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【書籍化・コミカライズ】【Web版】おっさん(3歳)の冒険。  作者: ぐう鱈
7章:宗教戦争で最も悲惨なのは宗派争い
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122.8「憎いのは異教ではなく異宗派3」

こんばんは!


「そう、構造と素材はこれで……」

 みなさんこんにちは、今日も天気だけど人権が戻ってこない。マイルズです。

 ティリスさんが部下に人権破壊兵器(幼児リード大人版)を注文しています。

 さらっと見ましたがリードの原型はなく、もう完全にそちらの趣味の人の衣装でした。

 ……魔王候補がこんなのでいいのでしょうか……。


「マイルズ殿、指導者に必要なのはどのような人格かではなく、何をなしたか、つまり結果なのです」

 鋭いのです。たまに思うのですが、この世界の住人は心を読む能力者がいるようなのです。

「マイルズ殿、経験と場の空気で理解しているだけです。あなたも100年ぐらい生きれば身につきますよ」

 ミリ姉は11歳ですがすでにその片鱗が……。


「特殊な人達……英雄様方に囲まれては……その影響を受けるというモノです」

 ……本音が出ましたね?

「魔王陛下も特殊……特別な英雄なので、私も影響を受けました」

 おお、さらっと魔王様を変態扱いしましたね。

「ちなみにこれは魔王妃様へのお土産です。ヴァン様には使いません」

 そう言いつつその手に持つ手錠は何でしょうか……うん、みなかったことにします。


「で、マイルズ殿はその薄汚い板で何をして遊んでいるのですか? 薄汚い板で」

 ……2度言う必要はないのです。

「失礼な! これは千年前の異世界人が残した異物よ。薄汚くなどない。故郷から強引に流され、行き着いた先で見舞われた苦難に対処しようと懸命に考えた者どもが作り出した物。ロマンではないか!」

 竜人学者デスガルドさんが異物を大事そうに抱えながら講義します。全くです。なぜロマンを理解できないのでしょうか……。やれやれなのです……。

「そうなのです! 確かに薄汚くバカぽい造形ですが、何か意味があるのです! 何もないかもしれない! けど! 何かあるかもしれない! そこにロマンがあるのです!」

「そうだ! そうだ! 発想の転換はいつも何気ないところから、違いを求めて発生するんだ! そしてそこから銭が生まれるんだ! 薄汚くて一見何の価値もない……カモのしれないが、そこに……」

 私の言葉に呼応したのは守銭奴……ゴホン……勝さん一号です。


「「「ロマン(銭)はあるんです!」」」

 竜人学者、私、勝さん1号の順にお送りしました。

 呆れて押し黙るティリスさん。

「……では次は昨日、案山子殿657号が発掘してきたこの人形だ!」

「呪いの品ですかね?」

「いやみろこの嫌に細かな造形を、きっとその手のマニアが作った芸術品だ。きっとどこかに売れる要素があるはずだ! それをみつけられれば!!」

「まて! 見よこの背中の紐!」

「内部を振ってみて!」

 からんからん

「おお! からくりじゃ無いか! 貸してくれ、直してみせるぞ!」

「勝さん1号、壊してはいけませんよじっくりと……あ、表面に魔法陣のコーティングが!」

「任せろ! 回避する」

「勝さん1号殿、中々よ。復元の専門家がおると捗るのう~」

 ・・・

 ・・

 ・

 ふう。久しぶりに楽しかったのです。

 衛君改造手術の要領で、表皮に定着している魔法機関を壊さぬように切り、内部を開くと、見たこともない部品がバラバラと出てきました。部品一つ一つにこの世界の魔法と異世界魔法を組み込んでおり、永久機関ではありませんでしたが、道具が風化するまでは機能するように組まれていました。

