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80「天罰の執行者」

後半残虐シーンがあります。

・あとがきに77話でオーギュスタンの後悔の理由を解説しています。ご参考まで。

――――――――――――

 久しぶりのグルンド。

 久しぶりの実家。

 こんにちはマイルズです。

 私は今、マモルンの膝の上にいます。私をやさしく抱えてくれるこの感覚は母性?


「残念なのは胸部装甲が薄い事ですね」

「まーちゃん、『でもそれがいい!』……というやつよ」

「創造主様。丸雪も同様に考えます。『これから育つもん!』……も至高! と」

 隣の香澄ちゃん丸雪コンビが目を爛々とさせて語ります。

 わからない……こともないですが、マモルンが……私を抱く力が強くなるので簡便なのです。


「マイルズ……」

「何ですか? マモルン?」

 ぼそっと『それ定着させる気か……』とか聞こえています。

 マモルンはマモルン以外何者でもないですよ?

 可笑しいですね??


「マモルン。もうそろそろ時間だね」

 香澄ちゃんが残念そうに言います。

 お2人もこれから向かう先があります。少し寂しいです……。


「マイルズ……半日もしたら帰ってくるぞ? 寂しいのか?」

 マモルンが優しいのです。ですので素直に頷き、甘えます。


「じゃ、一緒に行くか?」

 後ろに控える権三郎を見ると、決意に固められた瞳で『今度こそ大丈夫です』と力強く語っています。


「いきます!」

「よし! じゃあ、久しぶりに外の空気吸うか!」

「まーちゃん。今日は快晴だよ」

「丸雪の愛らしさが映える天気ですよ、創造主様」

 リビングから立ち上がると、香澄ちゃんとマモルンは私の手を引いてくれます。

 ですが……。

 戸口まで来ると……。玄関まで来ると……。私はその握られた手を離してしまいます。

 このままでは2人の心遣いを無駄にしてしまうと思い、笑顔です。


「やっぱり、ま-ちゃん。お家で料理作るのです。美味しいの作って待っています。いってらっしゃい」

 手を振る。

 2人の顔は少し寂しそうでしたがゆっくりと進み、家を出ていきました……。

 さて、料理を作りますか……。

 と言っても作ってくれるのは権三郎です。

 ですが! お野菜の土を落とすのを一緒にできます!

 その後、味を見るのもできます!

 満足のいく味になったそれをもってリビングに戻ります。

 私が席に着くと私の目の前に料理が置かれようとしたので、柔らかく拒否し対面の席に置いてもらいます。

 誰もいない対面の席に料理とスプーンが置かれます。

 私はオーギュスタンさんの《遺書》を取り出し、読みます。


『ママンのポトフが食べたかった』

 マモルンがフランス語ができました。

 英語もドイツ語もスペイン語も行けるようです。

 マモルンは天才なのでしょうか? 衛君も見習って欲しいところです……。

 遺書に目を落としポトフから目を離した隙に……ポトフを持ち上げる人物がいました。

 その人物は遠慮と言う言葉を知らないのか、気にせずポトフを食べます。

「うまいな」

「勝さん1号。遠慮と言う言葉を……」

 私の苦言を勝さん1号の言葉が遮ります。

「本場のポトフは家庭によって違うそうだぞ? 彼が食べたかったのがこれとは違うかもしれないな……」

「……どうしろと言うのですか……」

 何なのですかこの人!

 気遣いと言う言葉をどこに落としてきたのですか! むきーなのです!!

「ん? 本人に聞けばいい」

 はっ?

 私は思わず前傾姿勢になり、まーちゃん用の椅子から落ちそうになります。

「ははは、本体はいつも愉快だな」

 そんなことどうでもいいのです! さっきの言葉は何ですか!!

「いや、生きているぞ? タウ殿から先ほど連絡があった。2人とも健在だと」

 その言葉に、私は憑き物がおちたような感覚に陥ります。

 どっと疲れを感じて椅子に深く座ります。

「グルンドに呼ぼうか? きっといい観光になるぞ?」

 この! この! この!

「ダメです! 食料沢山持って遊びにいくのです!! 遊びに来てもらうのは次回なのです!!」

 勝さん1号が笑っています。そしてポトフを2口目。

「これ、おでんに近くね? 香草入れた??」

 ……はっ? しまったのです!! 間違って出汁を………。

「ははは、うっかり屋さんだな、本体よ!」

「むきー、勝さん1号には………………………………。

 ……勝さん1号、私たちはいったい何なのでしょうね……」

 今回の件すべて聞きました。

 神格を持った勝さんが現れたらしいのです。では私は?

