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人前で話せない陰キャな僕がVチューバーを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件  作者: 中島健一


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第33話 チーム決め

~織原朔真視点~


 ロックテイストのBGMに革ジャンを来た男の子なのか女の子なのかわからない紫色の髪をショートカットにした幼そうな子供が画面中央に写し出される。


『さぁ、始まりました!みなさん人生楽しんでるぅ~!?上から読んでもぉ?下から読んでもぉ?田中カナタ~~!!田中カナタです♪』


 〉下から読んでもぉ!!

 〉ナカターーーー!!!

 〉カナダーーーー!!!

 〉ナカタ!!!!


 田中さんの配信が始まった。


 田中カナタさんの性別は不明だ。女性的な声にも聞こえるし、少年のような声にも聞こえる。田中さんの髪型は今はショートカットスタイルだが、たまにロングヘアーになったり、ツインテールになったりと様々なヘアスタイルで登場する。ロック調のファッションに紫色を基調にした田中さんはおそらくアメリカのミュージシャンであるプリンスを意識しているのだろう。プリンスは自分のことを男でもなければ女でもないと言っている。


 田中さんのルーツに関心を持った僕だが、田中さんはさっそくVチューバーと配信者を集めたアーペックスの大会概要を説明した。


『え~近年、いや昨今、多くのVチューバーや配信者がこのアーペックスという素晴らしいゲームの配信を行っております。そして多くの大会が日夜開催されております。自分の推しが大会に出たことがあるといった視聴者様もたくさんいることでしょう。しかしこの私、田中カナタが主催する大会はひと味違います……』


 〉ドキドキ

 〉ワクワク

 〉ナカターー!!!


 視聴者さんの熱気のこもった異様なコメントが流れている。田中さんは今回催されるアーペックスの大会だけでなく色々な大会を主催している。例えばこの前、榊さん達とやったグラウンドカートの大会であったり、様々なミニゲームをクリアして最後の1人を目指すライズガイズの大会であったりと様々だ。そのどれもが事務所の垣根を越えた豪華な参加者で彩られ、そして多くの視聴者の注目を集める。


 そんな田中さんがアーペックスに手をつける。普段のアーペックス大会とはまた違った盛り上がりを僕は感じていた。


『炎上は覚悟の上!気まずさ大爆発!誰と組むかわからない!全ては運に任せよう!!ドキドキ、ルーレットチーム編成~~!!!』


 〉ま?

 〉え……

 〉やばくね?

 〉絶対誰か炎上する


 今までルーレットでチームを編成する大会もあったにはあったが、それは箱の中、同じ事務所に所属するVチューバー同士でチームを編成していたし、或いはその日限りのチームとしてアーペックスの本大会が終了したあとの後夜祭といった感覚で主催者の独断と偏見、この人とこの人が組めば面白いかなと言った具合で決められたこともあった。


『え~、勿論ですね、実力差が生まれないようにアーペックスのランク帯による大まかな区分はしているので、そこら辺はご心配なく……ただ、アーペックスはチーム戦です。チーム間でのコミュニケーションが非常に重要なゲームとなっております。いくらVチューバーや配信者といっても馬が合わない人というのはいますので、如何にイライラせず円滑にコミュニケーションをとれるかが鍵となっております』


 〉推しがギスってるのはあまり見たくないな

 〉ナカタ性格悪い

 〉これは恐い

 〉大丈夫か?


 無論、僕はこの大会概要を知っていた。しかし誰が参加するのかまでは知らない。田中さんの言うように、僕と馬の合わないVチューバーもたくさんいるだろう。その日限りならなんとか乗り越えることもできるだろうが、本番までチームでの練習配信等をするとなるとコミュニケーションをとらざるを得ない。しかしこれはチャンスだ。田中さんの主催する大会ならばどんなゲームでも8万か9万人の同時接続数が見込める。それがアーペックスなら少なくとも同接15万人は固いだろう。


『さて!それではさっそくルーレットを回していきましょう!』


 全20チーム、計60名で行われる大会。その中で優勝するには僕だけの実力では不可能だ。同じチームとなる2人の実力と相性はかなり重要となる。


 ──僕は優勝することを目的としているのか?いや、それよりもまずは撮れ高をとって多くの人に僕を知ってもらうことが重要だ!


『先ずは高レート帯の8pt以上の元プロゲーマーの方や実力のあるVチューバさん、配信者さん達の紹介をしてからそれぞれA~Tチームに分かれて頂きます。ではこの方から紹介しましょう!新界さん!!』


 〉きちゃぁぁぁぁぁぁぁ!!

 〉新界先生!!!

 〉うわあぁぁぁぁぁ!!!

