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第39話「ティータイムは花畑で執事さんと」




 セバスチャンさんとの約束があり、フロムエールを去る事になった私は、ここで出会ったルルちゃんにお別れを言おうとしていた。


「い、行っちゃう、んですか。アリッサお姉さん……」

「うん、約束があるから」


 ふにょんと犬耳を垂らすルルちゃん。


「それで、なんだけど……せっかくこうして知り合えたんだし、私とフレンドになってもらえない、かな?」


 私がそう言うと顔を上げて瞳をきらめかせて、頭をブンブンと縦に振る。かわいい。


『良かったねー』

「う、うんっ」


 妖精のケイさんと語らうルルちゃんとフレンド登録を済ませ、名残は尽きないものの私はポータルへと向かう。


「じゃあ、またねルルちゃん」

「はい……あの、その……」

「うん?」


 もじもじと指を弄るルルちゃんは、やがて気合いを入れて私を見る。


「あっ、ありがと、ございました。アリッサ、お姉さんがいなかったら……ケイちゃんとも、会えなかったから、ほんとに、ありがとでした」


 ペコリと腰を90度も曲げてお辞儀をするルルちゃん。私はパタパタと両手を振る。


「……ううん、気にしないで。私はちょっと知り合いに話を聞いただけ、後は全部ルルちゃんのがんばりが実を結んだ結果だよ」


 「えへへ」、ルルちゃんは照れながら笑う。『自分の事も褒めてません?』と言う誰かさんの言葉はスルーした。


「……また、会えますか?」

「もちろん、いつでも連絡して。すぐに駆けつけられるかはその時次第だけど。ティファも、またね」

『ええ、お元気で』


 こうして妖精の里での嬉しい再会と、思いがけない出会いは一旦幕を降ろした。

 いつかが、そう遠くなければいいなとぼんやりと思いながら。私はアラスタへと向かうのだった。



◇◇◇◇◇



 白い光が薄れると、そこはもう緑と白に溢れる街アラスタだ。

 フロムエールはかなり暗かったので街を照らす光る木の実が微妙に眩しかった。


「もし」


 空を見上げていたら、不意に横から声をかけられた。低い男性の声に導かれた先には相変わらず執事服を見事に着こなすおじいさんが、胸に手を当てながら軽く一礼していた。


「セバスチャンさん! すいません、遅れました」

「いえいえ、美しい女性との待ち合わせで『わたくしも今しがた着いたばかり』と言うのはわたくしの密かな夢の1つでしたので、どうぞお気になさらず」

「は、はあ……でもそうかしこまらないでくださいよ、もう」

「おお、これは申し訳無い。ですがこれは既に癖のようなものでして、果たしてやめようと思ったとてやめられるかどうか。ううむ、困りましたな」


 額に手を当て大仰な身振りで苦悩を表現しているセバスチャンさんに、思わず笑みが零れる。


「ほっほ、やはりアリッサさんには綻ぶような笑顔がお似合いですな、いや眼福眼福」

「も、もうっまたあ」

「ほっほ。ではそろそろ場所を移すとしましょうか、ここは落ち着いて話をするには少々賑やかですからな」


 それには全面的に同意する。いつの間にか結構目立っちゃっているし。


「では、不肖このわたくしめがエスコート役を務めさせていただきます。行き付けの喫茶店へご案内しようかと思いますがよろしいですかな?」

「お任せします。私は全然詳しく無いので」

「では」


 そうしてセバスチャンさんに促され、私は中央広場を後にした。向かったのは南大通りの脇道、割と狭く人通りも少ない。

 基本セバスチャンさんの歩幅の方が大きい筈だけど、こちらのペースに合わせてくれているらしく歩くのに苦は無かった。

 やがて脇道を抜けると、こじんまりとしたお店が姿を現した。


「ここですか?」

「ええ、時折紅茶を楽しみに来ておるのです」


 ドアを開けるとチリンと軽やかなベルが鳴る。


「いらっしゃい……あらセバスチャンじゃない。珍しいわね、週に2度も来るなんて」

「いやいや、この店の良さを広めたくなりましてな」


 数席ばかりのカウンター席の向こうにいたのは妙齢の……男性だった。野太い声や太ましい体躯、それと逆行する仕草、くるくるとロールする紫色の長髪、フリフリのエプロンドレス。濃い化粧。なんかすごい人だ。