 勝さん1号は?

 いったい何だというのでしょう?


「本体よ。私は私で……本体は本体。勝さんは勝さん。それでいい。きっと何が正しいなどと結論を急ぐと碌な目に合わんぞ……。今を楽しめ。本体は『見た目は子供、中身は大人』でちょっぴりどじな奇天烈幼児で人生楽しめ。それ以上はいらん。必要ないんだよ……」

 自分も15歳の体に引っ張られて癖に…大人ぶっているのです……。

 ……でも、それでいいのかもしれません。

 全てを直ぐに正す、そんな証明する必要はないのかもしれません。

「時間が解決してくれる……」

「……そうですね。ではまず、勝さん1号にオーギュスタンさんの所へ行くため、いっぱい仕事してもらいましょう!」

「なっ!?」

「寝なくていい案山子の体! うらやましいです!!」

「くそ、心にもない事を!」

 お互いににらみ合い。

 やがて見つめあい。

 この私と同質の存在は。私と自然と笑いあいます。

 今は……。今はこれでいいのです。そうですよね。

 さあ! 遊びに行くために真面目に働くのです!

 ……主に勝さん一号が!

「そんなこというと芋羊羹をお土産に持ってきたけど、あげないぞ?」

 勝さん1号、私たちはきっと一生の友達なのです!

「手のひら返し、はやっ!」

 ふふふ。まずは芋羊羹で一服しましょう~。

 権三郎、お茶をお願いします!

 もちろん緑茶ですよ!

 追伸、帰宅した2人にポトフを出したら『このおでん美味しい~』と言われました。

 確かに具材がおでんでした!

 悔しいのです!



マイルズの知らなくてよい結末。第三者視点――――――――――――――――――――

『ハロー、みんなーきこえるかなー!』

 マイルズを守っていた荒れ狂う自然神が魔法少女マモルンによって説得、その姿を消したその数分後の事だった。

 教国にいる知的生命体全ての脳内に男とも女とも判断のつかない陽気な声が響き渡った。


『僕の名前は運命神♪ 今日はー、みんなにー、天罰のお知らせだぁーよー♪』

 その直後脳裏に短髪でひげを蓄えた赤髪の青年が血涙を流し祈りを捧げている映像が映る。

 その悲惨な姿に人々はどこか神聖なものを感じていた。


『はーい、これが君たちがあがめていた神様の現在でーす!』

 国全体からざわめきが起こる。


『これはー5級神である彼、本人からのー、嘆願でー、やってるだよー? わっかるかなー?』

 国の混乱は続く。


『神格をへんじょーしてー、君たちの罪を毎日受け止めてるーってことだよー。なかなかできるもんじゃないよー。やだー、仕事のできない子だけど真面目ちゃんだね♪』

 青年の映像はそこで途絶える。


『でー、みんなに伝えることがあります!

 この国の首脳部の人たちが禁忌に触れました! あと私の怒りにも触れました!

 やー、すごいよー。私を怒らせるなんて1万年ぶりだ―。前の時はうっかりと文明滅ぼしちゃった♪ いやー! なつかしー』

 そこで民衆から声が上がる。


「運命神様! われらもその首脳部の被害者です!」

 運命神に届くかどうかわからないが叫ばずにはいられない。


『そんな代表質問がありましたー。だよねー。そう、思うよねー。

 …………。

 だが、奴らを生かしたのは、のさばらせたのは、禁忌を犯させたのはお前達だ。

 被害者面をしたお前たちがそいつらを自らの血で育て、横暴を煽ったのだ。その罪は等しく償われるべきだ……』

 陽気な運命神が急激に冷たくなる。

 そして、そこから2種類の人種へメッセージを送られる。

 まずは1種類目の人種。


『さてー。とはいえ僕も神様だからさー。

 神罰執行時に10名だけ! 10名だけ僕の力をふるっていいって許可をね。会議で引き出してきたんだよ♪

 やー、ぼくやさしー♪

 じゃぁ、10名選んでね♪ 10日後正午に神の丘で待ってるよーじゃね!』

 直後狂信的な信徒の間で血みどろの殺し合いが始まった。


 もう1種類の人種には。その後のメッセージがあった。

『という事で神罰対象者たちにはここまでだったりします!

