119話「お前はもう〇〇〇いる!」
あっれ~。12/25に書いてるはずの話なのに。。。
……すみません。遅れましたm(__)m
「お前たち……」
苦しげな呼吸で周りにいる族どもを睨みつける彼は『王』である。
そんな彼の前には彼の弟と白い法衣を身にまとい十字のアクセサリを握る醜悪な笑顔の族どもが立っていた。
「兄上。残念です。本当に残念です」
くくくくと低く笑う弟。
「あなたは家臣に裏切られ、右腕を失い、今私の前に伏せておられる。くくくく。みじめだなぁ。完璧王子様~。あ~、あなたの婚約者は、これからは私の物です」
弟が指を鳴らすと女官に支えられて彼の婚約者が現れる。……目に生気がない。
「くっ、きっ貴様~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
王の叫びが昼だというのに薄暗いホールに響く。
「教会の薬とは便利なものです。いや~、異世界の呪術様様ですよ。兄上」
弟が見せつけるように婚約者の肩を抱こうとした瞬間、弟は光に弾きとばされる。
「……くそ! まだ堕ちぬか! ……ええい! 大司教! 何がおかしい!!」
弾き飛ばされて尻餅をついた弟を見て白い法衣の老人こと、大司教が笑う。
「いえいえ。王弟殿の熱意。お若くてうらやましい。そう、実にうらやましい」
飄々と言ってのける異世界の聖職者。という名の簒奪者。
「まあいい、兄上。あなたがここで我らに封じられる光景を見せつければ、この強固な精神的な抵抗もなくなるでしょう。さぁ、兄上。永遠に石となるがいい。あなたが愛した民も、部下も、国土さえも私が支配して見せましょう。……あなたは石となり後の世で賢王と呼ばれる我が治世、とくご覧ください。あ、この女も精々可愛がってあげますよ。世継ぎを生んでもらわねば困りますからな! はっはっはっはっはっは」
醜悪にゆがむ弟の顔に、王は絶望を覚える。
だが、顔には出さない。
この男達が喜ぶことをしてはならない。
この地も異世界宗教の魔手に落ち、国民をすべて奴隷に落とされ、大切なものは奪われ、女は犯され、今後生まれる優秀な子供は目を奪われ、腕を落とされる。優しく親切な顔で近寄ってくる悪魔(異世界宗教)を信じた者達の末路はそのようなものだ……。
だから王は思う。悔しい。と。
王は聖王と呼ばれる男である。
この戒めさえなければ、腕を再生し、配下たちを、愛しい女を救えるものを……。
それが大司教と呼ばれた男が手にしている黒い十字のアクセサリーのせいで、力が出ない。どうやら強固な封じをかけられているようだ……。
王は最後に、王として異世界宗教の贄となるのに愚かしくも、高笑いを続ける間抜けな弟をにらみつける。
もはや指一本動かせない。
だが、せめて、せめて一撃。
異世界宗教の侵略を止めるための一撃を……と王が最後の意地で抵抗を続けていると、弱った聴力に叫び声と武装した兵が近づいてくる音が聞こえてくる。
おかしい……。
王は思った。
【声が聞こえない。】
兵たちの声が聞こえない。
勇ましくも心地よい戦場の雄たけびが……。
正者の声が……聞こえない……。
やめろ。あの秘法を使ったのか。やめてくれ。奪われたくない。だが失いたくもないのだ。
バン
重い扉が開かれ光がこの部屋を照らす。
ひきつった顔の神父たちが転がり込んでくる。
次いで白銀のフルプレートの騎士たちの剣が追い打つ。1・2・3・4・5・6。リズミカルに、単に作業のように剣は振り下ろされ、神父たちは息絶える。
そして剣を振り、血を落とすと騎士たちは兜を脱ぎ王へ臣下の礼をとり、そして次の現場へと去っていった。
王は気づいてしまった。見えてしまった。そう、その顔は青白く、忠誠の光が以外浮かんでいない瞳を……。
王は抵抗の意識を強め、封印術に対抗する。人としての生を捨ててまで、尽くしてくれた部下たち。彼らが作り出してくれたこの好機を生かすためにも……。王は歯を食いしばり己の力を取り戻し始める。
部下たちが死者となり果ててまで守らんとした主人が、ここで転がったまま石になるのでは……格好がつかん!
