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第88話「逆巻く水の向こう側」




 明けて月曜日、学校や会社に行かねばならないからブルーマンデー、とは言うけど私は別の意味でブルーだった。


「ぬべーん」


 そんな鳴き声の生物が存在した事に私は戦慄する。

 リビングのソファーの背もたれにぐんにゃりとだれている奇っ怪な生物は私に気付くとぬらりと湿り気を帯びた目を向け、ずりずりと這って移動してくる。

 その様は最早一種のホラーであった。


「おーねーえーちゃーんー」


 ほら、こんなのが妹なのってホラーでしょ。


「……見なかった事にしよう」

「お姉ちゃん分が足りないー、吸わせてー」


 何を、とは怖くて聞けない。

 足に絡み付く花菜はむくむくと元気になっていく。……何か吸われているらしいですよ私。


「ぱふぱふ」

「やめなさい」


 引っ付く花菜をどうにか蹴散らす。ゴロゴロと転がるも、すぐさまつるつるお肌の満面笑顔でしゃきんと立ち上がる。


「はっはっはー。やはり栄養補給にはお姉ちゃんが一番ですなー」

「なんなのこの疲れるスキンシップは……」

「だってー、昨日はアレですよ。アリッサお姉ちゃんとの距離が離れちゃってあれやこれやでお姉ちゃん分の消耗が激しいのです。お姉ちゃん分の不足は酸素欠乏症より大分危険、最悪の場合寂しくて死んじゃうのですだめだお姉ちゃんから離れられないぶぶぶ」

「や・め・な・さ・い・と・言っ・て・る・で・しょ・う・がっ」


 またくっつこうとしてくる花菜の顔を抑え付ける。ただ、舐められたくない(物理的に)ので上半分を両手でホールド中。


「お姉ちゃんの手ー」

「くっ、だめかっ……」


 触れただけで喜ぶ花菜の、あんまりな感性に頭を痛めるのだった。


 その後ようやく花菜がいつも程度にまで落ち着き、昨日の話をしている。

 ボーイくんを連れ出した事やひたすらに平原を駆けた事、ラント人さんたちと道中を共にした事、黄葉が綺麗だった事、クランク工房での出来事なんかをかいつまんで話していく。勉強の話題はさてどうしよう……?


「………………」

「どうしたの、急に黙りこくっちゃって」


 話し終えると花菜がぐったりと横たわった。どうも何かを囁いているようだ、耳を澄ませてみる。


「……お姉ちゃんのハーレム要員がまた1匹増えやがった……あたし1人でいいのに」

「………………」


 恨みや辛みや嫉みや妬みがない交ぜになった声が漏れ出てきていた。ずりずりと後退りしてしまうのは見逃してください。


「お姉ちゃんはあたしだけじゃ満足出来ませんかそうですか。イジイジ」

「どう言ういじけ方をしてるの。まったくもう。こっちは花菜と一緒に遊ぼうとがんばってるのに」

「ぶう。その割には寄り道が激し過ぎやしませんか」


 自覚はある。普通にレベルを上げるならもっと効率的に動けたんだろう。

 ただ、花菜に話せない事柄が多くて、結果として寄り道と見える事も増える。


「でも、寄り道の中には頼もしいお友達と出会えたものもあったんだもの。悪いばかりじゃなかったよ」


 花菜の膨れっ面を指で押す。ぷすぷすと息と一緒に不満を押し出せるように。


「いい方向に転がってると思うから、まだ待てる?」

「待つけどさっ」


 ぷひゅうとリスのようだった頬が萎む。


「早くしないと、あたしとの差は埋まんないよっ」


 分かってる。花菜との“待ってて”と言う約束はクラリスのレベルアップをしないで、と言う意味じゃない。“一緒に遊ぶのを我慢して”と言う意味だ。

 それは私の意固地。

 花菜とは、対等とはいかなくても足手まといになりたくないとの思いから出た言葉。

 でも、今の調子じゃ追い付く所か引き離されそうだから、発破を貰った形だ。


「がんばれお姉ちゃん。あたしの為に」

「はいはい、がんばりますよ〜」

「ぷすす」




◆◆◆◆◆




 MSO世界には月が無い。夜空をいくら探しても、日が沈んでから夜が明けるのを待ったとしても、月を見る事は叶わない。

 何故なら星たちに掛けられた魔法をその身に移した為に月もまた眠りに落ち、その光は失われてしまったのだから。

 星たちをすべて目覚めさせるのと同様に、月の魔法を解いて目覚めさせるのも私たち星守に課せられた『グランド(最も重大な)ミッション(使命)』の1つだ。



 そんな設定を、不意に思い出していた。


 ここは泳ぐ魚亭と言う宿屋さんの一室。私はそこの窓から空を見上げている。

 このライフタウン・フレスレイクはフィエスラ湖の底に存在している。故に頭上には湖の水が蓋のように覆い被さっているけど、昼間は燦々と陽光に照らされてそれはそれは美しかったものだ。