 えー、驚いた? ねぇ? 驚いた? ぷーくすくす。

 神様だってそんなに下界にかまけてられないさー。

 なのでねー、神罰対象者の皆さんはー、勝手に殺しあって減ってもらいまーす!

 見分け方は簡単だよ!

 額の前に赤い丸が浮かんでる人は神罰対象者ね! 気を付けるよーに! 隠しても浮かぶから安心してね♪

 あー、君、善意で伝えようとしても無駄だよー。この事情についてはー、紙にもかけないし声も出ないよー。

 あー、伝えようとした子がころされちゃったよー。残念!

 じゃ! 害悪と判断されなかった皆! 神の丘と神罰対象者には近づいちゃだめよー! 運命神との や・く・そ・く♪

 じゃねー。また10日後楽しみにしててねー』

 声が消えた。この国で始まって以来の大混乱が始まる。

 そんな中、反乱軍の動きは早かった。

 これ幸いと内通者のあぶり出しに使用。

 そのままの勢いで一気に殺しあっている教会軍へ包囲殲滅戦を展開する。

 地方でも神罰対象狩りは加速される。その殆どが地方で横暴の限りを尽くしていた聖職者だ……。一見善人の皮を被った者までもがあぶりだされ……その本性をさらす。

 地方は神罰対象者が少数だからこそ安定した掃討ができたが。

 だが教都は違った。ほぼ全員が神罰対象者。

 親が子を殺し、子が親を殺す。笑顔の隣人を笑顔で殺す。数日を待たずして死体が道にあふれる。

 5日後100名まで数を減らしたテレーズの軍が戻ってくるころには教都の人口の9割が死滅していた。

 そして残りもテレーズの軍も教都で殺される。



――――10日後、神の丘

 11名の人間がそこにいた。

 その魔法技術で大量虐殺を成しえた教主と大司教の一派8名。

 教都制圧を始めた時点で民衆もろとも魔法の餌食にされたが混乱を生き抜いたレオ、ヤン、テレーズの3人の戦士だ。


「ああ、軟弱者よ。私が生き残るために死ねるのだ。うれしかろう」

 テレーズはレイピアを弄びながら。武器を失い大司教一派に3人がかりで組み伏せられたレオを見下ろす。

「さぁ、最後は私に刺されて死ぬのだ。喜んで死んでおくれ!」

 次の瞬間。テレーズの腹に穴が開く。

「え? ……教主様?」

 絶望の表情で教主を見るテレーズ。

「ふむ。計算もできんのか? この薄汚い廃棄物よ。ここには12人おる。そして1人殺すことで2人減るであればやるしか無かろう? その誰の子ともしれない子を腹に抱えて死ね」

「あ……なたの、……………………赤ちゃん……………………なん…………で……………」

 色濃く浮かぶテレーズの絶望。


「くくくく、我が愛しのレオが何でもすると嘆願するから生かしてやっていたというのにそんなことも知らんのか。廃棄物」

 教主の言葉にテレーズの瞳は憎しみに染まる。しかしそれは言葉にできない。なぜならば喉を突かれたからだ。せき込み憎しみの色が増す。

「いやはや滑稽滑稽。お前の事皆が何と呼んでいたかわかるか?

