90「ポチとタマとウッサと神宮寺、チェンジで!」
すみません。4/14夜に概要だけ出てしまいました。見てしまったら申し訳ありませんが忘れてください。お願いします。
「お久しぶりです!」
そう言うとポチが黙って抱きついてきました。
「……反省が足らんのじゃ」
抱きつく力が強くなります。ギブギブなのです! ポチ!
「マイルズ君は本当に反省する必要があるです。皆がどれほど心配したと思っているのですか?」
タマのお説教です。
……すみません。先ほど獣王様と王妃様にもさんざん言われました。
『ということで責任をとって婚約ね。明日から私のむs……』
ダッシュで逃げましたがなにか?
しばらくするとタマが手をワキワキしながら近づいてきます。
……まつのです! まって、私脇が弱いのです。
「あははははははははははははははは( ´∀`)フハハハハ……( ゜∀゜)ハァーハッハッハッハ!!!」
……ただひたすら響き渡る私の笑い声。解放されたのは結構時間が経ってからでした。
「……で、さっきから気になっていたのですがこちらの美少年はどちら様でしょうか?」
どことなくイーリ兄と似た雰囲気ですが、目に宿った情熱的な瞳は明らかに違います。領主様の一族の方でしょうか?
「おや? マイルズ、俺を忘れたのか?」
獰猛ににやりと笑う美少年。
ワイルド、肉食系、意外と硬派?
そんなキーワードが浮かんでは消えます。……やっぱ誰?
「楽しそうだな、出来損ない」
……まっまさか!
「豚さん!?」
「……確かに、こないだも終始その呼び名だったけど……」
美少年が落ち込みます。
ちっ絵になりやがって!
そもそも豚さんならお家を勘当され、厳しい再教育中のはずです!
あの腐った性根は短い期間で治るはずがないのです!!
「……ひどい言われようだな。俺はあれから半年……。お爺様の下で学校へ通いながら農園の手伝いで変わったのも事実か……。では改めて自己紹介だ。俺の名はジュリアンだ」
ワイルド系イケメンスマイルです。
くっ、今のうちに殺やっておかねば……。将来とんでもないことになりそうですね。
「いや……そういわれてもな。それにこの場の女子は今現在、誰一人俺にその気が無いようだぞ? きっとマイルズの気のせいじゃないのか?」
「そういえば、前回自慢げにフルネーム名乗っていましたが今は名乗らないのですか?」
家名は無理でも、魔法名は名乗りそうなものですが。
「家名などくだらん。俺は知ったのだ農家としての楽しみを、苦しみを、そして食べる喜びを! 貴族? くだらん……。お前らの飯はだれが作っていると思っている!!」
……あ(察し)。これは祖父のビルにいる人たちと同じ思想です。
「こっちに来てストレスもなく! 作業も楽しいし! お爺様から色々学べる! 睡眠時間は極端に短くなったが充実しているから不要なほどだ!」
洗脳ですね。
思えば前お会いした時は貴族に染められましたし。
意外とチョロイ方なんですかね……。
「それでやせたと……」
「ああ。食材が美味いので王都にいた時より食べているのだがな、よっぽどこの生活が性にあっているらしい」
ますますわからなくなりました。では何故ここにいるのでしょうか?
「簡単だ。お前に礼を言いに来たのだ。驕った俺を貶めたとは言え、理想の環境に送ってくれた! これに対して礼を言わねば俺自身の誇りが傷つく!」
「はぁ」
豚さんが熱い農家になってます……。
「今日はそれを言いに来ただけだ。マイルズそのうち俺が育てた作物でお前をあっと言わせてやるぞ!」
それだけ言うと元豚さん、ジュリアンは護衛達に声をかけてその場を去ってゆきます。
……あれは確かにうちの一族の特徴、『他人の話を聞かない』ですね。本物か……。
「変わったご家族ですね……」
「全くです。でもあなたに言われたくないです神宮寺君」
突然現れた神宮寺君ですがなんとなく慣れました。
昔からこの子は神出鬼没でしたが、間でわかるようになりました。伊達に10年近く付き合っていません。
「というか、皆さん静かですね……って平伏してる!」
「まーちゃん先輩……。俺一応神様……」
落ち込む神宮寺君に周りは騒然とします。
一応これでも神様ですからね……しょうがない。
「神宮寺君。はい」
「パンですか!? 美味しそう」
ふふふ、そこからさらに驚いてもらいます。
「いっただきまーす! ……!! これは!」
目を見開いて夢中で食べ始めた神様。
「はい、皆さん。この子、こんな子なんです。そんなに気にしないでください~」
「まーちゃん先輩、ひどいっす。でもうまーーー! もう一個希望です」
