79「救出」
『主人。すまぬ。ここまでのようだ……』
白龍がそう言うと同時に俺たちの近くにいた小型白龍以外が光に包まれて砕け散る。
……こんばんは衛です。
超展開について行けません……衛です。
なぜか少女になっています……衛です。
意味が分からないこと己溜まっているのは自分がよく知っています……衛です。
「……何? あれ?」
マイルズの知り合いとして紹介され、最近お世話になっているアリリィさんからの冷たい視線に耐え兼ね……一応他人の振りをしてみた。
「衛君の知り合いでしょ? さっき『勝叔父さん』っていったじゃん?」
アリリィさんのまなざしが痛い。
「あれ? 衛君。勝さんって魔宝技師の?」
香澄が核心をつく。
……あー、そうだ。あれで? これで? ……結局なんだ?
マイルズっていう幼児の中にいる勝叔父さん。
魔法技師とかいう肩書を持つ同世代のゴーレムみたいになった勝叔父さん。
そして今、一番見覚えのある日本人男性、いやサラリーマンの姿をした勝叔父さん。
……絶賛混乱中!!
だが、現状がその状態を許してくれない。
『まずいぞ、アレはこの世界を崩すつもりだぞ……』
……?
「ねぇねぇ。この蛇何言ってるかわかる人?」
ちび白龍。訳知り顔で難しい台詞吐くな!
「うむ、いまいちわからん……」
「いや蛇じゃねーし。龍だし」
「ルースお兄ちゃん、細かいこと気にしたら負けだよ!」
「説明をお願いします」
カクノシン王子、ルースさん、アリリィさん、香澄とそれぞれ感想を続ける。
みんな状況がわからなかったのね! 俺と一緒♪
白龍は雰囲気出していたのが自分一人だと気づき、すごくがっかりしている。
『うむ、きちんと説明しよう。まずあれの存在だが自然神だ』
……?
『……そこから?』
全員が頷くと白龍は再び脱力して首を垂れる。
『神とは何か問われると我も神ではないので正しい回答が出来ぬ。概念的に理解するのであれば「世界を管理する者達」だと言えよう』
ほうほう。ふむふむ。……あとで香澄に教えてもらおう。
『その中でも神には2種類ある。知的生命体から高次元生命体に乞われ、存在が神に【なる】管理神と呼ばれる者達。世界創世記に【発生】し世界の安定をもたらす自然神。前者は世界管理の必要性の中から生まれる。後者は……世界とともに生まれる』
「という事は……」
アリリィさんがつなぐ。
『管理神が世界を安定させているうちは……自然神が出張ることはまずない』
「問題は、その力と性格……目的と言う事だな」
ルースさんがそういうと白龍は頷く。
『通常の自然神は世界のゆがみを修正するために生れる。そしてその力は管理神など足元にも及ばないほど強力だ……今の上位神と呼ばれる者たちはみなこの自然神だ』
「で、その自然神が何故か今……世界を壊そうとしている。と……」
香澄、お前スゲーなそのファンタジートークについていけるのか!
もしかして隠れオタク?
「……分かっておらん様子だな?」
カクノシン王子が俺をのぞき込んでくる。
くっそ、なんだその顔。惚れちまいそうじゃねーか。
赤くなった俺を見て香澄はカクノシン王子の肩に手を置き何かささやいている香澄さん。その顔黒くて怖いです……。
「まっまぁ、あれだ…………」
カクノシン王子が少し青い顔で言葉を続ける。この人が怯えたの初めて見た。
「『君の』勝叔父さんが世界を壊そうとしているから……なだめようね! という事だな」
おお、なるほど!
「『君の』っていう言葉に意図を感じるわ……。王子、後で御話があります」
「拒否する! ふっ」
カクノシン王子は偉そうなセリフを吐きながら白龍の陰に隠れた。
「……で、誰がどうやってとめるの? あれ?」
あれ? 一斉に視線が俺に集まってる。…………なして?