 便所。だよ。

 お前を抱く係は便所掃除って呼ばれてたんだよ? 知らなかったか?」

 ヤンが爆笑している。

 鞘に刺したままの剣でテレーズの喉をついたのはヤンの仕業だ。

「うぉおおおおおおおおおおお!」

 レオは涙を流しながら暴れる。

 だが拘束は解けない。

 テレーズは最後にレオを見る。その瞳は何も語っていない。やがて体と共に瞳も力を失い大地に転がった。

「ああああああああああああああああああああああああああああ!」

 レオの絶叫が響き渡ると同時だった。神の丘に光が消えうせる。そしてただ浮かび上がるは巨大な運命神の姿のみ。

『やっほー! みんなー、そろったかなー? かなー?』

 軽い運命神に全員が苦笑いだ。それはどこか安心感を抱いているようだった。

『でもー、あれれー? 9人しかいないよー? どした? もう1人かもん!』

 その言葉に騒然とする。

 レオはその一瞬、拘束が緩んだ隙にテレーズへ駆ける。

 救いようのない女だ。と思っていたのも事実だ。

 毎晩の痴態に痴女め。と思っていたのも事実だ。

 だがレオはそれでも『彼女が』少しの幸せでも抱いてくれるのであれば世界すら敵に回そうと誓っていた。

 テレーズを拉致し教主に売ったのはヤンだ。

 テレーズ失踪後2年でその情報はつかんでいた。

 テレーズを今のテレーズに仕込んだのもヤンだ。

 薬と魔法の前にレオは無力だった。臍を噛む様な毎日だった。

 2年でテレーズを破棄処分にしようとした彼らを止めるために自らのすべてを売り渡したのはレオの意思だ。

 彼は騎士だった。一度立てた守るという誓い、それに背く事それはレオの中にはひと欠片も存在しなかった。

 だから、

 だから、

 だから……『神罰対象者ではないレオ』がここにいる。

 守ると誓ったテレーズの遺体を抱きしめ。泣きながら。

 神罰対象者であるテレーズを想ってここにいた。


『うーん、じゃあ。死んじゃってるけどその子でいいか!』

 テレーズを差されたときレオは驚愕した。

「待ってくだされ! なぜですか? 10名いるではありませんか?」

 教主が焦る。《恩赦》を自分が得られなくなるかもしれないからだ。

『ふぁ? だってその子、神罰対象者じゃないよー』

 運命神がレオを指さして言う。

 再び騒然とする。運命神は『ここでネタ晴らしだね♪』と呟いて背後光を強くする。

『じゃー、10名揃ったという事で! 皆には神様会議で僕に与えられた『10名の神罰執行権限』を行使しまーす!』

 一瞬の静寂。その後必死な罵倒が飛ぶ。

 口々に『恩赦ではないのか!』『詐欺だ! この嘘つき悪魔め!』『だましていたのか! 神が!』

『黙れ人間共。

 僕は『10名だけ僕の力をふるっていい』と言ったのだ。

 自分たちの都合の良い解釈をしたのはお前らだ。

 私は一片の嘘もついていない。

 貴様らが信仰に準じる聖職者であれば罰ではあるが……貴様らがあがめる神が受けている苦痛を共に受けてもらおうというのだ。

 文句を垂れるのではなく、神の慈悲に感謝してしかるべきであろう。

 ……さぁ、貴様らはこれから最低でも1万年貴様らが敬う神と共に信者の行う罪を受け止め、被害者の苦痛を肩代わりするのだ誇るがよい……』

 その迫力に全員が言葉を失う。

 運命神が腕を振り上げ……。


「お待ちください!」

 レオの魂の叫びが響く。

「伏して、伏してお願い奉る!」

『……申せ』

「はっ、このテレーズの代わりに私を、この罪深き私をお選びいただけないでしょうか!」

 運命神はレオを一瞥して冷たい視線のまま首を振る。

『無理だな。その者魂、罪に汚れている。何より貴様の事を知って尚、貴様への罪の意識を持たず死んでいる。罪深き魂だ』

「それでも! ……私に差し出せるものは命しかございません。苦痛をお望みであれば100度殺していただいても!」

『……くどい』

「守ると誓った。亡骸でしか取り戻せなった。……それを奪うというのであれば私は神に弓を弾きましょう! それであれば罰の対象となりましょう!」

 運命神は剣を構えるレオを見下ろし深くため息をつく。

『貴様にその魂の救済ができるのか?』

「……」

『もう、消しても消えない罪に汚れたその魂。奇麗に消せるのか?』

「……」

『これは罰だが救いでもあるのだぞ?先に死んだ神罰対象者はその魂、原初の状態に戻され世界に還元されている。いつしか生まれ変わるかもしれんが汚れは、罪は背負ったままだ。しかしこの最も汚れた10名は違う。原初の戻す前に神と共に浄化されるのだ。救いであろう?』

「……」

 レオの意思は変わらない。

 運命神はこういった男を知っている。そして嫌いではなかった。

『ではやってみるがよい。ただし、消せなかった場合、その時点で改めてその者の魂は神罰へとまわされる』

「はっ」

『分かっているのか? 今お前も死ぬという事だぞ?』

「はっ、喜んで!」

 運命神は疲れ切った顔でうなだれる。

『はぁ……わかったわかった。もうこんまけー。じゃ死ね。だけど魂の浄化に成功したら2人そろって転生させてあげるよ。この運命神権限でね。だから…………がんばるんだよ……』

 決意に輝くレオその顔に少しばかりの喜びを運命神は感じていた。

 そして彼の命を消した。

 その道のりはつらい道のりだろう。きっと1万年の神罰の方が優しい。そんな道のりだ。だからそれを乗り越えられたのであれば少しご褒美をあげても良い。そう運命神は思った。


