126「とある国家の腐敗」
……あれ今日は11/10……じゃないだと!!!
過去の話をしよう……。
私の名はヌスリ。艱難辛苦を超え準超越者と至った侯爵である。
準超越者ともなると、力の恩恵からその寿命は軽く1000を超える。故に私が生まれてから現在まで、百年以上が経過しているが未だ体は30そこそこの肉体を保っている。
私は力の王国の侯爵家に長男として生を受けたのは百年以上昔の事……。
そんな私には上に2つ離れた姉が、下には5つ離れた弟がいた。
私が生まれた頃の力の王国は、……誇り高い国であった。
南部から中央にかけて広大な領土を有した帝国と隣接した時期があっても、強大な帝国に屈せず。王都にダンジョンを抱えることで軍隊は少数精鋭を誇り、地の利を得たとはいえ帝国の侵略を諦めさせるほどの盛況さを誇っていた。
力に誇りを持つ王国。故に力の王国。
しかし、誇りは驕りを生む。今では力に溺れた王国……。
力の王国が隣接する大陸中央、そこは大魔王陛下が君臨される特別な地域。
力の王国は特別な地域に隣接する王国として南部の王国に対し自らが『特別な存在』として押柄にふるまっていた。
王都にうまみのあるダンジョンが存在する力の王国では、多くの優秀なハンターが素材を持ち込みそこから製品化した商人が文化を発展させ、その土台である国は効率的な農業を推奨し多くの国民を養う。そして貴族たちもまた【真なる目】という、その者の本質を読み解く力を有し、正しく執政者であった。
虎の威を借りた外交は無意味な侵略を防ぎ、国は優秀なサイクルを回していた。
だが……、高潔な者ども、正しい仕組みは意外なところからゆがみ、崩壊する。
あまりにも正しすぎたのだ。
だから歪が生じたのだ。
われらはその歪みに長く気付かずにいた。
歪みが最高潮となって時、象徴たる御子が生まれた。
その方はあまりにも強すぎた。そして優しすぎた。
そう……正しすぎる王子が生まれてしまったのだ。
本来であれば喜ばしい事である。
だが、この国は潔癖すぎた。
強きものの誕生は、必要以上の弱きものを生み出す。1つの個に頼ることになり、堕落を招く。
故に王子の存在は国を弱らせるとし、我らは王子をないがしろにしてしまった……。
強きもの故、耐えられるであろうと。王子を支える強き者どもが生まれる仕組みを確立するまでの間の辛抱と。我らは言い訳を重ねていた。
当初、王子も理解している様だった。
我らも苦難の時期を過ぎれば王子や全ての民は笑って暮らせる。その時力の王国はより強い国家へと生まれ変わる。そう信じていた。
しかし私たちは、王子も歳相応に弱い心を持っていたなど……考えもしなかったのだ。正しさや強さだけに執着し、現実を見えていなかったのかもしれない。
王子の歳相応に弱い心が明るみに出たきっかけは、我が家の姉の存在だ。
姉は王子の婚約者であった。
姉は王子を愛し、王子の不遇に憤りを感じていた。
だから『私が代わりに頑張れば王子は評価される!』などと愚かなことを言い出した。
国民の評価など気にしていかにする?