 おかげで素材自体はすぐ特定できたので復元にそんなに時間がかかりませんでした。そう4日程度でした。

「……見事だ……」

「褒めたってなんも出ないぜ」

「勝さん一号、飴ちゃん上げるのです」

 切り開いた際に組織を再生魔法を設置しながら行っていたのです。ですが、修理した後に再生魔法を発動させようとしたのですが、繋ぎ合わせる魔法の難易度はけた違いでした。

 不可能かとさじを投げかけたのですが、しかしそこはこの勝さん一号、売り物に対する情熱は半端ではありませんでした。トンげもない集中力でこの守銭奴は切り開く前の状態と全く変わらない……いや、より良い状態に戻しています。

 衛君や私など生物は体の魔法器官により詳細の状態情報を保存しているので、回復魔法など本来超高度な魔法を比較的術者の意識の低いレベルづけられます。が、物体はその機能がないので非常に困難なのです。


「さぁ、竜人学者殿。最初の起動。その栄誉を譲ろう。なにしろ貴殿の所有物故な」

「ほほう。良いのですかな?」

「いいさ。俺と本体は構造解析で十分新情報を得ている。これ以上は望みすぎだ」

「そうなのです。お肉さん。早く起動するのです」

「幼児よ、そろそろトラウマになるので勘弁してほしい……」

 などといいながらも、竜人学者さんはその巨体をうっきうきに揺らしながら人形の線をもつ。

 この線、引くなどの物理動作ではなく、魔法力を流し込むことで発動するのです。

 どう動くか知ってはいますが、本当に動くのかドキドキなのです。

ブーン

 竜人学者(肉)が魔法力を流し込むと人形の眼が青く光ります。

 人形はしばらくすると自分の衣装、袴のようなものを手で払い、正座しました。

 高度な動作なのです!


「では、1つ!」

 人形が喋りました!

「「「おお!」」」

 体を寄せ合う私たち。

「久しぶりに発掘されて一つ忘れたものを思い出しました……」

 そう言って人形は正座している足を見ます。

「はっ、くつ!」

 ……。

 ぐはっ!

 うまい!

「「「はははははははは!」」」

 ツボに入る私たち。え? ほかの人たち? 知らないのです。

「お粗末様です」

「「「ぶらぼー!」」」

 なんとなく御捻りを投げてみます。

「また次回およびください」

 人形はおじぎをし、再び『ブーン』と終了音を鳴らして止まります。

 正直AI部分は未知です。

 制御部品の魔石はブラックボックス化しており、開こうとすると消滅するトラップが仕掛けてありました。なので、今回は完成が目標でしたので、そのまま利用した限りです。

「技術の無駄使い」

「技術者の暴走」

「何が面白いの?」

「異世界人。侮りがたし……」

「……」

 はい、マモルン、香澄ちゃん、ミリ姉、領主様、騎士団長の順番です。

 マモルンと香澄ちゃんは若い子なのでしょうがないです。

 この奥深さを感じるのにはもっと人生経験を積む必要があるのです。

 ……ミリ姉。本気で不思議がるのやめて差し上げてくださいませ。おじさん3人組が切なくなります……。

 ……領主様。いい御歳ですもんね。貴方もこっち側の人間ですよね。安心しました。

 騎士団長、無言で『幾ら?』って紙に書いて掲げるのやめませんか?

 よほどツボだったのでしょうか? ……まだお若く見えますが……ほう、数百年生きてらっしゃるのですか? こういったものに目がない? ……ギャップですな……。


「では、マスター。お休みのお時間です」

 竜人学者と筆談で交渉中の騎士団長と横から虎視眈々と狙っている領主様をおいて、私は権三郎に抱えられて個室へと向かいました。

「あ、今晩ちょっとイベントがあります。とりあえず権三郎は静観していてくださいね」

「はい、しかし少しでもマスターに傷を付けた地点で……この一帯を地図から消します……」

 う……まぁ、たぶん大丈夫でしょう……。

 そうして私はウトウトと眠りに落ちていくのでした。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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