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57「団子屋おぬしも悪よのう」

前半は真面目で委員長タイプの女の子のお話です。個人的に嫌いではないです。

改造人間(予定)衛の視点―――――――――――――――

「扱いについて改善を要求します!」

 ポリナルを出て1日と半日、俺はよく我慢したと思う。

 俺は今ポリナルで勝叔父さんが購入したリヤカーに乗せられている。

 そして勝叔父さんは休憩なしでリヤカーを引き、走り続けている。

 ……いや、さすがに俺を気遣って2時間に10分ぐらい止めて休憩をくれるが……。

 でも、夜も走り続ける。


 サスペンションも付いてない。街道も舗装もされてない。そんな中リヤカーに乗せられて眠れるか?

 休めるか?

 俺、間違ってないよね?


「しょうがないな。あそこの木陰で2時間寝ていいよ」

「その間叔父さん何するの?」

「近場に盗賊いそうな話を聞いたから狩ってくる♪」

 ちょっとコンビニまで♪ みたいな口調辞めて。

 本当にこの人、物騒だな……。でも、その物騒な趣味で俺は助けられたので止める理由は……ない。


「はぁ、さいですか……」

「汚物は消毒だー、魔石落とさないかな……」

 ……聞かなかったことにしよう……。


「そういえば勝叔父さん。ポリナルでなんであんなことしたの? 俺すっげー帰りづらくなったんですけど……」

「ああ、あれね。癖なんだよね。癖。独自正義理論の職人と無能管理者を見るとついついつぶしたくなるのよね~」

 曰く、会社生活を始めて3年目で会社のシステム開発のお手伝いをしたらしい。その時に途中に納品されたものが要望と大きく違ってひと悶着あったのだとか……。


「損害賠償はしたけどもね。あのメーカー、うちの会社だけで相当稼いでたからさ……私を怒らせるとどうなるか知ってもらわないと、……と思ってね……」

 いやな予感がします。叔父さんここはオブラートに包んで結果教えて。


「メーカーの部長が俺の席の隣でね土下座しようとした。俺が会社の入れ替えを促してた役員にも活発に謝罪したらしいよ。全員撤退させるとか本気で動いたからねwそりゃあせるさww」

 オッケー、オブラート! オブラートが息をしてない!!

 ……ちなみに、それする必要あったの?


「もちろん。仲良く仕事するためには必要だよ。ああいう手合いは相手が下手に出るとつけあがるんだよ……だから一度叩いて、しっかりぶつかっておくと円満にいくんだよ?」

 はっ、はぁ……。


「あの騎士君、出発間際に見送りに来てくれたでしょ?」

 確かに……。


「ツンデレさん?」

 いや、そのツンデレさんは嫌です。


「じゃ、衛君行ってくるね。寝てる間はこの案山子君が警備してくれるから安心してお休み」

 寝ましたが、夢でポリナルの騎士がデレてきました。悪夢でした。


「とーちゃーく!」

 交易都市リャーシャに到着して俺たちは今。

 茶屋で一服してます。

 あ、視界の端で勝叔父さんが店主と悪だくみをしていますが、俺には関係のない事です。

 ハナちゃん可愛いね。え? もう婚約者いる? あ、ああ。あのかっこいい人。ほっほう。うらやましいね……て違う。お兄さん狙ってないから。近づかないようにガードしないで。お願い。

 そして何故かここまで強行軍で進んできた勝叔父さんがこの茶屋で数日を過ごすことになりました。


「団子屋でがっぽがっぽや~」

「がっぽがっぽですな~」

 勝叔父さん。関西人にとってえせ関西弁が許せない事上位らしいですよ? お気をつけて。


☆ ☆ ☆

 こんにちは、最近『食の聖女』とか『あざとい系幼児』とか散々な言われ方をしているマイルズ(3歳)です。一つ言わせてください。……幼児があざとくて何が悪い!!!

 ……(ふぅ)。

 さて現在、2号と変態王子に獣王都でのお魚さん浸透作戦第2弾を実施してもらっております。第2段は創作料理メインの直営店なのです。醤油と味噌を変態王子に作成される為工場を選別中なのです。

 私は私で獣王様依頼のロマン兵器の作成中なのです。勿論ですが学校もちゃんと行っております。

 そんな私、体力の少ない3歳は就寝前の1時間程度で見せられる勝さん1号の報告に困惑しておりました。

 甥っ子の衛君を保護し向かった先でちょっとしたお茶目をした勝さん1号ですが、ふと気付きました。『あ、いっけね。商隊の皆さん置き去りにしちった(てへ』。ちなみに可愛い風に言っても中の人はおっさんなので吐き気しかしません。


(まて、そんな言い方はしてない。そんな『キーーーン』とか『んちゃ!』とか言いそうないい方はしてない!)

 流石昭和の勝さん。


(本体よ。お前もじゃないか?)

 まーちゃんは3歳なのです。昭和っていつのこと?


