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【書籍化・コミカライズ】【Web版】おっさん(3歳)の冒険。  作者: ぐう鱈
5章:レベル神 神宮寺、ちょっと校舎裏まで
99/205

94「ダンジョン攻略と帰宅難民のダンジョンマスター2」

夢で見たストーリがいい感じでメモに書こうとすると忘れる。よくあることです(涙)

今更ですが地図です。よろしければ。

http://23.mitemin.net/i239614/

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「じゃぁ! 攻略いってみよー!」

「おー!」

 私こと永遠の3歳児マイルズが陽気に声を上げると、答えてくれたのは神宮寺君だけでした。

 なお現在3つ目の街を慰問中だったりします。

 2つ目の街から魔王軍転移術師の方が合流されましたので必要最小限の人数での移動になります。

 ええ、必要最小限なので1小隊にはお帰り頂きました。

 残ったのが選抜小隊20名の方々とマモルン、丸雪、権三郎。

 ミリ姉については学業があるので祖母が迎えに来ました。そしてそのままご帰宅いただきました。

 ミリ姉はさんざん駄々をこねられておりましたので……こっそりプリンをごちそうし、父宛てのプリンレシピを握らせるとウキウキで帰ってゆきました。なにせ『旅先では今後素材がそろうか……それに比べてグルンドは……』と遠い目をしたら一発でした。「プリン♪ プリン♪」とスキップするミリ姉が可愛かったので同行する香澄ちゃんにそっと蒸し器を手渡しておきました。

 ちなみに、帰還する小隊の移動は香澄ちゃんがやってくれました。

 自然神との対峙を経て、いつの間にか触媒なしで長距離転移が発動できるようになっていたようです。末恐ろしいと言うか運命神の加護恐るべし……マモルン、ガンバです♪ 色々と……。

 さて規格外の香澄ちゃんと違い、魔王軍の転移術師はそうもいかないのです。

 なので出発前のタウさんとの打ち合わせ時に私から『転移補助魔法道具』を提供しております。

 転移魔法は複雑な魔法回路と大量に消費される魔法力が必要。提供した魔導具はそんな『高コストのわりにほぼ使い捨て』の代物でした……。

 しかも転移魔法が使える人が使わなければ動作しないという物です。……それでも、魔王軍の皆さんには大好評でございました。

 正直転移魔法とはそこまで大変でかつ重要な魔法なのです。……この魔導具は本当に……転移地点登録一度きり、コピー不可能な本当の使い捨てです……。え、本当にありがたい? ……複雑な気持ちです……。

 さてさて、必要最少人数での移動といっても転移で1回5名を5回繰り返す作業が必要となります。ですので大変なのは術師さんです。移動がおわると大地に大の字になって伸びている転移術師さんが見られます。ご苦労様です。……え? 問題起さないでくれると助かります。ですって? ……そんな縋る様な眼で見なくても何もしませんよ。……国主様を信じてください……。

 さて移動が楽になった分ゆとり思った慰問スケジュールなので、若干の暇が生まれます。

 ですので、近場の『資産になりそうにないモンスターがあふれてきて寧ろ迷惑』なダンジョンをつぶして歩くことにしました。

 1番初めのダンジョンは外側からコアを壊したら神宮寺君に怒られましたので今回は正攻法です。


「まーちゃん先輩! じゃ、いっちょ冒険しましょうか!」

「おー!」

 意気揚々とダンジョンに入っていく神宮寺君を見送りました。

 ・・・

 ・・

 ・

 ん?私がいつ一緒に行くって言いました?

 かわいい3歳児ですよ私?


「……まーちゃん先輩ひどいっす! 振り返ったら誰もいなかったっす!」

「……神宮寺君、私はダンジョン攻略をすると言いましたがあんな暗くてじめじめした不潔な場所に入るとは言ってません」

 えー、っとげんなりした顔の神宮寺君を置いて私はダンジョンの入り口に鎮座する【無駄に豪華】な門に手を当て……『案山子生成魔法』を発動します。

 完成をまたずに私は次々と立派な石材を利用してダンジョン入り口近辺に案山子部隊を……20体ほど生成しました。

「皆さん。並んでー」

 整然と整列する案山子軍団。私の後ろで魔王軍の精鋭たちが引いています。マモルンはいつもの事と達観して眺めている様子です。

「はい、じゃぁこれからダンジョン攻略開始します! 皆さんリュックは持ちましたか~」

 案山子たちから元気よく手が上がる。

「倒した魔物は入り口まで持ってきてくださいね。こちらのハンターの皆さんが剥ぎ取りしてくれます~」

 近場の街から『ダンジョン攻略』と聞いて意気揚々とやってきたハンター達ですが、出発時私から手渡されたのは剥ぎ取り用の道具に呆然としておりました。ハンターが乗せられて来たのは、案山子達が背負っているリュックが積まれた数台の馬車。

