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63「お嬢様拾いました」

衛君の視点~~~~~~~~

「叔父さんその子は?」

「え? 拾いました♪」

 警察はどこだ! 親戚の叔父さんが異世界で援助交際!

 13・4歳位の黒髪で品のいいお嬢さん。

 ……目を覚まして!

 その人見た目15歳ぐらいだけど、中は40歳間近の叔父さんだよ!

 くそっ、奥さんに……あ、壮絶な離婚してた……すみません。


「あの……想像されている事はございません。貴族たるもの輿入れするまで男の方には触れぬもの。マサル様にはこちらのカフェをご紹介頂きました。我が侍従もおりますので……」

 部屋の隅の方でひっそりと和服メイドっぽいシックな色合いの服を着た、歳は俺と同じ位の黒髪ストレート美人と目が合う。俺に軽く会釈をする。運命を感じた。


「あ、ミスズは婚約者がおりますので……」

 ちっ。


「で、あらぬ疑いで私を辱めた上、婚約者ありの貴族の女性に色目を使った衛君。槍の訓練はどうだった?」

 あ、根に持たれた……。

 さて俺たちは今、ルースパン王都1号店のVIPルームにいる。なんでパン屋にVIPルーム? って思ったのだが、この間王家の人が来たようで突貫で用意したのだとか。

 そのことをパパルさんに聞いて『すごっすね! 王家が来るんですか!!』っていったら『うん、マサルさんがね……賢者様とね……』と少し暗い顔をしていました。

 王家の方が来店されたという評判と、貴族たちが開店前から足しげく通っているという現象が拍車をかけ、ルースパン王都1号店は作れば即完売の繁盛店になっていた。

 なお焼きたては店頭販売だが、夜のうちに作られた食パンやカステラにアイス、あと交易都市リャーシャから輸入されるようかんはこういったカフェで提供されている。

 俺が座ると紅茶とトースト。

 トーストの上にはバターが乗っている。あと横にアイスが添えられ完璧な3時のおやつだ。


「ふふふ、聞いて驚いてください! 中の8級の免状をもらいました!!」

 すごいでしょ! 始めて2週で初心者卒業ですよ!


「それってすごいの?」

「はぁ、始めて2週間だとすごい事だと思います。私は8の時に薙刀ですが上の3級まで至っていましたので……中段がどのようなものか……ミスズ、わかりますか?」

「存じております。先日10歳の甥っ子が中の1級試験を受けるにあたって槍の指導をいたしましたので」

 ……みんな揃って俺の心をへし折りに来る……。


「俺の話はいいの! で、なんでそちらのお貴族様といるんですか? 勝さん」

 勝叔父さんはSだと思います。

 というか、なんで俺を呼び出した場所にお貴族様がいるのか。そしてなぜ女性なのか。なによりなんで2人とも超美人さんなのか。

 うらやましい……。

 いかんいかん!

 俺にはミルスさんがいる。あの赤髪ののんびり屋さんがポリナルで俺を待っている!

 ……いや、まだ告白してないから待ってないけどね。うん、知ってるよ。言わなくてもいいよ……。


「衛君見てると飽きないね……」

「庶民の方の恋愛とはこんなにも熱く空回っているのですか……うらやましいものです」

「お嬢様、空回ってる時点でつらいだけだと考察します」

 外野どもヽ(`Д´)ノウルサイゾ!!


「で、なんだっけ? 衛君がチャラい件についてだっけ?」

「チャラいってなんでしょう?……」

「アルキア語でしょうか不勉強で申し訳ございません。存じ上げません…」

「チャラくないです! お2人は気にしなくてよい言葉です! あー、マサルさん楽しんでますね!」

「あ、ばれた」

「ばれないとでも!!!!」

 はぁはぁ、もう来週学会だから研究室に籠っているかと思ったのになんでこんなところで楽しくキレイどころとお茶してるの? そもそも『拾った』ってなんだよ!


