44「議論最強は『人の話を聞かない』人」
今晩は寄宿舎でお泊り! 晩御飯はチーズINハンバーグなのです!
幼児&幼女&少女によるハンバーグ祭りなのです!!
控えおろう! お肉様がお通りだ!!
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はぁはぁはぁ。疲れたのです……。
年甲斐もなくはしゃいでしまいました。……いけませんね。
さて今晩のお食事ですが、お肉様はもちろん添え物のお野菜も主役級の旨味。
何よりグルンドから持ち込んだコンソメにて作成したコーンスープは絶品でした。
獣王都南部は一大トウモロコシ畑のようで、甘味の強いトウモロコシは人類用。
そうでないものは家畜用にしているとかで人類用は厳選された甘味の強い種になっています。そちらを用いたコーンスープは美味しかったです……。
そうそう。ハンバーグと言えばミンチなのですが、さすが獣人の本拠地だけあってお肉の種類や調理法が豊富でした。それに伴う機材や臭みを抜くための調味料なども。
とりあえず新種の肉曳き機は王妃様にお願いしてグルンドへ輸出していただかなければ……。急務なのです。
「マイルズよ、今晩の食事見事であった」
右隣のポチが笑顔です。ん? 人参さんが残っていますよ? なんでもう食べ終えた風の顔をなされているのですかね??
「ポチは大人なのです。大人のレデーなのです。人参さんと向き合うべきなのです」
「いやなのじゃ」
…………………フム。オシオキ? 確定ですかね?
「ポチよ。見なさい……このオレンジ色の人参さんを。この人参さんは他の野菜さん同様に懇切丁寧に育て上げられているのです……。農家の方が愛情をこめて……。ある日は果てない雑草と戦い。ある日は襲い来る恐怖、害獣と戦い。またある日は見えない恐怖、虫や病気とも戦い……。そしてこの季節、あなたの為にだけ、その為だけに作られた人参さんとして……、ここに居るのです……。見なさい。この人参さんを。そして向き合うのです。王族として知るべきなのです。あなたの為に苦労して育てた農家さんの思いを……。そして苦みを消すために試行錯誤を繰り返した料理長の思いを……。そして気付くのです。そんな苦労の成果を見向きもされず残されてしまった時の悲しみを……。貴方はハンバーグで笑顔になった。だが! ……人参を残すことでその笑顔をくれた人を悲しませる……」
憂いに満ちた目で見てやりました。
ポチは耳に手を当て目を閉じて聞かなかったフリをしています。
……『もっと心に刺さる言い回しにしてあげましょか……』と悩んでいると、周囲の皆様達も人参さんと向き合っているようです。
沈痛な面持ちの中、権力者の子供としてあるべき姿と向き合っているようです。
ああ、彼らはまたここでひとつ大人になるのです。
成長する姿って良いな……。
ちらりとポチを見ます。
耳を閉じたまま薄目を開け、私に視線を向けて、こう言い放ちました。
「そんなに大事な人参であれば儂も苦渋の決断をしよう。マイルズ、あーんなのじゃ」
フォーク……。刺す……。人参……。私口元へもってくる……。
……ああ、切れちまったよ……。
「ポチ。この映像を獣王様と王妃様に提出いたしますがどうでしょうか?」
固まるポチ。
「王妃様はお優しい方ですからね……」
大嘘です。一連の流れを知ったらお尻百叩きの刑、確定なのです。
「あ、人参さんですか? 私の分は頂きましたのでポチがお食べください」
そこで言葉を切って周りに聞こえるように声を少し張って言います。
「ああ、美味しい人参さんなので『まさか』『貴きご身分の方が』あからさまにまずそうなお顔をなされる筈がないと思います。……どうぞ、人参さんの甘味と旨味を『優雅に』ご堪能ください」
翌日から人参きらいな子供がいないくなりました。
まぁ、食わず嫌いなので食べてしまえばどうにでもなると思うのです。
「マイルズ様。次はピーマンでお願いします」
何でもかんでも私に頼るのはどうかと思いますが、ピーマンの肉詰めのレシピだけお教えしておきましょう。
あれも慣れれば美味しい野菜さんなのです。
まずはカボチャと人参。
山成に反っている特徴的な鉄板の上で、焼き上げる。
下ゆでをしたそれに香ばしい焼き色がつくと、まずはそれを頂く。
甘辛くすっきりとした味わいのタレに漬けると、野菜はまた一段と味わいを増す。
秘話! 獣王国食の聖女伝説1「身体測定、その罠……」
タイトルにつられた方。犯罪です。
私は男の子なのです。そして中の人はエリートサラリーマン!
女性の後輩に声を掛けるのさえセクハラ・パワハラ冤罪におびえつつもポーカーフェースを貫く企業戦士なのです!
男? 千尋の谷に突き落としてあげますので這い上がってくるといいのです。
全て教えてもらえないからできない? などという子はきっといつかくじけて立ち直れなくなるのです……だから緩めの試練を大目に与えるのです! え? それがパワハラ?
ちっちっち。用法用量を守って適量の試練と隠し味としての修羅場なので問題ございません。
修羅場経験した男子、3日会わざれば刮目して見よ! なのです。
……なんだかんだ言いつつフォローも完璧なのですよ。
……お前、男の後輩からしか人望ないだろう? ですって!
なんでばれた!!!
……いや、一時あったのですよ! 私以外全員女性! しかも部内のキレイどころ!
を集めたチーム編成が。
疲れた……。あのチームのリーダやっててめっちゃ疲れた!
もうね。たまに後輩君が飲みに拉致してくれて助かったくらい疲れた!
もうあの気遣い地獄は簡便なのです!!!!!!
あ゛? ハーレム羨ましいだと?
じゃあ代われ!
今すぐ代われ!
部長には私が掛け合うのです!
何なら役員とのコネも使うのです!
だから……変わって……お願い……。
……はぁはぁはぁ、フラッシュバックしてしまったのです……。
さて。件の身体測定です。
……重要なのでもう一度言っておきますが、私はロリコンではありません。
皆さん私より年上のレデーなのです。
……い、いや。ちがう!
勘違いなのです!
別に年下特権で潜り込めます! と言っているわけではないのです。
考えてもみてください。クラスメイトは10歳以下なのですよ?この学園の基礎クラス。
……。
応用クラスは年上のお貴族様だろ? って、なんですかあなた!
鋭すぎます!
名探偵目指すべきです!
まずは小道具仕込みまくった伊達メガネからどうぞ!
……こほん。そっそうなのです。獣人族の皆様昨今の栄養バランスの改善を受けて成長中なのです。色々と。
この間遊びに来てくれたお姉さま。ポワンポワンだったのです!
……ごちそうさまでした……。
で、その皆さんも合同で、ということなのです。もちろん私は幼児です。邪な機能も。邪な感情もないのです。皆さんにちやほやされたい! その一心なのです。
ということで、私は今身体測定会場におります。
ふんわりと漂ってくるフローラルな香りと……覇気。
………ん?
「マイルズ様お待ちしておりました。第一種目は【破壊力】になります。張り切ってどうぞ!」
受付のお姉さんに紙を渡す権三郎。
ほほえましいものを見る完全武装のお姉さま方。
………
……
…
がっでーーーーーーーーーーーーーーーーむ!!!!!!