「運命神様! 我らに……」

 教主が何か言う前に運命神は腕を振るう。その場にいた9名は消えてなくなる。

 そして暗闇の中に一筋の光が浮かび上がる。

『やあ、ダメ部下』

 光の中で平伏する短髪でひげを蓄えた赤髪の青年は相も変わらず血涙を流しながら言う。

『神の慈悲に感謝いたします。あと、元部下でございます』

 運命神は『ふん』と鼻を鳴らしていう。

『辞表は却下した。1万年の長期休暇扱いだ』

 赤髪の青年は目を丸くして驚く。そして元上司。いや、上司のやさしさに感謝する。

『君は戻ってくる前にあの世界で社会人しておいでよー。報・連・相できない子は、仕事ができても無能な子だよ?』

『ほうれん草ですか?』

『うぷぷ。君は人間だった時からそうだね。……でもそんな君だから神にスカウトしたんだ。戻ってきて僕が間違ってなかったことを証明しておくれ。それが僕のボーナス査定にかかわるんだからさ!』

 赤髪の青年は笑う。

 自分がしでかしてしまった失敗を、罪を、がむしゃらに一人で被ろうと右往左往した昔。

 最終的にかばってくれたこの人(神)は別れ際に絶望しきった顔で説教してくれた。

 赤髪の青年はその表情が忘れられず。後悔しながら罰を受け続けてきた。

 もう、自分をスカウトとしてくれた時の笑顔を見れないのだと思っていた。

 でも。期せずして見れた。彼にはそれで十分だった。


『部下のしでかしたことは上司の責任。やれやれ、どうやって上を誤魔かせるかねー。

 ……ま、いっか、反省したら今度は失敗しないように頑張んな』

『はい』

 そして光が消え。闇が消え。いつもの日常が世界に戻ってくる。

 神罰は終わる。

 この国の革命も終わる。

 そして若葉が芽吹くのと同じに、新しい未来がこの国に始まる。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『オーギュスタンの後悔』についてご理解し辛いと思い、追記します。


――――――――――

後悔1「……でも知らなかったんだよ。これが最悪手に近いなんて……」

前提:彼らは次の街に魔王軍の増援が到着しつつあり、その目的がマイルズ救出であることを知りません


選択①「そのまま逃げる」

→反乱軍との全面衝突回避のため山狩りを中断。マイルズたちは艱難辛苦の末生還。


選択②「エドメ(orオーギュスタン)が囮をする」

→テレーズとの遭遇前に村を抜け。反乱軍に合流。しかし囮はレオが庇えないところで捕縛され死亡。


選択③「3人で村を抜ける」

→無事通過し、教会軍は反乱軍の牽制にあい、騎馬隊が村から出られないのでマイルズたちはあっけなく生還。


選択④「マイルズのみ逃がす」

→本編。マイルズの精神に深刻なダメージを負う


なぜそのような選択をしたのか?

→旅を通じて『勝手についてきた』自分たちが足手まといになっていることに気付いてしまった為。また、マイルズの精神年齢がもっと高いと勝手に判断してしまい……(オーギュスタンも自分がいなければ、マイルズだけであれば、予定通り教都で比較的安全に破壊活動ができていたと自覚してしまっています)


――――――――――

後悔2「思いもよらなかったんだよ。まさか、まーちゃん様が俺たちをそんなに思ってくれていたなんて……」

解説:マイルズは見も知らない土地に誘拐されて悪ぶって、意地を張ってはいたがずっと心細く心の中で泣いている生活だった(心は大人だが体は子供。子供の体に引っ張られていることに周りも平時であれば不安が募っていると察するに容易だったはず……)。そこで当初より優しく、マイルズの心の支えになっていたオーギュスタンが『自分のせい』で死を決意して囮となる。誰かひとり近くに居てくれれば耐えられたものが『偽』オーギュスタンへの拷問で決壊。結果としてマイルズが負った傷の中でオーギュスタンが意図せずつけてしまった心の傷が最も大きかった……。

――――――――――


 覆水盆に返らず。

 でもこぼしてからのリカバリーが最も重要です。

 それができない人はいくつになっても誤魔化したり、いらない理屈で逃げます。そうあってほしくないですが……さて、彼はどうでしょうか……。

以上、蛇足でした。


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[一言] (゜_゜ )んと~ 二人は生きてるでおけー?
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