 でも一転、夜ともなれば星たちの光では足りずに漆黒の天井の出来上がりだった。


 精霊器による灯りを否定する訳じゃないけど、もし月があったなら、月光で照らされたこの街はどれだけ幻想的であったろうと想像し、先程のグランドミッション云々に思考が飛んでいたのだった。


「それって、難しい話だと思うわよ?」


 相部屋だったセレナにそう話すと、そんな答えが返ってきた。


「このMSOってさMMORPGって奴じゃん。個人向けのゲームと違って長いスパンで運用されるモンなのよ。そんでMSOは始まってまだ4ヶ月そこそこでしょ、世界観に関わるようなビッグイベントをそうホイホイしやしないわよ」

「じゃあ……やるとしたらいつ?」

「ん〜。それこそ何周年記念とか……大規模なバージョンアップの前とか?」

「夢の無い話」


 ため息と同時に肩を竦める。月明かりの下のフレスレイクは当分の間お預けであるらしい。

 むうと残念な気持ちを唸りに変えて顔をしかめていると、ドアが控えめにコン、コン、コン、コン、とノックされる。

 こう言うのも大分慣れたもので、この丁寧で若干ゆっくりとしたリズムの叩き方はセバスチャンさんの物と分かるようになった。

 天丼くんだともう少し強く、素早くガンガンガンと叩き、こちらの返事を待たずに「おーい」と言ったりする。


「はーい」

「どうも、セバスチャンです。夜分恐れ入ります。そろそろこれからの予定を立てたく参上致しました」

「分かりましたー」


 セレナも私もいつも通りの格好だし、プライベートな部屋でもないので気にせず中に招く。ドアを開くとセバスチャンさんのみならず天丼くんも一緒に中に入ってきた。


「こんにちは。わざわざ来てもらっちゃってすみません」

「いえいえ、男子と言うものは往々にして旅行先の女子部屋へお邪魔する事に少なくない憧れを抱くものです。そうは思いませんか天くん」

「そんな答えにくい事この上無い話題を振ってくれるなよ」


 みんなが集まり、銘々に位置取るとセバスチャンさんが音頭を取ってこれからの予定についての話し合いが始まった。


「とりあえずは目的地であるフレスレイクまで到着した訳ですが、さてご注目」


 テーブルに広げたのはフレスレイク、正確にはフィエスラ湖を中心にした地図のようだった。


「この周辺には多方にフィールドとダンジョンが点在しておりますが……行き先をわたくしの独断で決めて宜しいのですか?」

「そりゃ行った事あるのセバスチャンだけだもの。ネットで調べたりは出来るけど、実際にそこで戦った経験の方が頼りになるしね」

「セバさんの判断ならどうなろうと後悔しねーよ」

「満場一致ですからよろしくお願いします」

「……かしこまりました。では――」


 と、セバスチャンさんが視線を地図に向けるタイミングでセレナが手を上げた。


「あ、でも出来れば手っ取り早くレベルアップ出来るトコ希望ー」

「任せてねーじゃねーか!」


 ドッと湧く室内。

 けど、口を手で押さえながら私も手を上げた。


「私も、それはお願いしたいかも」

「おー、味方。さすがアリッサ」

「あはは、うん。実は妹からせっつかれちゃったんだ。早くしないと差が埋まらないぞって」

「なにー? 生言うじゃないあのシスコンめ」


 ギリギリと歯を軋ませるセレナを見てセバスチャンさんはくすりと小さく微笑み、ある一点を指差した。そこはフィエスラ湖から続く川のようだった。

 その指はそこから更に動いて川を遡る。そして辿り着いた場所をトントン、とリズミカルに叩いた。


「では、フィエスラ湖に流れ込む『ブラエマ川』、その上流の『ブラフザ瀑布』を越えた先にある『ブラネット高地』の奥地に存在する『水没せし都・ブラノーラ』などは如何でしょうか?」