国民には国民の役割がある。国の上層部がする政など、見もせず、聞きもしないものに対し面白半分に言葉をもらす。つまりは酒の肴程度の意味合いしかないのだ。国民が正しく役割を果たしているのであれば、王国貴族も同様に正しく役割を果たせばよい。
だから王子の悪評など、時が来れば我らがいか様にもできるし、国民も早々に手の平を返すものだ。
……理論的には正解である。
ただ我々は苦しむ王子や姉を見ていなかった……。遠くを見ていたから近くにあまりにも目を向けなかったのだ……。
我らは王子を何だと思っていたのだろうか……。
きっと神や亜神の類だと……達観した御仁だと思っていたのだろう。
……その頃既に我らの【真なる目】は曇っていたのかもしれない。
数年経ち、姉が王子の元に向かわなくなった。
王都で実力のない愚か者と姉が懇意にあるという、事実無根の噂が慣れ始める。
その頃我らは【我が国に嫉妬し、周辺国家が繰り返していた裏工作】に対応していた。
その為『小事』と放置したばかりに……王子と姉の対処に後手を踏んでしまった。
その結果問題は起こり、貴族会議で姉は『王子の婚約者としては不適切』と判断され、王子の婚約者の任を外されることが内定してしまった。
その問題は王子と姉にとって大切なことであったが、我らにとっては取るに足らないことだった。
寧ろここ数年、実力ハンターが国を離れていく等王子を迎える準備に陰りが見えていたこと、ダンジョンのモンスターが減少するという異常事態への原因究明及び対処が優先された。そちらの方が国の根幹を揺るがす事態だったからだ。
この時のことを私は今でも後悔している。
王子のお気持ちを、お心を、歳の近い私がお聞きし、貴族会議に本当の王子の御心をお繋ぎすべきだった……。
結論から言おう、王子は姉を心から愛していた。
真っ直ぐに、姉に関する噂もご存じであらせられた。
しかし最後まであきらめず、王子は姉を深く想っていた。
それに私たちは気づけなかった。
そして国を揺るがす問題の原因も王子だった。
無能と噂され、噂を真に受けた者どもの手のひらを返したような扱いに王子は酷く傷つきつつも、姉を守るためにダンジョンを裏ルートから攻略していた。
王子の苛立ちや我慢する心に応じてダンジョンからモンスターが減少していた……。
そしてそのせいで優秀なハンターたちが流出を続けていることに、我らは気付かなかった。
本当に……我らの【真の目】は曇っていた。
他国の国主、しかも外交の席で1度しかお会いしなかった魔王陛下のみが、王子の真価、そして王子の想いを理解していた。
なのに……我らは……。
その頃の我らは、武力以外の王子の能力が我らの見込み通りだったことを喜び、現状の問題を解決した後に王子のお披露目、そこからの力の王国の更なる発展を夢描いていた。
……我々はまるで未来が分る賢者……を騙る愚者であった。
そんな状況で王宮内で国民が噂する英雄(犯罪者)と、姉の蜜月が王宮内でも噂となった。
噂の発生元は王子を蔑ろにし、平然としていた侍従や侍女どもである。
王子が日の目を見た時には絞首台に自らの足で歩かせる予定の者たちである。
ちょうど王宮に居た父上と陛下はその噂に激怒した。
……と言う体で『婚約解消の好機』と、茶番を演じることとした。
王子を蔑ろにし、迂闊な行動を取り続けた姉には罰を与える。そのような茶番を……。
しかし、当の王子によって茶番は悲劇となった。
姉の件を経て、王子はこの国……いや人間に嫌気がさしたようだった。
我らを見捨て、高度な術を繰り、王子は国のすべてを見限った。
……そう、魔王国へ次期魔王候補として出奔してしまった。
残されたのは『捨てられて狂った姉』と悲嘆にくれる我ら貴族、厳しくも遠くから愛を注いでいたつもりの王、そして天才と持てはやされていた私。
王子が希望だった。
雌伏の時を超え王子はすべての民を幸福へと、国を豊かに、王子の力、個人戦力と高い指導力をもって国防に割いていた国力を浮かせ、浮いた国力で国を次の段階へ進化させる。そんな未来がすぐそこにあった……はずなのに……。
利権で対立する貴族たちも同じ絵を描き、王が采配を振るう。
王子はその横でその本領を発揮し、雌伏の期間の内に鍛える……はずだった。強者を率い、真の英雄として……。
それが、姉の暴走でご破算に……。
もっと穏やかに……いや、姉がダンジョンに『王子の剣として名誉を維持するために潜る』と言い出したところで止めていれば……。
