129.2「侵略戦争2」
寝た。起きた。前話がでいていた。
……しょうがないので開き直った。
申し訳ございません……。
静寂の式典後に混乱を生み出したような呟きなど意にも解さぬとばかりに豪放な、それでいてすべてを許す様な、王者の笑みである。
横に並ぶ国王陛下の威圧すら忘れ、グルカーセム将軍もその笑みに囚われる。
少女の柔らかさが残った幼い笑みではあるが、それだけではない。
人を惹きつけてやまない支配者の強い瞳と、媚びなどない表情、それらは明らかに王者の空気をまとった支配者であった。
女性公爵を疑問視していた貴族たちも、次第に将軍同様に同様に息を飲むことになる。
恐怖に震えながら呼び出しに応じていたグルカーセム将軍は、我に返ると失言をもらしてしまったは想像以上の反応に自省し、体を小さくした。
グルカーセム将軍は歴代中央の軍務を任される家系に長男として誕生した。
彼の家は東方に大きな所領を任されており、東方領主たちの代表として自然と取りまとめる系譜になっていた。
中央と東方に関わる軍を預かる将軍家系とはいえ、平穏なこの時代では一政治家である。事務方との違いなどそれぞれの専門が何か、専門についての学習をどの程度しているか、程度の違いしかない。
当然将軍は軍を司る役回りなので、各国軍部の情報整理や、戦力分析、戦略構築に将として最低限の肉体、戦闘に備えての技術を学習し突き詰めなければならない立場にはあるが、基本政治の世界にいた。
脳筋で将軍など勤まらない。
だがひょろひょろで武芸に通じていない将の元に兵は集まらない。
だから最低限の能力を有している。それだけの違いだった。
それまでグルカーセム将軍は『偉大なる先達の方々』が安定した治世を続けるこの国に生まれ、政を主戦場とする己の生き方に『疑問』など抱いていなかった。
否、『疑問』を抱けばそれすなわち隙を突かれる。過剰な政争は外国勢力のつけ入る余裕を与えてしまう。それを強く理解しながら育ってきた。
『隙を与える愚』とは死の国において、過去『聖王の王弟』が起こした愚挙を最大の訓令として受け継れていた。
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