 こう言う人に初めて出会った私はどうすればいいのか分からず、セバスチャンさんの陰に隠れていた。


「あら? そっちの可愛らしいコはツレかしら? ふぅん、アンタもいい歳して手広いわねぇ」

「ほっほ。いや、照れますな」

「え、え?」


 2人の会話に反応を返せずに戸惑ってしまう。おろおろ。


「ま、ずいぶんとまたウブだ事」

「魅力的でしょう?」

「好みによるんじゃなぁい?」

「あ、あのその辺にしておいてもらえません……?」


 こう話のネタにされるとさすがに恥ずかし過ぎる。


「失敬、そうですな。では改めまして、こちら『喫茶マリリン』店主のマリリンさんです」

「はぁ〜い♪ご紹介に与ったマリリンよン」

「こちらはわたくしの友人のアリッサさんです」

「ど、どうも、アリッサです」


 ペコリと挨拶をすると、マリリンさんがしげしげと私を見つめてきた。な、何?!


「はぁ、見れば見る程磨けば光りそうな感じがするわぁ〜。アリッサちゃんうちの店で働いてみない? ウェイトレス姿が映えそうなのよねぇ〜」

「い、いえ、そう言うのはちょっと……色々と忙しいので」

「あら残念。でも、その気になったらいつでもいらっしゃい、とっておきの一張羅を用立ててあ・げ・る♪」


 バチコーン☆とウィンクするマリリンさん。私の笑顔が強張ったのは言うまでもない。


「マリリンさん、個室は空いておりますかな?」

「あら密談? 空いているし予約も入っていないから構わないわよン。ハ〜イ、どうぞ」


 マリリンさんは胸ポケットから幾何学模様の彫り込まれた鍵をカウンターの上にスッと音も無く置いた。


「で、他にご注文はあるかしら?」

「本日のおすすめをお願い致します」

「ハイ、ご注文承りました〜。デートってなら張り切っちゃうわよ〜ン♪」

「ぶっ」

「ではアリッサさん、こちらへ。個室へご案内致しましょう」

「は、はい……」


 セバスチャンさんは鍵を受け取るやお店の奥へと歩き始めたので私もその後を追う。


「ごゆっくり〜」


 マリリンさんはそれだけ言って、後ろの棚から何かを取り出して作業を開始したようだった。

 私は軽く会釈をするとセバスチャンさんを追い掛ける。

 セバスチャンさんの向かう先には1枚の扉、表札には『関係者以外の立ち入りを禁ず』の意味の文字が、やけにピンクでポップに、更にはキスマーク入りで書かれていた。


「ここは?」

「常連のみ通される特別室です。少人数での話し合いにはうってつけでして、稀に利用しておるのですよ」


 カチャリ。小さな音が耳に届く。

 ドアを開けて中に入ると、そこにはシックな木製テーブルが1脚と椅子がいくつか。でも――。


「わぁ……っ、綺麗」


 そこはテラスになっていて、その向こうには庭園が広がっていたのだ。

 見た事のある物、無い物、色とりどりの花々が咲き乱れ、小動物や鳥が自然と集まり戯れる。それらを光る木の実が鮮やかに照らし出すその様は美しく華やかで1枚の絵画のようで、私の心をときめかせるには十二分に過ぎた。


「お気に召されましたかな?」

「あ、はい、とっても! すごいですね、ここ」

「この花々は全てマリリンさんが自ら各地を探索して入手された物だそうですよ。新しい品種の噂を聞けば世界の果てであろうと赴かれるとか。付いた二つ名は“フラワー・シーカー”マリリン姐さん」