(……)

 ……黙るのはよくないと思います。傷つきます。


(……)

 まぁ、いいでしょう。そうんな大人げない勝さん1号ですが、ちょっとお茶目をした街ではいずらいので次の街で商隊を待つことにしたようです。

 そこで、勝さん1号は運命の出会いをするのでした。


(そうそう、がんばった私の報告を聞いてもらおう)

 ……干し芋の時もそうでしたが、……味覚の共有ができないのであまり意味がないような気もします……。


(……じゃぁ、あれとか、あれとか、あれとか発見したけどお土産にもっていかなくてもいいのかな?)

 勝さん1号。早く報告するのです。必要であれば人員と予算をもぎ取ります!


(……では、まずはこの映像から見てもらおうか……)


☆ ☆ ☆

 私の名前は畑野 勝。気付けばこの全身義体の中に居た。

 本来であればアラフォーエリートサラリーマンであった私だが、気付けばこの15歳程度の頃の私になって異世界に居た。

 はじめは正直混乱した。

 可動域は少なく、意識は曇りがかっていた。当初はこのまどろみの世界は過労死後の世界なのかな、と達観していた。自分の人生後悔だらけだ。しかしやりきったのであれば私はこの曇りがかった世界は言うほど嫌いではなかった。

 やがて、どこからか声がした。

「だから! 初代様が作ったこの指の自動制御術式を解析するのにオリジナルが必要なんだ!」

「馬鹿な! それよりも姿勢制御術式の解析を解析した方がいいに決まっている! 見ろこの芸術的な高圧縮魔法回路を!」

 2人の初老の男たちが白いローブを身に纏い言い合いをしている。そんな画像がうっすらと見える。微笑ましい光景である。初めはぼーっとした意識の中で『大丈夫かこれ?』と思っていたが、次のシーンで抱き合って喜んでいたのだ。なんだ、ただの研究者ではないか、と。

 殴り合いの喧嘩をしつつも浮いている方向は同じ。

 よく【異教より異宗派が憎い】と言われるように所謂手段の違いによる組織内の内ゲバというのはどんな小さな組織でも発生する。【学閥】や【XXさん派閥】などの集団が、上位層間での組織マネジメントがうまく回っていないと発生する。逆にうまく回っている場合、非常に強力である。

 宗教などで良く例えられるのは宗教の目標が非常に遠いところにあるかだと思う。企業の場合は昨今、年度の目標や中長期の経営計画を全社員で共有する。これがうまく行くと他部署間の連携や担当官の連携がスムーズに行く。そうこの映像の男たちのように。

 それからも私は穏やかな湖面を漂うように映像の破片を見続けた。

 暑い奴、冷静な奴、謀略家、性格が合わなかろうが、成果を妬んでいようが、ある地点で全員が同じ方向を向く。彼らの目的が何なのか、何を聞かされているのかわからない。全員が貴族なのか豪華なホールで杯を掲げる。その場では憎み合っていたもの達も、同じ瞳で杯を掲げる。

 暑いドラマを延々と見せつけられているとやがて私の中で何かが生み出された。

 目の前で幼児と初老の男が私に触れながら何か議論をしている。

 ……それは、まどろみの中でみた男たちの様だった……。

 

 さて、そんなこんなで私の意識は明確になった。

 後で知ったのだが非常に長く、それ百年近くの記録を見ていたような感覚であったのだが、実際はそんなに日が経っていなかったようだ。

 あの映像のおかげか、私は早々にこの世界の情報を一定量得ていた。

 そう、この魔法が物理事象と認識されている世界の情報を。

 意識が戻った私は初めそのことをひた隠しにしていた。この世界の常識では私のような存在はイレギュラーである。

 イレギュラーは排除される。

 どの国でも共通である。

 王族、貴族、一般市民、起業家、革命家、組織権益を守りたくなるのは誰しも一緒である。

 一度成功で自分たちのルールを基準を作り上げればそれは莫大な富を得るのだ。

 そして権力者たちは知っている。その富を、利権体制を崩すのは【自分と同じイレギュラーな存在】である事を……。

 理想を掲げて旧体制を崩した者達が、一転して旧体制と同じように王様を気取っているのはよく見かける光景である。そういった者達は異常に新しい芽を摘むか懐柔する。自分たちが行ったことをやられるのが【怖い】のである。

 私を理解できないものが私を知れば排除することに躍起になるであろう。だから私は、周囲を見極める事とした。幸い私を作り上げた幼児は『外歩きボデーなのです!』と丁度情報収集可能な目的を掲げてくれていた。

 およそ2週間、私はじっくりと観察を続けた。やがて幼児の祖母が私を理解してくれる人物であると判断し、接触しようと試みたところ相手から声を掛けられた。


「この14日間あなたの事監視していました……」

 権三郎殿の衣裳部屋。昼間ではあるが薄暗いそこで私は賢者リーリアとの交渉が始まった。

 結論から言うと無罪放免である。

 そして、私と同調した幼児がまさかのもう一人の私ともいうべき人物であった。

 非常に色々と難しい状況に置かれた私は考えることを止めた。考えてもしようがないのである。そんな時はやれることをやりながら情報を集めるに限る。

 こうして私はドラゴンと戦ったり、盗賊を討伐したりなど色々とあった中、この運命の街にたどり着いたのだった。

 

衛君、頑張れ(爆)とだけ記載します。

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