「いやいやいやいや。俺はただ『手術』とか言って『性転換』までしやがったマイルズに、一言言ってやろうと思ってついてきただけだよ?」
俺の体は現在見事に女だった。しかも美少女。
年齢は15歳ぐらいか。めっちゃタイプ! ……ってちが。
「それは説明したよね? 衛君のもう一つの体が女の子だったって。しかも私のタイプの……」
最後の言葉は聞かなかったことにしよう……男の時より危険な香りがする!
でも、今更だよな……。慣れない女の生活始めて……香澄に手取り足取り密着して教えてもらってたからな……。
「まぁ、それは置いておけ。あの自然神、形が特徴的すぎる。という事は自然神がこの世界に顕現存した理由、目的は形に関係があると考えて間違いないだろう……。そしてその形と知己がある君なら或いは……という考えだよ。どうだ?」
ルースさんが俺を諭すように言います……。
まぁ、なんだかんだいって勝叔父さんとは絡んでたけど……。
でも、俺。力ないよ?
神様止めるとかむりげーじゃね?
しかも『殲滅モード』の勝叔父さんだよ?
「大丈夫! まーちゃんと私の改造のおかげで、一撃でやられることは《《多分》》ないわ!」
あれ? 発言が勝叔父さんポイよ? 香澄……。
「というか、………改造?」
香澄と目が合う。目を見開いて驚いて『てへ♪』とか言いながら舌を出して頭をこつんと叩くと横を向き、視線を外す………。
「おまっ! お前ら俺に何しやがった!!!!!!!!!!!!!!!!」
「とりあえず、『スイート♡ハート』って叫んでみて♪」
「おいいいいいいいいいいいいいいいい、俺の言葉!」
「まーちゃんとね。『昭和掛け声』と『平成掛け声』で論争が起こったのよ……結局私が勝って『平成掛け声』になったわ!」
違う!
俺の知ってる香澄はもっとなんか黒かったはず!
こんな俺を見てハァハァ言ってる女じゃなかったはず!
どっちかっていうと今の方が安心できる……できるか????
「1・2・3、はい!」
「『スイート♡ハート』……」
「声が小さい!」
何? 鬼教官? P気取り?
『ほう。あの自然神、こちらの様子が気になる様だぞ』
勝叔父さんを見るとカンペみたいな物を持って手を振っている。
【恥じらいを捨てるんだ! それが魔法少女への第一歩!】
何かすっごい間違いと、微妙な勘違いを感じる。
「なんかこのままでも意志が通じそうだけど……やらなきゃだめ?」
問うと全員に頷かれた……あ、あっちで勝叔父さんも頷いてる……本当に必要か?
ええい! 自棄だ!!! 男は度胸!
「『スイート♡ハート』!」
その言葉を合図に俺の体が発光する!
そして何故か回転する俺。すべて終わり体が勝手にポーズをとる。
こらこらこら! これ昭和の方の衣装!
なに額のアクセが運命神の文様? ……しるか!!!!
「思った以上にぐっど!」
香澄さんその手に持つものは何ですか?
……記憶が正しければ映像記録用の魔法道具では?
「衛君。考えたら負けるよ! 感じるんだよ! 愛と正義を!」
おっおう! なんとなくそっちが熱血だな!!
さて、異世界人の皆さんの反応はと言うと……。
「「「痴女?」」」
ですよねー。ちくしょーーーーーーーーーーーー!
勝叔父さんをちらっと見ると【ぐっじょぶマイルズ!】と掲げている。
くそ、あいつ完全に自我取り戻してるよね! ねぇ!!!
「衛君。これを………」
香澄が神妙な顔でバレーボール位の大きさの白い物体を渡してきた。
「魔法力認証完了。マスター登録。マモル・ヘンタイ・タケナカ」
おっし。お前は俺の敵だ!
「やあ、こんにちは! 僕は君のサポートロボ………………兼盗撮係の 丸雪だよ! よろしくね!」
おい! こいつボソッと盗撮とか言いやがったぞ! おい!
「……これ、香澄の人格がベースだよね……」
犯人が目を合わせようとしません……。
「こんな緊急時に見つめてくるなんて衛君大胆♪」
よし、逃げるぞ!
