レナは。


「まあ取り合えずそれ返してくれよ、しまっとくから」

「えー。せっかくお兄ちゃんの好みを学習中なのにですかあ?」

「いや……目の前で見られるとすげーはずいんだよ」


 俺が本を取り上げると、レナはぷうと不満そうな顔をする。


「わかりましたよぅ。でも学習しました! お兄ちゃん、メイドさんやウェイトレスさんの制服が好きなんですねえ? わたし、今度その本の格好して見せてあげましょうか?」

「えーと……まじか!?」


 そりゃまあ見せて貰えるなら見せて貰うぞ! レナなら最高にエロ可愛くなるし!


「うふふ、冗談で言ったつもりですけど、お兄ちゃんが思いのほか本気にしてくれてそうなんで、それもいいかなあって今思ってます」


 どっちなんだ!?

 ゆるふわな笑顔は可愛いが、心の中を覆い隠すバリアにもなってるよな。


「とりあえずはい、返しますねえ」

「あ、ああ……」


 俺はレナから本を受け取りアイテムボックスへ。

 これで、余計なものは片付けたか。


「和樹、用意いいぜ。バイヤーの人達を呼んでくれ」

「おっけい! ちょっと待ってろよ」


 程無くして、和樹が四人程のおっちゃん達を連れて来てくれた。


「査定をして欲しいというのは、これですか? 凄い量ですなあ、坊ちゃん――」


 一番年長そうな白髪のバイヤーさんが、こんもりと積まれた金銀財宝を見て目を丸くする。


「四人でやっても結構かかるな、こいつは査定のし甲斐がありそうだ」

「しかしこの金塊、刻印はないが凄い輝きだなぁ。どういう仕上げだ?」

「このルビーのカットも、変わったやり方だなあ」


 他の三人も口々に感想を述べていた。

 あっちの金銀宝石類って、精錬に魔法使ってたりするからな。

 もしかしたら、こっちのものよりも質がいいのかも知れない。

 良くは分からないがこの間の店でも普通に買ってもらえたし、買取拒否は無いだろう。

 問題は査定額だなあ――


「まま、ちょっと量多いけどよろしく頼むよ! ちなみに俺の親友の持ち込みだから、査定額はちょっとおまけしてやってくれよな」

「ええ分かりました。では早速取り掛かりますので、坊ちゃん達は休憩して来て下さって構いませんよ? 二、三時間はかかりそうですからね」

「だってさ、どうする?」

「ご飯食べに行きませんかあ? ちょっとお腹が空きましたよお」

「ああ私も賛成だ。飯にしよう飯に」


 女性陣の方がメシに積極的だった。


「じゃあ行くか――」


 というわけで俺達は査定をバイヤーさん達に任せ、百貨店内のレストランに出向いた。

 俺達の席から見える位置に壁掛けのモニターがあり、そこでニュースを流していた。

 食事をしながら流しで見ていると、現在の新宿周辺の状況の中継が始まった。

 俺とアルマで現れた魔の森は浄化して消し去ったが、結界で囲ったウチの会社を含む一角はそのままである。


 現在は自衛隊が出張って、結界エリアの周りを固めていた。

 とは言え固めるだけでどう手出ししていいかは分からず、様子見が続いているようだ。

 その他の浄化済みエリアも呪怨樹が飛び出してきたことにより、床や道路が割れてしまっている。

 なので、むしろ自衛隊はその補修作業に注力している様子だった。

 結界内については様子を窺いつつ後回し、という感じだ。


 結界で中には入れないし中にアンデッド共がウヨウヨしているが、別に外に被害を及ぼすわけではない。場所も無人のオフィス街であり、鉄道などの重要な社会インフラの部分を占拠しているわけでもない。

 なので、一刻を争うという自体ではないと判断されているのだ。

 故に調査を優先しつつ、周囲を警戒という対応になっている。

 結界で囲う範囲を絞っておいてよかったという事だ。

 これが山手線とかの線路を巻き込んでいたりすると、大勢の足に影響するので早く何とかしないとという空気になるだろう。


「あんな事があったのに、皆さん割と平然としてますよねえ」


 食事の手を一時止めレストラン内を見渡すと、レナが感想を述べた。

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