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第37話 勇者と経済戦争

「まあ、お前がそうしたいのならいいだろう。で、何処を残すんだ?」

「ああ、今からバニッシュリングで範囲を囲んで見せるから、そこで頼む」

「分かった」

「行くぞ――バニッシュリング! アンド事象加重(インクリース)!」


 俺が生み出したバニッシュリングは発生した魔の森の中の一部のエリア――

 すなわち、うちの会社を中心とする新宿のオフィス街のあたりを囲むように出現する。

 今日はゴールデンウィークだし、基本的に人は少ない。

 もうほぼ人の退避も済んだだろう。


「あそこを結界で覆えばいいんだな」

「ああそうだ」

「ではナオ――力を貸せ」

「分かってる、やってくれ!」

「――大いなる光よ、その力を持って聖域を紡げ!」

事象加重(インクリース)!」


 アルマの結界魔法を俺が増幅し、指定した範囲をドーム型の結界が覆った。

 直径数百メートルの金魚鉢を逆さにして蓋をしたような様相である。


「よしいいぞ――! それから浄化だ! あそこを残して全部だぞ!」

「ああ、では行くぞナオ! 聖なる霧よ、邪を打ち払い魔を滅ぼせ――!」


 アルマの唱えた浄化の魔術により、青白い色の霧が広がっていく。

 青白い中にもキラキラと輝くダイヤモンドのような粒子が現れる魔法で、見た目が非常に神々しい。


上級事象加重(ハイ・インクリース)!」


 その神々しい霧が――俺の力によって増幅拡大し、現れた魔の森全体を覆う巨大な現象となった。

 余談だが、二つのものに同時に事象加重(インクリース)はできない。上級事象加重(ハイ・インクリース)も同じく。

 つまり事象加重(インクリース)上級事象加重(ハイ・インクリース)もそれぞれシングルタスクな回路だという事だ。

 今のように結界と浄化の霧両方を増幅したければ、事象加重(インクリース)上級事象加重(ハイ・インクリース)を別々に使うしかない。

 身体能力を上げつつ強烈な魔法を放つとか、そういうことをやりたければやはり両方が必要になる。


 神性魔法の習得のハードルはメチャクチャ高い上に、上位の上級事象加重(ハイ・インクリース)だけがあればいいというものでもないため、全部習得した。

 そうすると他はロクな魔法が習得できなかったのである。

 対魔王サマでは全ての事象加重(インクリース)系がフル稼働だったため、結果的には俺の育成方針は成功だっただろう。

 まあアルマさえいてくれれば、芸達者なので大抵の事は何とかなる。

 そういう意味で、俺達の相性はとてもいいのである。


「よし、消えていくな――」


 生み出されたアンデッド達、辺りに満ちる瘴気、そして現れた呪怨樹までも――

 アルマの生み出した浄化の霧が全て分解し、虚空に消し去って行く。


 少しずつ霧が晴れて行くと、そこに現れたのは――

 全く平静を取り戻した、普段の新宿の街並みである。

 ただし、人が退避してしまっているため不気味な程に静かで――

 そして、呪怨樹は消え去っていたものの、呪怨樹が現れる時に割れてしまった道路のアスファルトはそのまま割れてしまっていた。

 ある意味これだけが、先程までの異変の証拠として残った形だ。


 そして俺の注文通り、ウチの会社を含むオフィス街だけは結界に覆われ、その中にはまだ呪怨樹が残っていた。瘴気によって生み出されたアンデッドもまだ徘徊している。


「よしよしよし! 注文通りだ、いいよーアルマちゃん!」


 俺はぱちぱちと拍手した。

 手が鎧に覆われているので、実際はカンカン音が鳴ったが。

 そしてダースベ〇ダーのマスクをよしよしと撫でる。

 アルマ様々だな。俺だけではこういう複雑な芸当は出来なかった。


「……お前がそんな調子だと、絶対何か良からぬ事を企んでいるな――」

「良からぬ事じゃねえよ、お前もウチの会社から電話が来た時、痛い目に会わせてやればって言ってただろ? 実際会わせてやろうって事だよ。ただし、こっちの世界のルールの中でなぁ……クックックッ――まあ見てろよ?」

「よく分からんが、取り合えずこのマスクを取ってもいいか?」

「いやまだダメだ、とりあえずここから離れてからな」

「では早く行こう。恥ずかしいからな」

「ああそうだな。レナや和樹と合流するか――お前もレナに会いたいだろ。でっかくなってるから吃驚するぞ」

「うむ。では早く行こう」

「よし、飛ぶと目立つから走るぞ。俺に捕まれ」

「分かった」


 俺はアルマを連れてビルを飛び降り、目立たない所まで走った。

 そうして二人ともさま〇うよろいとダースベ〇ダーから元に戻り、何食わぬ顔で群衆に紛れてレナと和樹と合流したのだった。

 こうして、異世界から飛んできた魔の森は割とあっさり片付いたのだが――

 意図的に残しておいた一部。これが重要である。

 ある意味ありがとうだ、魔の森!

 これを最大限利用させてもらい――ブラック企業を叩き潰してやるぜ!

 さぁ戦争だ! MPすなわちマネーパワーを使った、経済的な意味のな!

以上で第二章終了です。ここまでありがとうございました!

章タイトルは異世界転移としましたが、異世界『に』転移するのではなく

異世界『が』転移するの意味でした。


ここまでを前フリとして、続く第三章が一番書いてみたかった本題――

一部残した魔の森エリアを利用してアレコレと。。

章タイトルは『ブラック企業を乗っ取れ!』の予定です。


『これからも頑張れ』

『レナちゃんかわいい』

『ブラック企業にざまあしろ!』


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