 ハンター組合職員と共に同乗してきたので、薄々自分たちの役目が剥ぎ取りだと気づいていたのかもしれません。ハンターたちからちょっとやる気の光がないです。


「次にダンジョンで拾った価値のありそうなものはリュックに詰めてくださいね。一杯になったらハンターさんに預けて新しいリュックで行きましょう~」

 案山子たちはハンターを確認してうなずき軽く手を振る。

 ハンターたちはその異様な光景に反応できず恐る恐る手を上げて返すのがやっとな感じです。

「はい、次に皆さん情報リンクは大丈夫ですか? マップ情報共有してくださいね~」

 頷く案山子たち。

「では、最後に質問ある人!」

 案山子たちの中から代表して手が上がる。

「罠も解体して持ち帰っていいのか? と聞いています」

 通訳は権三郎です。

「危険物以外許可します。ガスとか、毒液とか危ないので漏れないように処置してください」

 答えるとサムズアップが帰ってきます。

 そしてまた手が上がりました。

「壁が薄いところや希少鉱物の壁があった場いい採掘しもよいか? と聞いています」

「許可します。ダンジョンが崩れなければどんどん行きましょう。あと質問は? ……探索中に不測の事態が発生しましたら適宜権三郎に報告して判断を求めて下さい。では! ダンジョン攻略部隊出撃なのです!!」

 ……30分後。全案山子が帰ってきました。

 モンスターを平均3体は担いできました。

 そしてハンターたちはようやく気づいたようです。ここが過酷な職場であることに。処理された魔物は輸送部隊によって街に運ばれてゆきます。ただただ捌いて載せるを繰り返す作業……頑張ってほしいものです。


「マイルズ、なんか違う……」

「そうっすよね。違うっすよね! これじゃまるでごみ屋敷の撤去作業みたいじゃないっすか!」

 ……あれ? 何か違いましたっけ?

「だって、世界のごみ(モンスター)の処理装置ですよね? しかもごみリサイクルまでする親切さ!!」

 私の発言で神宮寺君が言葉を詰まらせます。

「本来であれば小型案山子でマスター部屋に突撃してバ〇サンを炊きたかったのですよ?」

「いやいやいや。バ〇サンで魔物死なないから!」

「強力殺魔物! バ〇サン! ……でもこれやると素材の価値落ちちゃうんでやりたくありません……」

 『違う何かが違う』とつぶやいているお2人。

 神宮寺君、そういえばウィザードリー好きでしたね。夢を壊して申し訳ない。でも現実を知って大人になるといいのです。


「マスター、5階層攻略との報告がありました。階層主が大型の魔物だったのでその場にて全員で解体した上で持ち帰る様です」

「はい。では魔物肉で炊き出ししましょう! 皆さん、後は宜しくなのです!」

 『やっぱりなっとくいかない!』と言って丸雪を伴ってダンジョンに突撃したマモルンがダンジョン踏破したのは3日後の事でした。


「うわーーん! 僕のダンジョンがこんな痴女に攻略されるなんて!!!」

 連行されたダンジョンマスターが泣き叫ぶとマモルンの手の中にあったコアがピキっという音がしました。

「え……?」

「あ?」

 マモルンに痴女は禁句なのです。

 どうやら『マモルン』がコアを破壊してしまったようです。

「いやーーーーーー! またダンジョン課の課長に嫌味言われるーーーーーーーーーー!」

 砂のように崩れるダンジョンマスターを前にして神宮寺君の叫び声が響きます。

 壊れたなら直せばいいじゃないですか? というと何故かお説教されました。腑に落ちないのです。


―――ヴァリアス視点 

「あれ、攻略じゃなくて畜産っていうよね……」

 やばい……アレがうちのダンジョンに来たらひとたまりもない。

 神様制御して! お願い!


―――とあるダンジョンマスター集会 

「ジュドーがやられた」

 円卓を囲む6名が項垂れる。

「神の使徒か?ジュドーのダンジョンも運営がうまくいってなかったと聞く……不良マスターの整理……」

 資料に目を通さずに黄色の髪の青年が呟く。

「確かに、殺された奴らは本来の目的を忘れ、人間を殺す目的の罠やモンスターの調教をしていたからな……」

「では、やはり神による選別がはじまったと」

 黒髪の女性は「ははは、そんなバカな……」と付け加え背もたれに深く倒れ込む。

「亜神である我らにこれまで神々は甘かった。……馬鹿をすればこうなるという事なのだろう……」

 会議のお通夜モードは続き最後に念のため多人数によるコア共有をして解散となった。

 赤毛のダンジョンマスターは前回に引き続き心ここにあらずのンラドの様子をうかがう。

「旦那と離婚とか何言ってやがるあの女……」

 赤髪のダンジョンマスターはンラドの様子を見ながら思った。

(早くこいつとのコア共有を解除しなければ……)

 このンラドという男、二百年前までは複数のダンジョンを管理する新進気鋭のダンジョンマスターだった。やがてこの地方で最も優秀なダンジョンマスター、ヴァリアスに次ぐ立場に上るのではないかと思われていた。

 だが、現状このザマだ。いつからだろうかこの男がつまづいたのは。

 赤髪のダンジョンマスターはそう自分に問い……。

(所詮は親の七光り、転んで立ち上がることもできんのか……)。

 この場にいたダンジョンマスター達はンラドを切り捨てることを決意した。


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