「はあ〜、アグレッシブな方なんですねえ」

「うっふん。その程度は普通よ、フ・ツ・ウ」


 振り返れば台車を押してマリリンさんが室内に入って来た。

 台車の上にはティーセットが2人分、そしてケーキが乗せてあった。とても美味しそうなのが。じゅるり。


「折角こんな圧倒的なリアリティのファンタジー世界で好き勝手に出来るのよぉ? 妥協なんてしてたら勿体無いったらないわ。そう思わないセバスチャン」

「ほっほ。いや、全く。マリリンさんの姿勢には感服いたしますな。わたくしも早く執事ロールをしたいものです」

「今でも結構……」


 会話の最中でもマリリンさんはテーブルにセットする手を止める事は無い。


「さ、ワチシのガーデンに見惚れてばかりいないで、今度はこの紅茶とケーキにとろけなさいな」

「あ、はい」

「どうぞお座り下さい」


 セバスチャンさんがスッと椅子を引き、私が腰を降ろすと音も無く椅子を押す。位置はぴったりと私に合わされていた。

 初めて会った時と言い、手慣れてるなあ。


「いつもすみません」

「いえいえ。わたくしはこうした事をするべくプレイしているのです、むしろご褒美ですな」

「アンタもアンタで大概な趣味してるわねン」

「お褒めに与り光栄の至りにございます」


 軽妙なトークの間に仕度が終わり、私とセバスチャンさんは向かい合って座っていた。仕事が終わるとマリリンさんは台車を押して去っていった。


 手には湯気の漂うティーカップ。その香りをしばし楽しむ。


「いい香り……」


 カップを傾ける。舌に苦味と芳醇な甘さ、濁りの無いそれは爽やかで飲みやすい。


「はあ……」

「このお店で出される紅茶は現実のどの紅茶とも違う、この世界の特産の物ばかりだそうです。どれも多少クセはありますが飲み慣れますと中々どうして、次はどのような紅茶かとまた訪れてしまいましてな。気が付けば常連となっておりました」

「分かります」


 そしてこの庭園から風に乗って運ばれる花の香りがプラスされ、尚強く印象に残る。


「……して、先程の件ですが」

「ああ、はい。……どこから話そうかな……」


 先程の件、私が帰宅しなかった事でマーサさんが心配していた件だ。

 マーサさんのお家に居候する事になってから一昨日まで、毎回ログアウトは自室からだったし、それが音沙汰も無く外泊してしまったものだから心配させてしまった。それを聞いたセバスチャンさんが気に掛けてくれた、と言う話。


 でも、昨日既に私は帰宅しているからその事を話せば一応は済む話、なのだけど……。


(でもやっぱり、心配してくれた人に対して『もう帰宅しましたのでご心配無く』だけで済ませては失礼だよね……)


 そう思う。


「あの、実は……」


 だから話そうと思う。それに今後も外泊の機会はありそうだから、きちんと話さないとセバスチャンさんも安心出来ないかもしれないもの。

 ステラ言語を学んでいた途中に7つの加護を失い、新たに1つ取得した事、それにより弱体化して精神的に思いっきりへこんだ事、そこをセレナに助けられた事までを話していく。


「……そんな訳で一昨日は帰宅出来なくて」

「そのような事が……ご苦労なさったのですな」

「でもお陰で大切な事を教えてもらえましたから、今はもう前向きで行こうって思えてます」

「そうですか。ご友人に恵まれましたな」

「はい、本当に。それに昨日はちゃんと帰ってマーサさんにも謝りましたからもう大丈夫ですよ、ご心配をお掛けてしまってすみませんでした」


 頭を下げる。


「おお、頭をお上げください。こちらこそ出過ぎた真似を致しました。申し訳ありません」

「いえ、セバスチャンさんはマーサさんも私も心配してくださっただけなんですから、気にしないでください」

「ありがとうございます。ふむ。では、一昨日の件は心配無用。こちらの無作法も気にせずともよい、となればこれで互いに遠慮は無し、としてよろしいですかな?」

「そう言ってもらえると助かります」


 それからしばらくは私たちは紅茶とケーキを静かに楽しんだ。時々交わされる会話も他愛の無い事。どの花が好きか、昼間にもまた来たい、2人だけで楽しむのは贅沢。そんな程度。