その後、我が国は静かに傾き始めた。
傾きが強くなるにつれ外国勢力からの干渉が強くなる。
それはそうだ【あの】封印という強力な能力を持つ次期魔王候補の王子を生み出した国だ。
支配下に置けば甘い性格の王子への、魔王国への交渉カード……いや、抑止力となる。
まかり間違って王子が魔王へ就任することがあれば、出身国を支配すると言う事が大国魔王国への大きな外交カードとなる……。
故に私たちは魔王国の反対側に位置する大国神王国と縁を強めることにした。
神王国もこの大魔王陛下が居を構える、大陸中央部で大規模な戦を行う等という『不敬』を犯すことなく。この特別な地域での影響力を強める事の出来る機会をつかもうとしていた為交渉に乗ってきた。
交渉の一環として我が国は姉を神王国の王宮メイドとして送りだすことにした。
我ら小国にとって神話クラスの伝説を世界に刻み続けている神王国の王宮へ入れるということ、それは願ってもない栄誉であった。
我々は『狂ってしまった姉』を眠りの呪法より覚まし、徐々に落ち着かせることに成功。長い説得とリハビリを経て姉も新たな人生を切り開くことに同意した。
我が国は神王国との関係からあるべき力を取り戻そうと動き出そうと……そう動き出そうとしていた時の事だった。
王都に隣接するダンジョンからモンスターが溢れ出てきたのだ。
王子が裏ルートからダンジョンを攻略していたことで獲物が減り、その為長年国を支えてくれていた強者であるハンターたちが去っていた。
故にその王子が去った後、モンスターを狩るものが少なくなったダンジョンからモンスターが溢れ出してしまった。
王子が去った後、貴族軍とハンターギルドが疲弊しつつもモンスターを狩っていたが……見栄っ張りなハンターギルド達が進捗報告をごまかしていたのだ。……驕っていたことを反省した我らは余裕を失い、調べればすぐにわかることを見落としていた……。
結果。力を示さなかっただけで王子を蔑ろにし、力無き犯罪者を英雄と祭り上げた民から先にモンスターに食われていった。
私と父は私兵を率い民を保護し、ダンジョンの反対側の区画を守護した。
王軍の行動も早かった。
だが、我らが動き出した時点ですでに王都は3割の人口を失っていた。
何より我が家は姉も失った。
姉につけていた密偵の報告によれば、狂いながら王子を求めモンスターを屠り無数のモンスターを焼き尽くした後でダンジョンに消えたらしい。……なぜそのような事を……。貴方は神王国で新しい人生を始めるのではなかったのですか……。
……そんな騒乱の中、もう一つの予想外があった。
王子が魔王国兵を率いて支援に訪れたのだ。
それも異変の発生からたったの半日で……。
異例の速度で部隊と救援物資をもって現れた王子。
その高潔で慈悲深い御姿に、我が国の民は……石を投げたのだ。
平身低頭謝罪をする王や父、そして私を、いつもの柔和な笑顔で『大丈夫です』と応え、同時に国民の態度に憤怒する現王子の部下を抑えつつ……。
そしてモンスターを王子の能力で一網打尽にした。
我が国の栄光なる未来を体現する王子。
だがその身は魔族に変わり、その身を包むのは魔王国の軍服であった。
その後百年にも及んで我らは2大国の大陸中央部への影響、政治の中で生き抜いた。
ある時は魔王国から支援を受け、ある時は神王国と共同事業を行う。
王子の裏攻略があったとは言え、我が国から流出した戦力は膨大であった。
国の代表である我ら貴族は国民の鏡である。
国民が薄っぺらい者共を英雄と呼んで目を曇らせたように、我らもまた王子という看板に期待するあまり、国情を理解していなかったのだ。
国内に多く点在するダンジョン、維持する人材難。そのダンジョンを司るダンジョンマスターが人類に協力的であればいいのだが、そのようなダンジョンマスターは少ない。
加えて王都に存在する大迷宮。
遷都も検討されたが、交通の要所である王都を放棄することは国の死に繋がる。その為却下された。
王子の輝きに目を曇らせた年月のツケは大きかった……。
長く苦しい時間が続いた。
ダンジョンでの戦闘を経て私は獣超越者へ至り、国内の武力として並走する。
ぎりぎりの状態が続き数代王が変わり、賢王から愚王まで現れた。一進一退。
長い時間をかけ、我ら貴族と手を取り合い徐々に国は安定していった。そして何とか自立できるまでの国を持ち直した賢王は……就任後初の休養先で凶刃に倒れた。
確たる証拠は無いが、動きから神王国派の貴族・商人の手によるものだ。