「どうどう、言葉以上の事はないよ」

「その言葉が不明なんです! 『拾った』って世間体の悪い言葉なんでわざわざ?」

「マモル様。研究室で居場所のなかった私に、学会発表の助手という役職をお与えくださったマサル様はまさにわたくしたちを『拾って』頂いたのです。表現がよろしくございませんが、何の思い違いもございません」

 なんか影のあるセリフである。


「そもそも衛君。ちゃんと名乗ってないよね? 貴族のご令嬢に失礼じゃないのかな?」

「ああ、それもそうでした。お2人、遅くなりましたが私、竹中衛と言います。こちらのいいかただとマモル・タケナカですね。先月この世界に来た異世界人です。なんか審査で運命神っていう人にあって加護とかもらっちゃいました」

 そう言うとメイドさんのミスズさんが大げさに驚いている。


「お嬢様! この方も運命神の使徒様です……現在世界で2名しか確認されていな運命神の使徒様がまた……」

「そうですね。運命神の使徒様3名ともすべて顔見知りになれた様ですね……何の因果なのでしょうか……」

 あれ? この紋様そんなにすごいのかな? 叔父さんをチラ見する。


「ああ、私も昨日聞いたのだけども運命神の使徒は中位貴族並みの権限があるそうだよ」

 ほっほう。では俺の方が勝叔父さんよりも立場上ですね!


「馬鹿なこと考えてそうだから言うけど、この国で賢者って国王の次に偉いからね。私、その弟子って扱いだからね。高位貴族も真っ青な権限あるからね」

 くっ、はかない夢だった……。


「こちらの使徒様はずいぶん楽しいお方ですね」

 ほら、おじさん! お嬢様にクスクス笑いされてる!


「衛君。君好感触って言葉知ってるかい?」

「まじっすか! フラグ立ちましたかね! うわー、こまるわー」

 やべー、人生初モテ期か!


「君幼馴染たちから相当モテてたんじゃないの?」

「……………………くっ……………………暗黒時代の思い出はもういいじゃないですか………」

「どこかで掘られて来やがれ、鈍感系主人公が(ボソ」

 あれ? 勝叔父さんの辛辣さが違うベクトルに……まずいこと言ったかな?


「……え、まさか。英治の本命って俺だったり……」

「……………………」

 すっと視線を外す勝叔父さん。まって、勝叔父さんなんで俺の人間関係知ってるの?

 ていうかそもそもどこ情報?

 何情報?

 魔法違うよね?

 あれ、俺の記憶見たとか……あ、この人俺の体いじくった人だった!


「まさか……」

「ああ、その通りだよ(にやり」

 マジでか!

 くそこのマッド!

 ていうか他人にはそう見えたのか!

 ……こえぇよ。マジで怖いよ!

 そういえばバカのあいつが受験だけ必死にやって、不可能って言われたうちに入ってきたな。……あいつこの世界にまで追ってこないよね! ねぇ! 叔父さん目を合わせてよ!


「お嬢様、事の詳細を後ほど香澄様に報告しようと思います」

「ええ、なんというのでしょうか。この光景、心に訴えられる何かがありますわ」

 不覚にも俺はミスズさんの言葉を聞き取れていなかった。

 聞き取れていれば……きっと心構え位できたのに……。


「そろそろよろしいでしょうか?」

「はいはい、どうぞどうぞ。ほら衛君現実に戻っておいで~」

 肩をゆすられて強制的に現実に戻るとお嬢様が優雅な仕草で自己紹介をしてくれる。


「私はカミラ・ディバーン。神王国の貴族、ディバーン侯爵の長女です」

 侯爵様って偉かったですよね?


「異世界では大領主とかがもらうね。加賀百万石とかね」

「その様な認識で問題ございません。神王国が拡大する際に最も武功を上げた家として有名ですね」

 ほぇー。


「そして私の侍従をしてくれているミスズです」

「ご紹介にあずかりましたミスズ・イケダです。祖父が異世界人で男爵を頂いております。私はしがない男爵家の4女、今はお嬢様の侍従としてお仕えしております。お気軽にミスズとお呼びください」

 日系美少女! マジっすか? なんというか是非にお近づきになりたい!