王ははっきりとした視界の端で愛した女性が微笑んでいる事に気付いた。そして同時に……その胸には秘術の光が……王は自らを責めた。……なぜ気づかなかった。騎士たちが礼を尽くした相手は自分だけではなかった。そしてこの部屋にはこの愚行を起こした首魁の2名が健在であるのに……なのに……なぜ彼らは去って行ったのか……。
この部屋は、この場で王を守るのは、……彼女の役目だったからだ。
彼女の表情がなくなると、きれいな肌から生気が失せる。
そして、彼女の背から白翼が現れる。
その翼は1つ大きく羽ばたくと、いともたやすく弟の首を切り落とす。
2つ羽ばたくと、美しく白い羽が落ち弟の体に突き刺さる。
落とされた弟の首は肺がないから声が出せず。
しかし【生者でない】から死ぬこともかなわず。
だが光の羽は弟に苦痛を与え続ける。
王はそこに隙を見つけた。
大司教は彼女に生えた羽に動揺を隠せない。
すでに手にもつ【重要なはずの】黒いアクセサリーにすら意識が向いておらず、呆然と何かを呟いている。
そこに王は全てをかけた。
アクサリーを通じて介入する影の者たちに、この封印の特殊能力をもつ超位の者に一矢報いる。その決意は、王に【地上の者では想像できないほどの】力をもたらした。
それは王が敬愛する光の主神が降臨したような力だった。
確かな手ごたえに王は笑う。
闇の向こうで確かに、この厄介な【封印の力】を持つ者を討った。
大司教が何かを叫んだが王にとってそのようなことは気にならない。
気にされなかった大司教は次の瞬間、3度舞った白い翼によって弟と同じ末路を歩む。
王は想った。己を犠牲に闇に立ち向かった部下たちを。
王は想った。彼らに少しでも救いがあらんことを。
王は願った。魔物として処理されないでほしいと。
王は自らの全てをかけた。封印される直前もその力を己が信じたもの達に。己が望む幸福のために。
その日、王都にいた全ての民は聖王の最後に接した。
~皆に、優しい光の恩恵があらんことを~
その後、その国は不死の騎士団、不死の宰相、そして聖王の墓所を守る不死の女王が国を守る国。死の国。と呼ばれることとなる。
歴史を忘れ、古きを学ばぬ者達は国から逃げ出した。
愚かにも反乱を企てた貴族は、それを煽った外国勢力は、光り輝く不死の騎士団に滅ぼされた。
~~~それから200年の月日が過ぎた。
大陸中央の西部に位置する死の国は人口が減っても、国民たちは代々受け継がれる聖王の最期を語り継ぎ、聖王の祝福を受けた民として誇りと偉大なる先人、その庇護下で生活していた。
青く輝く長髪はその髪の主が死人とは思えぬ美しさだった。
宰相補佐は、その美しい髪を持つ青年。
不死の宰相が書いている手紙の完成を待っていた。
報告書類をまとめて持ってきたところで宰相に呼び止められ、茶を勧められた。ちなみに、不死の者たちは声が出せない。表情も日に一度しか動かせない。そして不思議なことに腐臭もしない。しかしその眼には生気がない。その肌には血の気がない。
宰相補佐をはじめ、この国の中枢に仕える者たちは目撃する。
この不死の者たちが日に一度笑顔になることを。
それは子に向ける慈愛の笑みである。
故にそれを見た中枢に仕える者たちは涙する。自己犠牲に続け。安息すら与えられぬ彼ら、しかしてそんな中でも彼らは自分たちに慈愛の笑みをむける。身を引き締めて仕えねばと宰相補佐は思う。
「拝見してもよろしいのですか?」
完成した手紙を見て宰相補佐は目を見開く。
そして宰相を見つめる。すると宰相は嬉しそうに笑った。
その笑みに宰相補佐はつい引き込まれる。そして思う。手紙の内容を知れば宰相の笑顔が、自分たちへの、子供たちへの慈愛の笑みではなく、本当にうれしいことが起こったから笑顔なのだ。と。
手紙を預かった宰相補佐は城内を走る。
このことを伝えねば。しかし、この手紙は丁重に扱わねば。と。
~~~その2か月後、農業都市グルンド
あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
本年もよろしくお願いいたします。
……ん? 季節ネタやめろ? 後発で読む人が戸惑う? 知りません! そしてすでに2018年1月10日。もうね。寝正月を過ごした作者。ダメ人間です。可愛いまーちゃんには罪はございません。
という事で私は今何をしているかから説明しましょう。
なぜだかポチと婚約した私マイルズは南方諸国の騒乱を収めつつ、神獣さんご一家の問題を解決してお家でまったり中なのです。なお、季節は夏なのです。
扇風機。クーラー。アイス。ほしい物ばかりなのです。
即席で作った団扇で涼んでいるとミリ姉と目があいます。……あげませんよ?
え、いらない? そうですか(警戒心スイッチON)
……なんで隣に座ったのですか? 暑い? そーですね。
まーちゃんは涼しそう? そーんな事ないですよ。
……足を突っ込んでいるのはなにか? ですと?
ぬるま湯になっている水ですよ。
風が涼しそう?
……おやめください。まーちゃんひんやりセットを的確に見抜いて奪うのは……。え?
一緒に使う? ……ヤダ。暑苦しい……。
あの魔法道具……勝さんに作らせるのに苦労したのです……。
現在、私はかろうじてひんやり団扇の空気が流れてくる範囲内におります。
扇いでいるのはミリ姉なので、疲れることがなく快適なのですが、理不尽なのです。
避暑地に行きたい……。
元道民にこの暑さはつらいのです。
避暑地に行きたい……。
「……………………じゃ、行きましょうか」
声に出ていたらしい。
私の肩をつかみ満面の笑みをたたえる祖母がいました。
その手には高級そうな手紙が3通握られています。1通は王国の王家からのです。見覚えのある印が押されています。
……すっごっくやな予感がしますので辞退したいです。
・・・
・・
・
祖母が私の肩を握る力が強くなりました。
幼児には人権がないようです……。
+α
「マイルズ。この道具を増産しなさい」
「勝さん一号の……」
「増産なさい」
「…………」
ええ、作りましたよ。
弟は姉の奴隷なのです…………。
ザン兄、バン兄。なぜ、遠巻きに優しい目なのですか?
お父さん、なんでそちらに並んでいるのですか? 父権は? 中世は高度な文明がないからお父さんが尊重されるのでは……ああ、ないのですね……。惚れた弱みだ? ちっ。
その後、マイルズの反抗期は半日続いた。が、飴であっさりと懐柔される。
「は? 明日出発?? 聞いてないのです!!!」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。