彼らは『我ら陛下の忠臣は、陛下の御意志を継ぐお方を推す』と宣い、陛下の倒れた領地を管理する陛下の腹心と呼ばれた貴族を一族郎党処分してしまった。
この企みに加担したと思われる奴らは、すぐさま第1王子殿下を担いだ。
陛下のみがお持ちの『国王の証』を身に纏わせ……第1王子殿下は我々の前にそのお姿を現した。
貧すれば鈍する。
我らはまた人を見誤っていた。
陛下を誅殺したのは忠臣と信じていた近衛兵団長。彼は神王国派であった。国が自立し神王国から離れるのが許せなかったそうだ……。
その後再び堕ちていく国。……我らは、老骨と呼ばれた貴族たちは決死の覚悟で支えた。
しかし限界が訪れた。
緩やかに終わりを迎えつつあった我が国。
滅亡を覚悟した我らに奇跡が起こった。
神王国でもやり手と評判のヤルヴィ男爵が現れたのだ。
状況は激変した。
彼は神王国派へ近付き、利益と共に自分の人形に変え、今代の陛下には陛下が欲して止まなかった父王のような栄誉をチラつかせ、我が国を神王国の保護国とすることを認めさせた。
実質植民地である。
打ちひしがれる我らを集め、男爵は執政を施す前に我らに告げた。
「諸君らはさぞ無念な想いだとおもう」
どの口が言う。正直思ったが、現状は愚王と狐どもに支配され、死ぬのを待っていた様な我が国では返す言葉を持つもっていなかった。
「だが、耐える時代は終わった」
私は男爵の笑顔に不覚にも王子を重ねてしまった。
……そしてもう一度信じて見たくなってしまった。
「私と共に先王陛下の志しを継ごう」
視界が光に包まれた錯覚に襲われた。
それから目の覚める様な改革が我が国で起こる。
それはさながら王子を通して見た夢のようだった。
「諦めなかった結果だ」
男爵は地方視察の際にそう漏らした。
確かに貴方はこのような情勢の国に諦めずに付き合ってくれた。これはその成果なのだろう。
別の領地では諦めるなど一考もしなかったでしょうな……。
誰もがそう思い再び男爵に感謝を捧げた。
「違う違う、これは貴方達が諦めなかった結果だ。踏まれても、踏まれても諦めず管理し整ってあった土台が有ったからこその結果だ。君達が誇っていい結果だ」
……全くこの方は……年甲斐もなく号泣する私の肩を抱いた男爵は言葉を続けた。
「この国は近々、独立国に戻る。陛下も国を立て直した王として栄光と共に退位される。私と君達との冒険は終わる。だが、次がある。先がある。休む暇なんかない。人生は冒険なんだ」
人懐っこい笑顔を浮かべていた男爵は……半年後毒殺された。
倒れたのは男爵の家族との晩餐の時だったと言う。
そして彼の跡を継いだ息子が……男爵が行なった政策を全てひっくり返した。重税を敷き、王家や貴族、文化を否定する歴史を拡散し始めた。
今からほんの半年ほど前の出来事だ。
ん? 贖わないのか? ですと?
ダンジョンを管理するので精一杯の生活に戻ってしまってな……重税のお陰で税収は減り、軍を維持するのもやっとだ。あのダメ陛下が異世界宗教にそそのかされて遺跡の発掘など……。ん? 遺跡を見せて欲しい? しかし、あそこはダメ陛下の軍が……ふむ、不思議よ。貴様からは王者の貫禄を感じる……。
その信じたくなる強い瞳は3度目だ……。
……貴様が何をするかジジイの最後の楽しみにさせてもらおう……『この印を持っていくと良い』? ……はっはっは『うっかり者が後日お礼に来る』? ……期待しないで待とう……。さぁ、行くがいい。私達は諦めない。どのような苦境であろうと終わらぬことはない……。何度希望を消されようと諦めることはない。我らは2度も見てしまったのだ。希望の光を。心躍る未来の光景を……。
強い意志を秘めた瞳の少年は満足げに笑うと、その仮面を取り素顔を見せ、私の心に残る言葉を残していった。
「貴公らの思いは理解した。愚かと罵られようが、自業自得と嗤われようが、何度希望が消えようが、諦めず光を求めるその姿あっぱれである」
この少年は何者で有ったのだろうか……。齢15程度の少年だが、その器は亡き男爵に伺った神王陛下のようだ。
私は小国とは言え侯爵位を冠する者。
それがただの少年に気がつけば頭を下げていた。
そして頭をあげるとその場に少年はいなかった。
……何を求めているかは知らないが、きっと大きなことなのであろう。それこそ我が国などではなくもっと大きなスケールの……。
少年が去り。翌日、異世界人遺跡から異世界人が撤退して我らを驚かせた。その後、少年が言ったうっかり者が訪れた。
