45「変態王子vs悪の組織4大幹部」
書けば書くほど、消えたデータと違う内容になっていきます…
※2017年5月16日に34~50話の大幅変更が実施されています。ご注意ください。
「マイルズ様……」
熊獣人の社長が喉を鳴らす。彼の視線は山と積まれた、薄くスライスされた肉に眼が行っている。
「昨日依頼した通り下味はつけていますね」
「ええ」
「本当に臭みがなくなっているのですか?」
猫獣人の下っ端が疑わしそうに肉を見ている。
「それを確かめるための会なのですよ……」
それでもあなたは肉屋なのですか?挑戦しない肉屋など不要です。
私の冷たい視線に気づいた下っ端君は姿勢を正し、肉に注目する。
「では焼きます」
そう言って私はスライスされた肉を鉄板に乗せる。ジューっという良い音が鉄板の上ではじける。
2人の喉が鳴り、よだれを垂らさんばかりの勢いで食いつくように目を見開いているのがわかる。
ほどなくして肉を返す。
十分に焼けているのがわかる。
そして下味で漬け込んだタレの臭いが充満する。
「普通だったらここで独特な臭いがするのに……しない! すごいっす。そして美味そうです!」
「マイルズ様ご慈悲をどうか我々にご慈悲を!!」
肉から目を離さない様にしながら、彼らに落ち着くように促し肉を箸でつまみ上げる。
タレに軽く落とし頂く。
芳醇な香りと肉のうまみ。焼き肉とは違い少し厚めの食感が満足感を増進させる。
思わずもう1枚。いや2……3枚焼こう!
焼けるまでは次の野菜を投入する。玉ねぎを忘れていました。野菜は肉汁と漬け込んだタレを吸って主役級の旨味です。
「……もう我慢できん!」
「社長、俺もっす」
「落ち着きなさい次のお肉は全員分あります」
余裕の笑みを浮かべ、流し目で2人に告げます。私は配慮の出来る人間なのです。
「「マイルズ様!」」
感極まって祈りを捧げる2人にそっとタレの入った取り皿を持たせます。
「さぁ、頂きましょう……」
肉は権三郎がひっくり返してくれました。
「「うまーーーーーーーーーーーーーーー!」」
2人の歓喜の叫びが肉屋倉庫裏に設置したバーベキュウスペースに響き渡る。
「まさか羊肉がこんなにも臭み鳴く美味しく食べられるとは!!」
「脂が臭みの原因と知っていましたが、調味料に漬け込んで熟成させるとは、まさに神の子!!」
よしてください。
照れます。
これでも元北海道民。
……責務を果たしたまでです。
「まだまだお肉はあります。お酒も……権三郎」
「はっ、こちらに」
「楽しく頂くのが礼儀なのです! 私も……」
「マスター、幼児には毒です」
……ケチなのです。
「しかし、このタレ本当にうまい! ニンニクとショウガが非常に効いて居る!」
「なんだろうか……これはパンなのか……マイルズ様……まさか貴方はあの柔らかいパンをセットで売り出すおつもりか……それならばこの場で!」
「うふふ、もちろんなのです。濃い味。油っぽいものを食べた後は瑞々しい野菜! もしくはそれに類するものを食べるのが正義です!!」
権三郎が持参したパンを配ります。
社長はパンとジンギスカンを交互に頂く。
下っ端君はジンギスカン肉をパンにはさんでいただく。
「……これでも、やつには及ばないのです……。あのオレンジの憎いやつには……」
「なんですと! そんなにすごいものを作る御仁が!」
「ぜひ、どなたか教えてほしいです!」
ふっと私は遠く(異世界)を眺めます。そしてため息。
奴は私達道民の大切なものを奪っていきました。
東京に住んでいると手に入りずらいものでした。
すでにこの世界では手に入らないものです。
「彼はこの世(界)に居ません……」
「亡くなったのか……」
「悲しい勝ち逃げです……」
勘違いしてくれました。
「でも、私は彼の味に追いついて見せます。覚えていてください〇ル」
青く澄み渡った空を見上げ私は異世界に向かって宣言しました。
「御用だ! 御用改めである!!」
お腹一杯食べた私達はデザートの果物をつまみながら贅沢な余韻に浸っているところでした。
見たことがある。あ、これ近衛隊だ。
「獣王様より『美味しいもの独占罪』の嫌疑を掛けられております。ご同道いただけますね」
ふっと笑ってしまった。
「獣王様にお伝えください。臭いの強いものなので場所を選ぶように、と」
そう言って私は近衛隊長に抱っこされて運ばれます。
あまり揺らさないでください。食べすぎたので。
「なんで自分を呼んでくれなかったのですか……」
……近衛隊長の言葉は聞かなかったことにしました。
秘話! 獣王国食の聖女伝説2「今度は水泳! 水着フェスティバル!!」――――――
ねぇ。知ってる?大正時代の水着ってほぼ服。肌を晒すのは下品とされた文化であれば膝下の露出やノースリーブの水着は大胆♪なのだ。ビキニですか?はい、ありますよ。
「はい皆様。水着(甲冑)はちゃんと防水加工しましたか?」
教官。それあってるようで間違ってる!