 〉いきなりラスボスで草 

 

 画面に両腕を組んだ男性が写る。茶髪のその男性は眠たそうな瞼を持ち上げてこちらを見つめている。ただの画像なのだがその眼光は鋭く、着ている黒のTシャツに刻まれた『元ぷろげ~ま~』という文字が不釣り合いに見えた。


 視聴者は勿論、僕も彼のことを知っていた。


『FPSゲームOverlook cup 2016、2017で日本を優勝に導いたこの男!!新界雅人が田中カナタ杯に参戦だぁぁぁぁ!!新界さんはAチームに、いや!もうルーレット回すか!!時間短縮で8pt以上の参加者はAから順にチーム分けしようと思ったけど、なんか回したくなった!!』


 胸が高鳴る。この人の動画を何度も見た。そんな人と一緒にゲームができる。いや、もしかしたら同じチームになるかもしれない。僕は体重を預けていた椅子の手前に座り直し、画面を食いいいるように見た。


 画面に表示された円形のルーレットがぐるぐると回る。時計で言うと12時のところに矢印が設置されており、その矢印の下にきたアルファベットのチームとなる。


『お~!Aですか!流石レジェンド!トップオブトップ!!自分の席はそこだと言わんばかりにAチームに配属されました!!』


 新界さんの画像は縮小されAチームと記載されたグループへ貼られる。


『それでは次にぃ!!これまた元プロゲーマーのルブタンさん!!』


 〉うわぁぁぁぁぁ!!!!

 〉うおぉぉぉぉぉ!!!!

 〉豪華すぎる

 〉きちゃぁぁぁぁぁぁ!!!!


 画面には短く刈り込んだベリーショートヘアの男性が写る。普段の配信ではゲームそのものを楽しむようなスタイルで、おちゃらけと暴言を吐くイメージのルブタンさんだが、画面に写る彼の画像は真面目な好青年に見えた。


『国内外に輝かしい成績を残したルブタンさん!!彼に影響を受けたプロゲーマー達が大勢いることでしょう!!さぁ!ルーレットスタート!!!』


 ルブタンさんと新界さんのどちらが強いかと問われても正直答えにくい。結果を残しているのは新界さんであることは間違いないが、だからといって必ず新界さんが勝つとは限らない。


 サッカーや野球のフィジカルスポーツと違ってeスポーツは1日に数試合こなすことができる。その為、一対一の対戦ゲームならストック2か3の二本先取や三本先取が一般的である。またこのような20チーム、60人が参加するFPSゲームはポイント制でキル数や生き残りの順位などでポイントが加点される──今回の田中さん主催の大会ならば1日で3試合をしてその合計ポイントで順位が決まるようになる──為、一試合でより多くのポイントを稼ぐかが重要となってくる。だからと言ってキル数を稼ごうとすると多くの敵と相対することとなるし、戦いを避けて生き残ろうとするとキル数が稼げなくなる。


 以上のことから、その場の立ち回りやお互いのポイント状況によって戦い方が変わるため、過去の大会の戦績だけでどちらかが強いなどの判断がしにくいのだ。


『Bチーム!ルブタンさんはBチームに決まりました!!!あれ?これちゃんとルーレット出来てるよね?次の方がCになったらちょっといじってみるわ…では次の方……』


 少し間をとって田中さんは喋る。


『実は、先ほどBチームに入ったルブタンさんに今大会の実況をお願いしてたんですよ。でも次の方が大会に出ると知って、ルブタンさんが実況を断って大会出場を決意したんですよね……』

  

 〉ぇ

 〉てことは?

 〉ま?

 〉あの人じゃね?


『彗星の如く現れたFPSストリーマーの原石!シロナガックスだぁぁぁぁ!!!!』

 

 〉あああああああああ!!!!

 〉神!!!!

 〉よくオファーできたな!!

 〉絶対リアタイする!!!


 画面に写し出されるシロナガックスさんのロゴマーク──背景が黒でシロナガスクジラの絵が描かれている──を見て僕もコメント欄の皆と同調した。


 田中さんの画面にはシロナガックスさんによって倒されるルブタンさんの映像が流れていた。


 アーペックスではなくフォートトゥナイトという別のゲームの映像だが、光速で建築しながらしっかりと狙いをつけて撃ち抜くシロナガックスさんのプレイングは芸術的であった。


 〉殺られてるw

 〉流すなて √

 〉殺られてて草

 〉おもろ

 〉ルブタンいて草

 〉ルブタンもよう見とる


 コメント欄にルブタンさんがいた。


『え?ルブタンさんいるの?本当だ!使わせて頂きました!!』


 〉ルブタンもよう見とるw

 〉ルブタンいる

 〉流すの許可してるから心配しないでね √

 

 視聴者に配慮したコメントを残したルブタンさんに僕はプロ意識というものを感じた。


『さあ!FPSで名だたるプロゲーマーやストリーマー達を倒してきた今回のダークホース、いやダークホエール!シロナガックスは一体どこのチームに入るのか!そして誰と組むことになるのか!運命の、ルーレットスタート!!』


 僕はルーレットが回るのを固唾を飲んで見守る。


『Cチームに決まりました!!てかABCって順に決まってんな……ちょっと今ルーレット回してみる』


 シロナガックスさんのロゴが縮小されてCチームと書かれた枠に入っていく。


『あ!Gに止まった!ちゃんと機能してるね…よし!じゃあどんどんいきましょう!!』

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