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111.5「変態王子怒る 後編」

 空間の割れ目から現れた変態王子は、その光景に戦慄した……。

「何故こんなことに!!!」

 目の前には、2体の特殊案山子が1柱の亜神を、所によっては下級神すらも封印を行っている光景が広がっていた。

 周囲を見回すと攻撃で焦げた案山子や破損した案山子が多数、マイルズの修復を待っていた。

 同様に大型術式を受け破損したと見受けられる小山ほどの大きさがある案山子5体が全身をオレンジに染め、内部パーツを露出させ、空冷を行っていた。その影響で強力な熱源となり周囲を温めていた。

 だが問題はそこではない。

 問題なのは……マイルズが大天使と思わしき4枚の羽根を背負った女性に抱かれ眠っていた事だ。

 女性は慈愛に満ちた瞳でマイルズの頭を撫でて居る。

 非常に絵になる光景である。


「貴様! どこから湧いた!!」

 詰め寄る変態王子に女性は唇の前に人差し指を立て、「しーっ、起きちゃうでしょ」と変態王子を叱りつけた。

 勝利者の笑みを浮かべる女性と、地団駄をふむ変態王子。

 変態王子は思う『何もかもあの無駄にシビアな現実に酔っていった盗賊の頭の所為だ』あそこで時間を使ってしまったからだ! と。

「よし、殲滅に行こう」

 バカなノリで変態王子が白龍に飛び乗ろうとしたところで、女性がそれを止める。

「まーちゃんから、『変態っぽい男が来たら、情報収集頑張るのです。とお伝えください』と言伝を伺っております。私はまーちゃんを抱いていますので、お答えできませんが他の99柱はあのようにすっかり落ち着いて封印されております……」

「貴様も捕虜であろう。一番きつい封印してやるから、我がいとし子をわたすとよい……」

 大天使の女性はマイルズを抱っこしながら、プイっと向きを変える。

「ぐぬぬぬぬ」

「私は天界に戻れば愛でる会の皆さんに折檻されることが確定している身。これぐらいの役得はいいでしょう。うふふふ、えい。かわいいー。ガチ天使より可愛い!」

 大天使様、部下の天使達を見ています。

 人類が比喩表現で『まさに天使!』とかいうが、そんな良いものではない。大天使な彼女はそう思う。たまに悪魔の方が純粋なのではないかと疑うことが多数である。

「もう、仕える神様変えちゃおうかな〜、そうすれば愛でる会に入会できるし♪」

「…………良いだろう。白龍!」

『なんだ主人。とんでもなくつまらないことを命令されそうで心の底から嫌なんだが……聞こう』

「見張っていろ。この女がいとし子に変態っぽいことしない様に、見張っているのだ!」

『具体的には?』

「普段私がすることだ!」

『自覚あったのか……』

 それはそれで嘆かわしいと漏らしながら白龍が承諾すると、変態王子は駆けていった。


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