「他にもあるから我慢なのです!」
再び落ち込む神宮寺君ですが、周りはもう騒然としません。
「うむ、マイルズよ。神と仲が良いようだな……さすがと言っておこう」
「大丈夫なのでしょうか、あの神々しいオーラは本当に神様ですよ……」
「……(ぽっ)」
ポチ、タマ、ウッサの順なのですが……ウッサ……あなた……。
「(これってそういう事ですよね)」
ポチとタマに顔を寄せます。
「うむ」
「ですです」
ウキウキしている女子2名。まじか……面倒くさいですね……。
「神宮寺君、とりあえずお茶にしましょう」
「はーい」
神宮寺君がテーブルまで来ると空間から椅子が現れます。
もう見慣れましたが神様スキルの1つ『空間操作』で自宅(天界)から持ってこれるようです。
そのあと、神宮司君の自己紹介があり、それを筋肉の偉い人ことギースさんが興味深げに見ていました。
……まさか筋肉の偉い人、あなたそっち系……。
「さて、坊主。手紙でもらっていた通り、今日やるのか?」
筋肉の偉い人眼に鋭さが宿ります。
「もちろん。私もあれから色々経験しましたのでね……」
睨み合いそして視線を外す。
「……ネロよ、男同士で通じ合っておるぞ。……そういう仲なのか? 我の夫と護衛隊長殿は……」
「どうなのでしょうか、どっちが責めなのか受けなのか、先生に報告してみましょう」
……やめて、すっごい嫌な予感がするので本当にやめて。
「何を誤解しているのですか、今日はこの場を借りて筋肉の偉い人とデザート対決を申し込んでいたのです!」
「そうですぜ。先日来、手紙のやり取りしててましてな、折角会えるし、勝負? やってみようってなったんだ」
……あれ? ポチ? タマ? なんですか? その『あーあ、がっかり』みたいな表情の落ちたお顔は?
美味しいものにありつけるのですよ?
もっと『ひゃっはー!』的に喜んでもいいのに……。
「さて小僧。準備はいいか?」
「ばっちりです。権三郎、例の物をお配りして……」
各自のテーブル前にまずは筋肉の偉い人のお皿が並びます。
表面が黒く焦げているチーズケーキでしょうか。美味しそうな香りがします。
「トゥルトーフロマージェだ。上の黒いのはあえて焦がしてるから苦くないぞ」
筋肉の偉い人は元フランス人です。
結構昔に流されたらしいのですがお菓子作りは……お菓子作りが得意な日本人の戦友と出会ってから故郷を思い出しつつ、友人に教えられる形で腕を磨いたそうです。ですので、随所に日本風です。
このトゥルトーフロマージェも本来ヤギチーズなはずですが……使われているのはくせのない牛のチーズ。
「うまいっす!」
チーズのうまみとシフォンケーキのような軽いスポンジ。
下に行けば行くほどチーズの濃厚な味わいが食べ飽きさせません。
さらに、紅茶との相性が良いです。
あっさり食べられるので小食なお嬢様方もぺろりと完食できそうなぐらい良い出来です。
さすが筋肉の偉い人。でも……。
「……ほう」
権三郎に、一応護衛なのでテーブルの近くに立って我々にお菓子を提供してくれていた、筋肉の偉い人にも1つ手渡します。喰らうといいのです。日本が生みだした最強ケーキを。
「イチゴとホイップクリームか……カップに入れているのもいいな……スポンジに挟まっているのも上に載っているのはイチゴか、うん。やるな」
そうショートケーキ。
日本以外ではショートケーキというとクッキーが出てくる。それ故ほど日本でのショートケーキはオリジナルと言ってよいケーキです。
「どうですか?」
「やるじゃねーか。味は繊細かつ嫌味もない……心に残る味わいだ。見た目を含めると俺の負けか………」
「ふふふ、今回は私の勝ちという事ですね」
「異存ない。レシピ教えてくれ今度主に出してみる」
「いいでしょう、うふふふふ」
男の友情を温めていると若干2名ほど私達を生ぬるい目で見る人たちがいます……。
「ネロよ、あれ、本当に友情だけか?」
「ホーネスト様、それよりもあちら……」
タマが視線を向ける方角にはおかしな組み合わせがいます。
「……あーん」
「あーん、少女ありがとう」
神宮寺君を餌付けするウッサ。お礼に撫でられてお顔を真っ赤にしする。
神宮寺君は美味しいものを食べてご満悦。
先ほどからそれを繰り返しています。
ウッサはちらりと権三郎にアイコンタクトしてお代わりをもらい、餌付けを続行するようです。
「筋肉の偉い人。これ事案じゃないですかね?」
「いや、ギリギリなんじゃないかと思うが主に報告したら天界に通報しそうだな……」
ロリコン死すべし。
神宮寺君。そこから進んじゃダメですよ?