「マイルズよ。お前の甲冑、よくにあっておるのう。くくく」
「1家に1台マイルズの時代が来ますね。これ」
ポチ、私の浮き輪を見て笑いましたね……。忘れないのです!
この屈辱いずれ!
……取り敢えず閻魔帳へ記憶なのです。
そしてタマ。『一台』って何ですか? 意図的ですね? 意図的なのですね?
「お魚をクリアした私に死角はないの!」
………………ふふ。そうですかすごいですね。うふふふ。
「……」
そっと差し出される飴ちゃん。……そのような賄賂で何とかなるとでも?
「なかなか良い味なのです。職人さんを紹介して欲しいのです!」
「さすがチョロイン……」
「……さすチョロです」
ポチ。私男の子。ヲイ、目を見ろ。口抑えて笑いこらえてるとピーマン大量にねじ込みますよ?
あとタマ。私はヒロインではありません。そしてその発言、単なる悪口なのです!
傷ついたのです! 謝罪と賠償を要求するのです!
「……しょうがないなぁ、これは我が家秘蔵の一品です。お納めください……」
おお、これは!
「新種の飴ちゃんなのです。わーい、なのです」
暖かな視線を感じます。知りません。飴ちゃんうまうまなのです。
とある異世界宗教の7大幹部、その1人―――――――――――――
……まさかこんなことになるとは……。
儂がコツコツと奉公先の居酒屋の廃棄物からコツコツ作り上げたクラーケンが、試運転中に王宮からの魔法道具試射とかいう冗談みたいな行為で大河のチリと消えた。……というか、4m級のクラーケンを一撃って……。……確かに、華々しくデビューさせようと進入禁止で操作練習していたが……苦労して作ったクラーケンを一撃で沈められた……。ちょっとショックで仕事が手につかない。
「エルルちゃん~。今日のおすすめは何?」
「最近はやりのお魚のフライか、イカの天婦羅がおすすめ!」
「ほう、最近噂の『食の聖女様』が発明したアイディア商品だね」
「来週あたりには新しい肉料理が発表されるんだって! 楽しみだね!」
「とりあえず……フライとポテト……あと酒をくれ」
「はーい。注文ありがとうございま~す」
ふう、仕事仕事。最近は食の聖女メニューが好評でランチは忙しいのだ。
イカの天婦羅……。
儂はまだクラーケン計画を諦めたわけではない。今回たまたま運が悪かっただけのはずだ。この国の大動脈を断ち切る川底に潜むクラーケン! ……やはり一時の時間稼ぎには最適だ。
「あと、ロマンをかんじるからのう……」
「フィラント様……そのぽんこつぶりがかわいらしい……」
……ん? 部下よ。何か申したか? ん? 何も言っておらぬとな? うむ、では儂は仕事に戻らねば! ああ、忙しい。