◇◇◇◇◇



 ブラノーラと言う場所を目指す事になったものの、まずはフレスレイクでもとあるクエストをこなしていくそう。


「まったくもう。もっと手っ取り早く進めちゃえばいいのにさ」

「急がば回れって格言を知らんのかお前は」


 そんな2人のやり取りを聞きながらフレスレイクの街中を歩いていく。

 湖の下にあるこの街には何ヵ所からかフィエスラ湖の水が流れ落ちて水路を形成している。とは言ってもイタリアの水の都ヴェネツィアのような大規模な運河ではなく舟など通れそうもない細い物で、生活用水として利用されている様子。

 そこかしこでかつてのひーちゃん同様のピンポン玉サイズの水の精霊を見かけるのは、やはりこの街が水属性のマナに満ちている証か。


(《精霊召喚》もレベルアップしているので新たに契約も出来るけど、契約時点じゃ1レベルだもんね……この界隈じゃ危ないかなあ……)


 以前程事態は喫緊でない。

 慎重に考えるべきかと1人納得しているとセバスチャンさんが指を差している。


「おお、見えてきましたよ皆さん」


 水路を渡る為の石橋の先にある建物。どうやらそこが目的地らしい。


「でっかいですね……」


 街の端に位置するそこはずいぶん大きな建物だった。でも、以前訪れた貴族様のお屋敷みたいな物ではなく、公共の建物らしく正門はこんな時間でも開放されている。

 そこは役所だそうだけど、用があるのは併設されている史料館。そこではこのフレスレイクの歴史を知る事が出来るらしい。


「こう言うトコは苦手だわ。なんてゆーか退屈そうで」

「分かる。昔から社会科見学でこの手の施設に来てもぎゃあぎゃあ騒いでただけだもんなぁ」


 ガラスケースに納められた様々な史料や昔の様子を描いた絵画などが展示されている中を歩きながらしみじみとそう呟く2人。


「私は……」

「真面目に説明聞いてメモ取るイメージしか思い浮かばないワケだけど正解や如何に」

「……正解だけどさ」


 まこと光子に宿題を任されていた記憶が甦る。ううう、だめだよ花菜、ちゃんと自分でやらないと身に付かないからあんな風になっちゃだめだよう……。


「ブラノーラでとあるイベントを起こす為には全員がここで発生するクエストをクリアしておく必要があるのですよ。退屈やもしれませんが少々ご辛抱下さい」


 セバスチャンさんはそう言って職員さんに話し掛ける、するとウィンドウが開いてクエストを受注するかを問うてくる。



『【クエスト発生】

 《フレスレイクの歴史》

 クエストを開始しますか?

 [Yes][No]』



 Yesを選択すると職員のお兄さんがフレスレイクの歴史についての授業を始める。


「かつて、この場所にはフィエスラ湖と言う湖は存在していませんでした」


 示された絵には太陽の下に露出しているフレスレイクの絵が飾られている。


「ですがある時の事、大水魔が水の流れを変えてしまい、ブラネット高地の奥地にある水麗なる都・ブラノーラが没してしまったのです」


 続く絵には都市の下に黒い靄があり、そこから幾本もの触手が伸びている。


「そこからフレスレイクへ大量の水が押し寄せます。濁流が迫ったその時、水の聖女がもたらした地上の星の欠片が輝き、この街を守ったのです」


 次の絵では祈るように手を組んだ女性と街の中心で光り輝く星が濁流を弾く様が描れている。


「そして水の聖女がその身を以て大水魔をブラノーラの地下深くへと封じました。今もその封印は水の聖女の友・水竜クリアテールが守り続けているのです」


 最後には大水魔だろう黒い靄に女性、そして青いドラゴンが立ち向かっていく姿が描かれていた。


 クエストはそれで呆気無く終了した。クリア報酬として『記念バッチ』を貰えたのだけど……。

 効果は何も無いアイテムで、セレナは「容量圧迫するだけだわ」と、ぶつくさ言いながらアイテムポーチへ入れていた。

 職員さんにお礼を言って私たちは史料館を後にする。



◇◇◇◇◇



 その他にも幾つかのクエストをこなす必要があるそうだけど、そちらは私が参加しなくてもよいそうなので舟を調達すべく地上へと上がる事になった。

 来る時は長いトンネルを使わなければならなかったものの、戻るには別の道がある。

 それはポータルの傍の高く高く伸びて、頭上の湖にまで続いている塔。

 そこではごうごうと絶え間無く街を流れていた水が集まり、塔を昇って湖へと戻っていくのだけど、その一部が割れて道を作っている。

 その奥に設置されている精霊器によるエレベーターを使って地上まで戻るのだ。


「これで湖上の島に行けましてな。その島には貸しボート屋がありますのでそこで調達致しましょう」


 そこでハテナと疑問が浮かぶ。昨日確かに地上のフィエスラ湖側から島を見たけど、湖底にフレスレイクがある以上島はどこにあるのかな?