「近付いて何する気ですか君」

「やっやだなぁ、何もしないですよ……」

 可愛い女の子とは仲良くなりたいのは男の性じゃないですか!


「ちっ、童貞が……(ボソ」

 ……勝叔父さん。素で怖いよ。


「さて。これで学会発表時の助手全員顔合わせが終わりましたね」

「助手?」

「無駄飯ぐらいがいいですか? 貴方の呼び名?」

「助手とお呼びください」

 やばいやばい。


「学会まで5日ですからね。発表資料の最終チェックからプレゼン練習まで忙しくなりますよ~」

 おー、叔父さんのプレゼン楽しみ!色々技術知ってそう!


「そういえば、マモル様が先ほどからマサル様の事を叔父さんと呼んでらっしゃいますが、どのようなご関係なのですか?」

 確かに18歳の俺と15歳ぐらいにしか見えない叔父さん。しかも片や異世界人。不思議に思う所だけど。

 聞いちゃうそれ? この空気で聞いちゃう?

 あと、俺心の声もれもれなのね。それも気づかなかったよ。


 なんというかこの一言でカミラさんの性格がわかった気がしました。


賢者の視点――――――――――――――――――――

「ママー! 只今!! ようかん! ようかんっていうものがあると聞いた!」

 騒がしい娘が帰ってきました。今年で22だというのに落ち着きが……。あと、婿は見つかったのでしょうか。


「ママ。私も不老ゲットしたから婿はいつか探せばいいさ! ていうか、マイルズちゃんいい男になりそうだよね!」

 歳相応に焦っているのかそれともただ趣味が犯罪なのか、どちらでしょうか。悩ましいところです。


「マイルズはだめです。もう売約済みです」

「ちぇ~。あ、これようかん? おいし~、なんか味が神王国の甘味に似てる!」

「でしょ? これリャーシャでうちの弟子が開発したのよ。異世界物らしいけど神王国ぽいからいいかなって」

 そう言うと娘は狐につままれたような顔をします。

 異世界産と知って口にするのがそんなに珍しいのでしょうか?

 元はこちらの素材だし、文化だって近しいものがあったのだ。問題ないでしょうに……。


「ママも変わったね~、あ、研究所に異世界人の女の子いたのも変わった一環?」

「あれは運命神様からの神託よ……」

 はぁとため息を吐き出す。運命神様に借りを作ってその対価がこの程度であれば安いものです。 


「それで、貴方今度は何してきたの……」 

 本題です。ドキッとした娘はあからさまに視線を外し頭を掻きます。 


「えっとね。圧政してた馬鹿(帝国軍)が東にいたから、馬鹿(帝国軍)を一撫でしてきた!」

 ああ、東帝国を名乗る帝国と縁もゆかりもない人達ですか。また面倒なことを……。


「大丈夫! ちゃんと正当な帝国皇子様立てて掃討戦してきたから!」

「それをどの期間ぐらいで?」

「1か月! 最後の方は皇子様も『もう山毎吹き飛ばすのやめてください。お願いします。それ以上すると私死んじゃう』って泣いて喜んでたよ! いいことすると気分良いね!」

 我が家一番の問題児はそう言ってようかんをもう一切れ口にほうり緑茶をすすります。

 ……あ、私の分残しなさい!


エルフさん(親)の視点――――――――――――――――――――

 グルンドに来て3日目。

 今日は昨日から一転快晴である。

 昨晩のルース料理店の料理おいしかった。

 娘と一緒に食べたかったな……ああ、いけない。いけない。

 切り替えなきゃ。あの子の為にも、私の為にも。

 カフェのオープンテラスでお茶を頂く。

 朝早い時間だが町はすでに起きている。

 活発に活動している。

 この喧騒、今まで見たどの街よりも明るい。

 私もここにいれば心の傷も癒えるのでは無いかと前に向ける気がした。

 とりあえずこの街の図書館にお邪魔して周辺の歴史でも勉強しましょう。

 そしてもう少ししたらどこかで働いてこの街を楽しもう。

 そう思ってカフェの席から腰を上げ、街を見ると……。




























 そこに娘がいました……。



















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