81「教国のその後に向けて」
第三者視点で教国がどのようになったのか記載します。
尚、毎日更新はここまでになります。
プライベートの関係上、週に1~2度更新になります。
もしよろしければ、今後もお付き合いいただければ幸いです。
※第三者視点で教国がどのようになったのか記載しております。
タウ&マリブ ――――――――――――――
「お母さん! この装備とってもかわいい!」
マリブが執務室に飛び込んでくるとタウは手を止め頭を抱える。
彼女からしてみれば『破廉恥』な娘の姿にさらにため息をつきたくなる。
「さすが、まーちゃん変身棒! これで殺されることはもうないよ!」
「いや、リッチだし。死んでるし!」
タウはツッコミを入れて、ハタと気付く。
いつもの流れだ………。
「そうなの………、もう私はお母さんに、孫の顔を見せてあげられないの………」
今はこの騒がしい娘と仕事ができているので『後200年は独り身でいい』そう言いかけたところ……。
「ということで、魔王国からイケメンエリート連れてきましたよ!」
「あなたのその行動力……尊敬に値するけど。……娘としてそれどうなの?」
義父を自分で用意するって……そう続けようとするとマリブは腰に手を当て胸を張り言い切る。
「弟希望!」
「……」
もうタウに返す言葉はない。
たぶん数日すると上司であるヒューゴから『勝手に引き抜いてゆくな!』とお叱りがあるだろう。
そして、タウはもう一つの頭痛の種に目を落とす。
「なにそれ?」
マリブもその報告書をのぞき込む。
『国名:まーちゃん共和国』
元教国は革命後、魔王国の支援を受け国の再建中だった。
魔王国の保護国として10年程度は過ごすことだろう。
無理もない事なのだ。腐敗していたとはいえ政府中枢にいた事務方すべての役人が消えたのだ。
国家運営のノウハウがない革命軍がホイホイとすべての事をこなせるわけがない。
魔王国としても教国の崩壊にともなう隣国間での抗争。
その混乱により発生するであろう難民が、ゲリラ兵が、周辺国家の中で最も平和で豊かな魔王国へ流入する。そして魔王国内も混迷する未来。それを回避するため領土欲に燃える周辺国を押さえつけてでも元教国を支援する必要があった。
タウはその為に派遣された臨時統治統括本部、その代表であった。ちなみにマリブは補佐である。
これは魔王からの懲罰と言われている。事実を知っているのは本人たちのみである。
統治については現在タウが最高責任者に座り、国の体制を整えている。そこへ補佐であるはずのマリブがマイルズからもらったおもちゃをもって現れる。……なお、マリブは各地で盗賊化した教会残党掃討に国内を飛び回っていたので仕事をしていないわけではない。
現在タウの手元にある書類は、この国の最高議会が議決した内容だった。
まずは国名から!
書類を提出に来た議長が自信満々だった。タウは非常にこの後が不安になった。
(陛下、まさにこれは罰なのですね………)
教国の前身となった国家名はアルディ王国だった。
「歴史的に見ればアルディ地方のアルディ共和国で良いと思うのになぁ………」
タウのため息は止まらない。
だが、タウは知らない『まーちゃん共和国』と『まーちゃん様共和国』で激論が繰り広げられたことを。
意外と平和なのかもしれない……この国。
数か月後、マリブの活躍を絵本にした物語が周辺各国を巻き込んで流行してしまう。
それはタウの存在を旗頭に『慢性的な人材不足に陥っていたこの国』に強い個性を持った女性があつまるきっかけになる。それまでの女性差別が横行していた国は、一気に女性主導国家に変貌した。
そしてその現象を見たマイルズがマリブ変身セットを売り出そうとしてタウに止められる。
そんな幸せな未来が待っているのだが……それはもう少し先の事。
タウの苦悩はしばし続く……。
エドメ&オーギュスタン――――――――――――――
「生きてる?」
エドメが自分をかばって下敷きになっているオーギュスタンに声をかける。
「………無言で尻をなでるな!」
2人は兵に追われ山中を駆けていた。4日は逃げ切った。
だが5日目に追いつかれ、逃走先で崖から落ちてしまった。
落ちた先、全力で植物操作魔法を使い一命をとりとめていた。
その後不思議なことに追撃は無くなっている。
「つれないこと言うなよ、リュリュ」
余裕ありそうなオーギュスタンの声にエドメはほっとする。直後オーギュスタンのセリフに驚きも感じた。
「いつから知ってた………」
「わりかし初めから」
下敷きにした回復魔法術師はあっけらかんと言い切る。
「俺が教会に引っ張られていってから2年。まだ男の恰好を許されているとは思わなかったよ……」
「なんだよ、嫁の貰い手がないって言いたいのかよ!」
「いや。村長に感謝してる。教会本部に連れて行かれ……諦めていたからな……」
「ちっ、勝手にあきらめてんじゃねーよ!」
オーギュスタンは稀有な存在だった。
どちらの世界の魔法も使える。しかも回復魔法をだ。
異世界にながれて1年後にその事実が発覚した。そしてすぐさまオーギュスタンは教会本部に監禁される形で魔法を磨くことになった。休みは無く。村に戻れる可能性もなかった。
「……」
「……」
その後二人が何を語ったかは2人のみ知ること。
ただ、山を抜けた先。目的地の村で待っていたクロードとポールが2人の距離感が変わっていることに気づきニヤニヤしていた。それだけ記載する。
テレーズ&レオ――――――――――――――
「ただいまー」
彼がドアを開けるとお腹が目立つようになった妻が待っていた。
「お帰り~」
彼は今、幸せと緊張のさなかにいた。
職場での飲み会でも諸先輩方にどうしたらいいのかを聞いて酒を飲まないぐらいだ。
生まれ来るのは男の子と知っていた。
なんとなくではない。夢かもしれないが彼女の妊娠初期に彼は神様に教えてもらった。
医者からも同じように教えてもらえたので間違いない。
「名前考えてくれた?」
食事中、妻からの質問に彼は自信満々と答える。
「ああ、ずいぶん前から決めてた!」
「女の子かもしれなかったのに?」
微笑。若干の非難のまなざしも彼はお構いなしに続ける。
「『衛』だ!」
「……いい名前ね」
「ああ。おかしな話だが俺は、生まれる前からずっと君に守られてきたような気がする。……だから初めて会った時から決意してたんだ……。今度は俺が君を守ってゆく! とね……。だから、俺たちの子にもいつか誰かを守ってほしい……」
世は世紀末。恐怖の大魔王が世界を滅ぼすとか。隕石がぶつかるとか。千年前に延期された終末が来るとか。色々言われていたその時期。一人の男の子が生まれる。
命名:竹中 衛
『間違えて2人の性別が逆転しちゃったとか、他意はない! by運命神』
何故だかその後に生れた妹が超能力を持っていたのはきっと運命のいたずらだったのだろう。
きっと、神様がサービスをつけて誤魔化したとかそんなことではきっとない……はずだ。
(4章完)
衛君の両親はお父さん(テレーズの魂)とお母さん(レオの魂)でした!
ハッピーエンドです。
だれがどう言おうがハッピーなはずです。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
引き続きお付き合いいただけると幸いです。