 そう思ったものの、考えてみるとこのフレスレイクの直径はフィエスラ湖からすると小さかった事に気付く。


(そっか、この湖って盆地みたいに一部だけ深いんだ)


 イメージとしては逆さにした麦わら帽子。


(だとすると……エレベーターって直行じゃなくて、登った先が停留所みたいになってて定期便で行き来している……とか?)


 果たして正解はどうなのか。数組程先んじて並んでいたので順番を待ちつついるとようやく私たちの番となる。

 以前精霊院でエレベーターに乗った経験があったけど、こちらの物も似た構造だった。

 昇降は足下の円盤に乗って行うようで、コンソールパネルに入力すると上昇を始める。

 違いがあるとすればエレベーターガールさんがいなかったり、パネルには上下逆さまの三角ボタンがあるだけだった事くらい。上のボタンを押すと音も無く上昇が始まる。

 一部がガラス製の塔からは精霊器の灯りに照らされたフレスレイクが立ち上る水の向こうにぼんやりと映っていた。


「ゆっくりと見れないのがちょっと残念だね」

「ま、そんなに距離がある訳でも無いし、結構速いものねこのエレベーター」


 途中で止まれもしないからわずか数分のみの景色。だからこそしっかりと見ておこう。


「いえいえ、外側の逆さまの滝を泳いで下り続ければいつまででも景色を眺めていられますよ」

「誰もそんな苦行は求めてないです」


 そうこうしている内にエレベーターは湖上に到着し、チーンと言う音と共に停止した。


「これは……」


 1日ぶりの地上はまだ夜明け前、湖の周りは真っ暗闇……かと思いきや、ほんのりとした灯りがある。

 遠くに見える島、そこへ蓄光素材のようなささやかな光が橋らしき形となって通じているのだ。


「これって歩いても大丈夫なの?」


 石橋を叩いて渡るの故事のようにカンカンと光の橋を蹴っているセレナがセバスチャンさんに聞いている。

 私もツンツンとつついていた指を止めてそちらに振り向く。


「もちろんです。少々距離はありますが、島まできちんと続いておりますよ。さ、参りましょう」

「少々で済む距離かねぇ?」


 苦笑しながら先を行くセバスチャンさんを追いかけた天丼くんはそんな事を言い、


「どうせなら競走でもする? 負けたらアイテム1個奢りで」

「そんな俺に優しくない提案は御免被るね」


 余裕そうにセレナが続く。私もフレスレイクから出たのでひーちゃんを呼びつつみんなを追うのだった。



◇◇◇◇◇



 おおよそ10分。

 それだけの時間で私たちは島の貸しボート屋さんに着いていた。実際には結構な距離があった訳だけど、そこはさすがと言うか……セレナが途中で焦れちゃって、毎度お馴染みのお姫様抱っこで私を抱えて走り出してしまったのだ。

 ただ……セバスチャンさんならいざ知らず、天丼くんは完全に置いてけぼりにしてしまった訳ですが……。


「ねぇ、これって私たちが操縦するタイプ?」


 小さい物から大きい物まで選り取りみどりなくらいに湖岸にいくつもあるボート、手漕ぎはもちろんアヒルさん型の足漕ぎボートなんて物まである始末。

 果たしてコレを使う人はどんな目的でなんだろうね、ひーちゃん。


「追加料金を支払えば船頭を雇えますが……ここはわたくしが請け負おうかと。基本は一本道ですが、何分夜間ですからな。昔取った杵柄を披露致しましょう」

「ソイツは……助かるな……」


 若干肩を揺らしながら遅れてやって来た天丼くんが合流早々に会話に加わる。


「今回は精霊器スクリュー付きのボートを使いましょう。操縦が難しく気を付けねばモンスターに激突して転覆しかねないと言うリスク付きですがエンジン並みのスピードは出ますので今日中には麓のライフタウンにまで到着出来るでしょう」

「大丈夫なんでしょうねぇ。私たちの中に水中戦闘が出来そうなのいないのに」

「そこはそれ、このセバスチャンの腕1つ。どうぞ大船に乗ったつもりでお任せあれ」

「そんなでっかくない」

「この場合はセバスチャンさんへの信頼を表してるんじゃ……」


 と言う事で、私たちは4人乗りの中型ボートを借りる事にした。やたらと化粧の濃いおばさんに「壊すんじゃないよ」とキツめの視線付きで言われて怖じ気付きつつも無事にボートを調達した。


