84「ハンター()」
r15ぐらい保険が必要でしょうか?
「ミリ姉、それは何ですか?」
スノーホワイトのドレスの上に白銀の鎧。
白銀の鎧のガントレットには、右に赤、左に青の魔石が宝石のように埋め込まれております。こちらそれぞれ独立した魔法道具として機能します! グリーブも同様に白銀の魔法道具仕様! 更には! 腰と背中肩甲骨から出ている翼は何と!!!
「マイルズ、鎧自慢が声に出てるわよ?」
「傑作兵器なので自慢したいのです」
先日の事件があったので勝さん一号が自重しませんでした。
曰く『白銀の統一感ある中にスカイブルーのラインが秀逸』とか。
白にしたのでお手入れ大変かなと思われるでしょう?ですが、この装備一式は生きた魔導具なのです。
ですので、戦闘終了毎に自分で回復魔法を使えばあるべき姿に戻るのです。
「洗濯と言う意味で自立した傑作兵器!」
「あー、うん」
ミリ姉の反応が悪いです。
「しかも! 成長期のお子様に合わせて鎧も成長してくれるのでお直しが必要ない! お母さんにとっても優しい鎧です」
おひとついかがですか! と言う前に
「販売しちゃだめよ」
先手を打たれました。さすがミリ姉。
「あのさ、これ勝さんが作ったでしょ?」
珍しく鋭いマモルン。
「やっぱりか……。あの人、そんな技術持ってたのに……ア〇ドは作らないのか……」
マモルン。大冒険ネタは危ないのです。
ご都合主義的にやたら増殖しそうなのです。
もはや伝説の鍛冶師なのか、発明叔父さんなのかわからない方向に行ってしまうのです。
しかし、マモルンはいつもその『使った事のない』朱槍を大事そうに抱えています。今度改造してあげましょうか……。
「……マイルズ。朱槍を改造して『コンパクト』とか女児向けアイテムになったら……1か月ぐらい枕もとで恨み事ささやくぞ……」
マモルンは天才です。その発想はなかった! コンパクト! もらい! なのです!
「……墓穴掘った感がすごい……」
丸雪に慰められているマモルン。……マモルンは放っておいて……ミリ姉が魔物狩りの戦利品と一緒に持ち帰った『それ』は何でしょう?
「山の中で拾った」
「戻してきなさい」
その荷物は汚くはなっていますが人間でした。
「このままではミリ姉が誘拐犯になってしまう!」
その言葉に薄汚れた人が目を覚ましたようです。
「おなかへった……」
どうやら遭難者のようでした……。
「キアラさん」
「はっ、承りました。おい、手当てしてやれ」
キアラの部下たちが介抱してくれるようです。安心できるでしょう。
「ミリ姉、私は信じていたのです。さすがお姉ちゃんなのです」
「……マイルズ久しぶりにこれ着る?」
それは! 人権破壊兵器!!
「疑ってしまい誠に申し訳ございませんでした!!!!」
「うん、すがすがしいほどの態度の変化に姉としてマイルズの将来が不安だわ」
ミリ姉の未来は勝さん1号と私がレール轢いてる最中なのですがね。うふふふふふ。
「寒気がしたので着ておこうね♪」
失策!!
「……これが噂のバ可愛い。ミリアム様、さすがでございます」
キアラさんここは止めるところだと思うのです。
ここは『まーちゃん共和国』で、私はまーちゃんなのです。
「マイルズ。弟はどのような状態にあっても姉には勝てない……そういう生き物なのよ?」
……知ってますが、その『常識でしょ?』っていう勝ち誇った顔が反抗心を……。
「マイルズ、次は首輪がいい?」
10歳で天使をイメージした鎧を身にまとった可憐なお姿で可愛らしく首を【コテン】されると頷きたくなりますが、それをされますと人権さんが永久にご帰宅されないので遠慮いたします。
「まーちゃん先輩! ばんごはんーーーー! ってそこの少女!」
ああ、神宮司君。君はまともな常識を持った男とだと信じていました。
「ぐっじょぶ! まーちゃん先輩のその姿! 写メに取って天界で共有します!」
……へぇー、恩知らずにも先輩にそんなことするのですね……。
恩知らずにジト目というやつを向けます。
「うっ、なんか嫌な予感がしますがかまいません。少女もっと笑顔で! もうちょっとまーちゃん先輩に近付いて! ……いいね! いいですよ、まーちゃん先輩! そのやさぐれた瞳なんか最高! 多分地上降臨できる低級神の間で評判になりますよ!」
『カシャ』
「うん。わかった。今日の神宮司君のご飯は道草だね♪ 私が自ら料理してあげよう……、食べろよ」
「あ、少女。今撮った写真これ。かわいくないっすか?」
「可愛いです! すごい! この絵私もほしい」
「いいっすよ! 何枚でもこいです」
「あ、僭越ながら我が隊にも50枚ほど……まーちゃんファンクラブで宝物にします」
「おっけーっす。て、まーちゃん先輩その魔女みたいな鍋なんですか?」
え? 君の晩御飯だよ?
