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69「で?何がしたいの?」

 濃い霧の中でヒトカケラの光に縋る。それが現在の私の心理状態です。

 馬鹿なことをしていることは理解しています。可能性がない事も理解しています。 

 ……ですが、皆さんならどうでしょうか?

 死んだはずの愛しい人が、その記憶をもって再び現れたとしたら?

 罠と分かっていても相手の懐に飛び込みたくならないでしょうか……。


「お母さん。ここのパン美味しいね♪」

 知っている笑顔。生まれて60年見続けてきた笑顔です。

 完璧に再現されたその笑顔。そこに娘を取り戻す要因があるはじゅ……。


「……あら? 今更気付いた?」

 くすりか……しかもこんなつよいものを……。


「今までのクスリが効いて無いようだったから、死んじゃうかもしれなけど……強いのにしたの♪ 効いてよかったわ~」

 うかつだった……くっ、思考がくもりがかって……。


「お母さん、すべては尊い主の為なのです。私が天国へ行くための犠牲になってね♪ お・か・あ・さ・ん♪」

 思考が混濁していく心で体を傍観する。もう何も考えられない。


「わかったわ、おかあさんがんばる……」

 そう、がんばるわ。あなたをとりもどすためにぃ……。


マイルズの視点――――――――――――――――――――

「交渉のお時間なのです!」

「まーちゃん可愛いね♪」

 香澄ちゃん叔父さんを膝の上から降ろすのです。

 私の威厳さんが遠巻きに他人の振りをしているのです。


「おーろーすーのでーす!」

「香澄お姉さま。これ使いますか?」

 ミリ姉! それは人権破壊兵器です。今すぐ捨ててください!


「ミリアムちゃん。ありがとう。何かな、これ?」

「幼児用リードです。マイルズにつけるとバ可愛いです」

 緊急離脱! ……ぐっホールドする力馬鹿強い! 香澄ちゃん、見た目によらず力持ち!


「つけましょう!」

 心の声を読まれた! 即決です。

 さて……人権さんがまたいずこかへ旅立たれました。

 それよりも……なぜミリ姉がここ獣王都に……しかも王宮にいるのか!


「マイルズが不安で見に来た。ハンター遠征は物のついで!」

 言い切った! あなたの目指す騎士の足掛かりであるハンターを『ついで』って!


「予定よりも長い期間帰ってこないからみんな心配したんだよ?」

 くっ、そんなこと言われるとホームシックにかかってしまうじゃないですか……。


「獣王様御一家にどれだけ迷惑かけているかって……」

 おっと『上げ落とし』だ!

 まーちゃん心にショックを受けたのです!

 もう、お家に帰ってやらないのです!

 獣王様のうちの子になるのです!

 魔法剣を作りまくってやるのです!

 シュンとする私を香澄ちゃんが撫でてくれます。


 撫でてくれたのでホールドが緩みます。

 そっと流れるように音もなく降り、忍者のように走り出しま…………ぐふっ。


「バ可愛い……そして便利♪ 衛君用もほしいわ……」

「でしょ? でも大人用はないのですよ? 香澄お姉さま」

 黒髪アジア系清楚な美少女と銀髪欧州系活発な美少女がする話ではありません。

 あと、香澄ちゃん危ない!

 想いが重過ぎて犯罪臭がします!

 衛君!

 逃げないで!

 世の為に生贄になって!!

 お願い!


「まーちゃん、逃げちゃダメよ」

「マイルズ、貴方にはすることがあるでしょ?」

 そうでした。衛君手術プラン(改造)を香澄ちゃんと検討して許可を頂かないと……。


「しょうがないのです」

「飴をあげるから頑張りなさい」

 ミリ姉から飴ちゃんをもらいます。

 ふっ、このマイルズあと1年もすれば4歳!

 いつまでも飴などで丸め込まれると御思いか!


「わーい、あめちゃんだー。ミリ姉大好き♪」

「よしよし」

 ええ、体が餌付け済みでした。私は悪くないと主張します。


「あまーいのです。ミリ姉も羊羹どうぞおいしいのです。緑茶はないのですが……」 

「あ、ちょっとまって……」

 そう言って香澄ちゃんがかばんを探し始めます……まさか、香澄ちゃん貴女!


「緑茶…………あるよ!」

 女神がいらっしゃいました。

 それよりも急須の創造なのです!

 土魔法でちょちょいのチョイなのです!


「あれ? どこから急須が……」

「香澄ちゃん気にしたら負けなのです! それよりもお茶を入れないとミリ姉が紅茶で食べちゃうのです! 外道なのです!」

 それから無事お茶で羊羹を頂き一心地ついてから衛君2.0のお話になりました。


「これとこれとこれはだめね。他も駄目なんだけども……」

 そう言って香澄ちゃんは別の紙を持ち出します。出来の良い紙です。異世界産ですね。


「このプランをのんでもらえるのであれば、大抵の事は許可します…………」

「ほっほう。でもこの状態を維持できるのは短い期間ですよ?」

「問題ありません。映像記録装置と記録媒体は勝さんにお願いして融通してもらいました」

 香澄ちゃんのカバンから取り出されるカメラと記録用魔法石。

 勝さん1号はどんな取引をしたのでしょうか……かなり高価な代物なのですが……最近食べ物の記憶ばかり見せつけられて、小さい報告事象は飛ばして見ていましたから……その弊害なのでしょうね……。


「ならば結構です。お互い良い関係が築けそうで何よりなのです」

「ええ、まーちゃん可愛いから私たちの養子にしてあげたいわ♪」

 それは実子が生まれたらいじめられるパターンなので遠慮します!

 その後祖母に報告の上、手術日程が決まりました。1週間後です。




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― 新着の感想 ―
[一言] |ω・*)香澄 犯罪の匂いがする
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