「では、皆さん改めまして確認をば。まだ夜中ですので危険もあります、よく聞いておくのですぞ?」

「「「ハーイ」」」『キューイ』

「結構。ではまず――」


 ブラエマ川は幅50メートル以上に及ぶ大河である。ライフタウン扱いのフィエスラ湖と繋がってはいるものの、途中からはモンスターが出現するようになる。

 当然ながら出現するモンスターは水棲生物をモチーフとしたものであり、魚にザリガニに虫などがいきなり飛び出してくる事もあるそうで注意が必要で、舟へも攻撃を仕掛けてくるとか。


「その場合、天くんの防御力を頼る事になります」

「本業だ、任せておけよ……と、言いたい所だが……やっぱ夜中で暗いのは恐いな」

「一応ひーちゃんもいるけど……」

『キュ』


 火属性のひーちゃんは水属性モンスターの大敵ではあるけど、同様にひーちゃんにとっても水属性は弱点なので、不意の一撃が致命傷になりかねない。


「灯りはランタンがあるんだろうが……どこまで照らせるかだな」


 ボートの先端にはランタンを取り付けるパーツが備わっていて暗い川を照らしてくれるけど、それで近付くすべてのモンスターを捉えきれる訳でもなく、むしろ灯りがある事でイカ釣りよろしくモンスターを呼び寄せてしまわないかと不安でもある。


「えと、〈ムーンパフューム〉は有効でしょうか?」


 〈ムーンパフューム〉はモンスターの嫌がる匂いを対象にまとわせて近付かないようにする《月属性法術》のエキスパートスキルだ。

 ただし、《古式法術》お馴染みの効果減衰で効果時間は結構短いと分かったのだけどね……。


「魚に匂いなんて分かんの?」

「魚は鋭敏な嗅覚を持っておりますよ。鮫やピラニアが血の匂いを嗅ぎ分けている、と言うのは有名な話でしょう? 〈ムーンパフューム〉は有効の筈ですが……今回はそれよりも〈ファイアサーチ〉を使用しましょう」

「あ、なるほど」


 《火属性法術》のビギナーズスキル〈ファイアサーチ〉は一定時間モンスターの位置が判別出来るようになる。

 エキスパートスキルと違って色々と扱いやすいし、そう言うなら水の中でも有効なのだろう。


 あらかたの決め事を確認し合い、いよいよ私たちは桟橋の傍にまで移動させたボートへと乗り込む。

 まずはセバスチャンさんが慣れた様子で、続いてセレナが軽く飛び乗り、少しぐらついて慌ててバランスを取った。そして。

 ――ギシリ。

 天丼くんが乗り込んだ瞬間、ボートが大分沈んだ気がする。


「沈む前に沈めよ」

「何をだ?! やめろよな! いざとなったら鎧しまうから!」


 ある意味恐ろしいセリフをさらりと、先端にランタンを取り付けつつ言うセレナに背筋が涼しいです。

 最後となった私はセレナに手を引いてもらいながらおっかなびっくりでボートに乗り込む。


「さて皆さん、準備は宜しいですな。出航致しますぞ」


 船尾に備え付けられている箱型の精霊器に片手を添える、するとセバスチャンさんのMPが微減し水の中のスクリューが回転を始め、それに合わせてボートがゆっくりと前進を始めた。

 「「「おおー」」」と面白がりつつもちょっぴりビビりを含ませてその乗り心地を楽しむ私たち。

 ただ、ひーちゃんは見張りのつもりか先頭に立って(?)進行方向を睨んだりしている。がんばり屋さんである。

 まずはこれに慣れようと安全なフィエスラ湖内をすいすい〜と軽く周ってから、ブラノーラを目指して出発したのでした。


 どうも、047です。

 自分は今時まだガラケーを使ってます。パソコンの持ち合わせも無く、なろうへの投稿もガラケーから、ネットもひたすらガラケーから、です。時代遅れでしょうか。


 そんな自分の癒しの1つ、Pixivモバイルが3月31日を持って終了します(ガッデム!! なんて事だ!!)。

 パソコン版には繋げられるもののイラストは表示されませんのでPixivとはご縁が切れます。

 美麗なイラストの数々はこの作品のイメージソースとなった部分も大きいです。楽しい漫画や萌える(燃える)イラストの数々は疲れた時の清涼剤でした。

 それだけに一抹の寂しさが去来し、投稿日時が日時だけに(4月1日午前0時投稿なので前日に書いてます)後書きに書きなぐってしまいました。すみません。


 このままダラダラ続けるのもアレなので最後に一言。

 ありがとうPixivモバイル、さようならPixivモバイル(T-T)ノシ。



 スマホ……買うかなぁ……。

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