「待てちj……じゃない衛君。どうかマイルズの為にお願いできないだろうか……」
ルースさんがいつのまにか俺の前に回り込んで頭を下げる。
今痴女って言おうとしたよね? ねぇ?
「行くしかあるまい。あれがまた暴走すれば世界が危ないのだからな」
おいこらカクノシン!
無駄にキラキラしやがってむかつく!
でも……ちくしょう! 正論じゃねーか!!
「で、どうやって行けと?」
あ? アリリィさんが静か?
いや、変身後からずっと腹抱えて転がってるよ……もういいじゃねーか。あの人、発言しない方が話が進むし!
「マモルンの意思で飛べるよ!」
……こら、くそ毛玉お前イマナンテイッタ……。
「飛べるよ!」
お、肉球出して誤魔化したか? そっちじゃねーよ。
「マモルン♪」
ぐああああああああ!
「さぁ、皆さんご一緒に!」
香澄お前!!!!!!! なにやって…………。
「「「頑張れ! 美少女(笑)戦士マモルン!!!」」」
おい! 言って笑うくらいならいうな!
そして勝叔父さん【どんまい! マモルン!!】じゃねーよ!
「おい、毛玉。必殺の武器とかあるんだろうな」
「毛玉じゃないよ、丸雪♪ だよ! マモルン! 武器なら…………えっと、マモルンハートスティックがあるよ!」
毛玉で十分だ。あとそのネーミング今決めたな!!!!
「…………どこにある?」
とりあえず必殺兵器を勝叔父さんにぶち込む!
それでかなりスッキリする筈だ!
「今だすよ…………おぇ。。。おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
……毛玉。その唾液だらけの棒で俺に何をしろと?
とりあえず汚いので毛玉の毛で拭く。
……拭き取れなかったので水魔法で洗う。
「シャワーだ! でも僕はマモルンと一緒にお風呂がいいな♪」
……熱湯にしてみた。
「マモルン。僕の体は温度感知機能付いてないよ?」
それでなんで熱湯てわかった?
ていうか風呂に一緒に入ってどうするつもりだ……。
「……」
実行犯が指示係を視ました。……お前ら仲いいな!!
勝叔父さんは勝叔父さんで【衛君それ後で譲って! 恵のお土産にするから!】って。
「勝叔父さん別れたから、恵ちゃんに接近禁止でしょ!!」
思わず叫んでしまった……というかやばい地雷踏み抜いた……。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』
絶叫がこだまする。
『何を言った! また世界に干渉を始めたぞ!!』
「マモルン! この場は惜しいけど……行くしかないよ!」
香澄……本当に惜しそうだな……世界が若干しか勝たなかったのか?
「「「頑張れ! 美少女(笑)戦士マモルン!!!」」」
……あのね、アリリィさん「自分で美少女ってwwwwwwwwww」とか言いながら転がるのやめて。
……マイルズと言い……もういや! この一家!!!
「いってきます」
「「「「がんばれ!マモルン!!」」」」
くそーーーーー!!!!
って勝叔父さんも【くじけるな! ガッツだマモルン!!】って!!!
あんたやっぱ自我取り戻してるだろ!!!!!
空に飛び上がる俺と毛玉。
「……毛玉。なんでお前も……」
「やだな、サポートシステムだから僕がいないと君はただの痴~女。だよ♪」
……もう気にせず……この恨みつらみを勝叔父さんにぶつけよう!
すぐに勝叔父さんを射程にとらえた俺はスティックを構える。
【いいね! 衛君のお父さんに見せたいな……私のスマホどこだっけ……写真写真……】
危機だ! 今すぐあいつを黙らせないと!!!!!
「……毛玉!」
「何? 痴女」
ぐっ、こいつ……目が合うと毛玉はニヤニヤが止まらない様子だった。
「……丸雪(ボソ」
「うん! マモルン! スティックの使い方だね! 敵に向けてこう叫ぶんだ!」
また叫ぶ系かよ……。
「マモルン・ハ-トフル破壊光線ってね!」
ハートフルに破壊光線は含まれないと思います!