「我が名は神王国のタロウ・イマイ伯爵! 我が主人の野郎が……【また】勝手に旅に出た! ……知ってるかこれで3回目なんだぜ! あの野郎! 勝手に救って、勝手に優しくして! そして勝手にやりがいのある仕事を押し付けてきやがる!! 俺も旅に連れて行けってんだ!!!」
呆然とする。彼は神王国の伯爵であると言う。
そして今、彼の目の前で【あの】バカ息子こと、現男爵が地面に頭を擦り付ける様な形で頭を下げている。己が欲と見栄にこだわるあの小物が……。神王国の伯爵というのは本物なのだろう……。
聞いたことがある。
神王国の麒麟児ことカクノシン王子が重用した異世界人部隊、その部隊長は異世界人にして伯爵。見事な槍の使い手であり、人を惹きつける豪胆な性格をして民の間で評判の傑物だと……。
「おう! なんとか男爵!」
ヤルヴィ男爵です。
「てめぇには保護国の取り扱いについての不正。議会と力の王国との交渉を、力の王国の意志を語り、独断で独立を終わらせた疑いと、てめぇの父親毒殺の疑いがある! 大人しく縄につき罪を認めれば……慈悲もある!! さぁ、さっさと罪を認めやがれ!!!」
「今井くん。先走りすぎだから。罪を強制的に認めさせたら刑罰が軽くなっちゃうだけだから。ほらもっとジワジワと真綿で首を絞める様に罰を与えろってカクノシンくんからの手紙にも有ったでしょ?」
「おっと、うっかりだぜ!」
イマイ伯爵もまた、笑顔に強い意志を感じさせる瞳を持っていた。そして……。
「さぁ、力の王国の諸君! 仕事の時間だ! 神王国の特攻隊長こと、イマイ伯爵の舎弟としてこき使ってやるから! 幸せになる覚悟をしやがれ!!」
はははははは。どうやらイマイ伯爵は他のどの方とも違う方のようだ。忙しくなると私は年甲斐もなく未来にワクワクするのだった。
~~~マイルズ視点~~~
「報告ご苦労様です」
カカシ経由で変態王子の報告を受けました。
南部から問題なく北上してきているようです。……なんか、各国で悪代官みたいな人たちに罰を与えているのだとか……。後始末担当のうっかり今井君お疲れさまです。今井君、全てはうっかり、あの変態王子に男として惚れてしまったあなたが悪いのです。お仕事がんばってください。
「さて、弟さん頑張ってるみたいですよ?」
気配を消して私を見ていたティリスさんに声をかけます。
「侯爵令嬢リリアンヌはあの時死んだわ。不器用に間違った努力を続け、愛する方を傷つける事でしか己の存在意義を見出せなかった愚かな女はあそこで死んだ……。そうした方が家族にも、国の為にも良い。下手に魔王国の中枢に希望があるなど思うより……」
「不器用な方ですね……」
「……それが私の生き方……でも、弟を救ってくれてありがとう」
「私ではないですよ?」
「ありがとう……」
「……ふぅ、どういたしまして……」
難儀な姉弟のようですね……、さてそれよりも……。
『北部遺跡で一網打尽にするので移動してください』
宰相さんからのお手紙です。
説明……説明ぷりーーーーーず!!!
~~~+α~~~
「竜人学者さん」
「なんであるか幼児(最近肉扱いされない、よかった……)」
「ドラゴン(空飛ぶお肉)と竜人さんの違いってなぁに?」
「(……ドラゴンの後の間はなんだ??)ああ、それはな。知能の違いだ。ドラゴンはやんちゃな頃、ドラゴンの姿であばれるのだ。ほぼ本能で暴れるのでな。そこから人類と関わる事で本来の治世を取り戻し、一所で国や村などを構築するのだ。その際に、前世の自分、多くは人類種なのだが、前世の知的生物体としての体を作り出し、知的生命体として生を生きるそうなったのが竜人と呼ばれる種族よ……って幼児よ何故コクリコクリと船をこいでおる……案山子殿『お静かに』って看板立てる……うむ、お昼寝の時間であったな。お運びするといい」
「zzz」
「まったく……前世を思い出させてくれる健やかな寝顔であるな……息子は、あの後どうなったであろうか……儂と王が娘を王子を見誤ってしまった……そのつけを払い続け、準超越者に至ってしまった息子は……ん?報告書?……ふふふふ、ああ、気に戦でくれ嬉しくて泣いておるのだ……さて儂も少し休ませてもらおう……ふふふふ」
「……あの~、そこは移送用の馬車」
「馬鹿! いうな! リーダーの心が堪えられないぞ!」
「お前の声が! でかいよ!」
『お静かに』
「「「……はい、すみません。」」」
「……もうやだ。革命とかやだ……」
ここまでお読みいただきありがとうございました。