「あ、しまった仕事が残っていたっす! ……じゃ、皆さんまた後日! ……て、天界に帰れない!!!」
「まーちゃんから逃げられると、いつから勘違いしていました?」
ゆっくり食べていくといいです。
普通に食べられる野草を茹でて変な色にしたスープとお浸しなのです。
「意外といけるっす。スープの中のお肉も中々です。さすがやりますね。家事万能先輩」
……こうして騒がしい後輩君は次来る時に大量の写真を印刷してくると約束して去っていきました。
神殺しの兵器を作らねばならないようです……。
「良かった……気配殺してたから俺の写真はとられてなかった……」
マモルンは保身に全力だったようです。
「マモルン。僕がいること完全に忘れてるよね?」
丸雪。上がったマモルンを落とすのはやめてあげて。
そういえば権三郎はグルンドでファンクラブがありましたね。
「マスター。ご勘弁ください。改造は味覚までで……」
「どういう事でしょう?」
「勝殿が『生殖機能……お、意外といけるな』とか呟いておりまして……」
……一番危ない人が今王都で自由にしている気がしてなりません。
勝さん一号その遺伝情報私のですよね?
私の知らぬところで子供増やすのやめてね!
お願い!
まだ3歳なのにお父さんにはなりたくありません……。
嵐が去ったあと、純朴な150cmぐらいの小柄な少年が私の前に来ました。
「まーちゃん様とその姉上様……。危ないところをお助けいただきありがとうございました」
「マイルズは見捨てようとしたけどね」
「ミリ姉、余計です」
全員苦笑いです。
ミリ姉は平然としています。
こういう所アリリィさんに似てます。……魔王様の天敵になりそうですね。
「私。ムーア村でハンターをしております。ドニと申します。今年で18になります」
少年ではなく成人していました。驚きです。
「はい、それでそのドニさんが……何故山の中で遭難を……」
「実は……」
ドニさんはつらそうに目を伏せます。仲間に裏切られでもしたのでしょうか……。
「お腹を減らし倒れていたアルブ※がいたので食料を分けてあげようとかがんでいましたら……背後から別アルブに襲われまして……食料をすべて持って行かれ。更には道にも迷いまして……」
※アルブとは狐のような野生動物で稀にペットにする人がいるほど愛らしい外見をしています
「アルブってそんなに危ない動物でしたっけ?」
「いえ。温和な草食動物ですね」
ドニさんと周囲の気温差がすごいです。
「婚約者を寝取られ、さらにはかわいい動物には食料をぬすまれ……もう僕どうしたらいいか……」
「あれですね。ドニさんは『ドジっ子』という分類ですね」
「ドジっ子ですか?」
「一度その婚約者さんと正面から向き合ってみることをお勧めします。というかあなたの村に向かってますので一緒に行きましょう」
「……良いのでしょうか……」
良いに決まっています。
「何か不都合があったら殲滅してあげますので大船に乗ったつもりで」
納得しきれないドニさんを押し切ってその日はお風呂に入って休みました。
「わお、巨根」
お風呂一緒した時に思わず3度見してしまいました。
きっと婚約者さんが浮気としたらこのビッグな下半身のせいかもしれません……。
可愛い顔して凶悪な兵器をお持ちで……。