「どんな兵器だ?」
「やってみるといいよ!」
ノーヒントか……思ったよりやりやがるこの毛玉……。
「まぁいい。『マモルン・ハ-トフル破壊光線』!」
セリフが終わるとスティックからハート形の光が前方にかたどられる。
そして……。
カッ!
光の速度でハート形ビームが勝叔父さんを打ち抜く!
光の速度? なのでハートが見えたのは一瞬だ。
【ふふふ、中々やるではないかマモルン!】
勝叔父さんがカンペでトークを続ける。声が通じるよ?
もうこの距離なら……。
【空中戦と地上戦、どっちが得意だ?】
……いや反応しないよ?
そんな発言あなたの世代の人しか気づかないよ?
【地上戦か、いいでしょう】
勝手に降りて行った……おい!
本当に誰かツッコミを!!
この連中に!
ツッコミを!!!
仕方なくゆっくりと降りてゆくと、後ろに手を組んだ状態の勝叔父さんがいた。
【私はとっても優しいのだ。とっておきのサービスで両手を使わない】
「勝叔父さん。うろ覚えだね?」
【……】
カンペに【……】書く人久しぶりに見たよ!
「マモルン! 地上戦モードに変身だ!」
……。
「マモルン! 地上戦モードに変身だ!」
……。
「マモルン! 地上戦モードに変身だ!」
おい毛玉! これ以上変身があるのか!!
「説明しよう! 衛君の変身は4種類実装されているのだ!(どやっ」
毛玉から香澄の声が聞こえる……4種類……。
【ワクワク!】
おう。おっさん!
ついに擬音まで書き始めたか!
「勝叔父さん、いい加減にしましょう。冷静に話をしましょう……」
勝叔父さんは腕組みをして顎に手を当てる。
ようやく冷静になってくれたのか……。
【わかった、その変身見たら話し合おう!!!】
冷静じゃなかった!!!
【マモルンGO! GO!】
……一回だけだぞ……。
【その表現ちょっとエロイ! 叔父さん的に衛君の将来が心配!】
俺的に叔父さんの将来が心配だよ!!
「どうどう、マモルン♪ 『変~身~!』だよ!」
はいはい……。
「……ふぅ…………………………変~身~! とう!」
飛んだのは俺の意思じゃない。
また俺から光が発せられる。……もういいよね……この演出……。
着地すると全身ボディースーツで上半身鎧を身にまとったのあれだった………ん?
あれだよ……。ベルトの。長年人気のやつ……はい、おしまい。
「解除………」
元の美少女戦士に戻る。
【衛君!】
「なんでしょう………」
【そのベルト譲って!】
「いや、勝叔父さん。これ昭君の年代には通じ………」
【私用でお土産にする!】
頭が痛い………もういいや。
「勝叔父さん。あっちに可愛い恋人がいるのにここにいていいの?」
「衛君……私は一体ここで何をしているんだ?」
戻ってきた。
俺は崖の向こうで避難していた一行に手を振る。
…………こっちこいやお前ら。
・・・
・・
・
「神よ、失礼を承知で申し上げる。我が子、マイルズは何処に……」
結局、あの後掛けの向こうのメンバーと合流した。
それまでの間勝叔父さんはあえてマイルズのことを触れないような話をしていた。だが、それもルースさんが追いつくまでだった。
それもそうだ、3歳の我が子がピンチにいると聞いて駆け付けたお父さんなのだから……。
「ああ、安心していい」
勝おじさんがそういうと世界が割れた。
……空間が割れたという規模じゃないんだよ。
空が真っ二つに割れて光の玉が一滴落ちてきた。そう、それがマイルズだった。俺たちが大騒ぎしたことも知らず天使の寝顔をさらしている。
「さて、無理な起こされ方をしてしまったからね……残念ながら私はここまでのようだ……」
いうだけ言って勝叔父さんは薄くなる自分の体に苦笑いを浮かべ、最後に俺を見た。
ミテイルンダロ? ソウイウコトダヨ。
消える直前、勝叔父さんの眼がそう語っていたような気がした。それは誰にどういうことを伝えようとしていたかわからなかった。
そして俺たちは眠りながらもルースさんにしがみつくマイルズを囲ってグルンドへと転送されるのだった。