 チリーン。


 私が一息吐いているとセバスチャンさんはテーブルの脇に置かれていた小さなベルを鳴らした。程無くマリリンさんがやって来た。


「紅茶をお願いします」

「同じ物でいいのかしら?」

「……いえ、『ムーンドロップ』を」

「ええかっこしいねぇ」

「老いさらばえましたが、これでも未だ男ですので。良い格好の1つや2つはしますとも」

「?」


 少ししてマリリンさんが新しいティーセットを持ってきた。その中の紅茶はさっきの物より少し色が深い。


「ごゆっくり」


 部屋を出るマリリンさんに会釈を返していると、セバスチャンさんが私に紅茶を勧めた。


「少々以上にアリッサさんの美しい声を聞けたのは僥倖でしたが、やはり話し疲れましたでしょう。どうぞ、味は保証いたしますよ」

「は、はあ? ありがとうございます」


 入れたての紅茶に一口含む。


「……あ、美味しい」

「そう言って頂けるのは嬉しい限りですな」


 広がるのはまろやかな味わいと強い薫り、それは意識の外にあった疲労さえ消し去って、私の喉を、体を温めていった。


「くすっ」

「どうかされましたかな?」

「いえ、何だか力が湧くなって思っていたら、本当に湧いていたものですから……可笑しくって」


 視界にはステータスが一時上昇した事を示すアイコンが瞬いていた。


「効果が高い証ですが、情緒が無いのはマイナスですな。わたくしとした事が……格好をつけ損ねました」


 それが余計におかしく、少しの間私は背を曲げて笑いの波が去るのを待たなければならなかった。


「ごっ、ごめんなさい。壺に入ってしまって……」

「ほっほ、いいのですよ。貴女の笑顔を見られる以上の褒美など中々に見つけられませんからな。役得役得」

「ひ、人をからかわないでください……いっつもいっつもー」


 伏し目がちに文句を言う。効き目は……期待しない。


「おお、失礼しました。からかっていたつもりは全く無かったのですが……ううむ、如何にすればこのたぎる想いを言葉に出来るものやら」

「しなくていいですっ!」


 それに対して真剣に悩み始めるセバスチャンさんを宥める。すると一転、にこやかな笑みに変わる。


「ほっほ、少々はしゃぎ過ぎましたな。どうもアリッサさんといると気持ちが若くなってしまうようです」


 若くなるとこんなセリフを使うようになるなんて、セバスチャンさんって昔は女たらしだったりするのかな……。


「時にアリッサさん。これからのご予定をお伺いしてもよろしいですかな?」

「あ、はい。はじまりの草原で件の加護をレベルアップさせながら王都を目指します。さすがに加護の数が足りませんから、王都ならキャラメイク時に取得出来る加護も手に入ると聞きました、体勢を整えるならまずは向かうべきかなと」

「成る程、理に適っておりますな。道中はお1人で?」

「まさか、と言うしか無いのが情けないですけど……セレナと一緒に、今日からは天丼くんも参加してくれるみたいです」

「ほっほ、それは賑やかな旅路になりそうですな」

「苦労を掛けてばかりですよ」


 うんほんとに。


「ふむ。では、その苦労をわずかばかり減らす方法を1つ、お教えいたしましょう」

「えっ、そんな方法があるんですか?!」


 セレナたちの負担を減らせるのなら是非知りたい。

 表情に興奮の色を見て取ったのか、セバスチャンさんは苦笑しながら話を再開した。



「この老骨めをパーティーの末席に加えてみてはいかがでしょう」



 にっこりと微笑むセバスチャンさん。そして驚く私。


「え、えええぇぇぇっ?!」

「おや、そんなに驚くような提案でしたかな?」

「だ、だって……この旅って旨味とか全然無いじゃないですかっ!? 基本私の加護のレベル上げの手伝いですよ、はっきり言って骨折り損のくたびれ儲けみたいなものですよ?!」


 自分ではそんな感じに思っていたらしい。本音って咄嗟に出るよね。


「ほっほっほ。別段わたくしはトッププレイヤーを目指している訳で無く、金策に執心してもおりませんよ」


 あー、確かに趣味に生きてる感じですよねセバスチャンさん。


「何より、思うのです。骨を折ってもくたびれるだけではありますまい」


 そこでどうしてか少しだけ言葉を溜める。



「皆さんと一緒なら楽しそうではありませんか……そこに、わたくしも混ざって遊びたいのですよ」



 そう言うセバスチャンさんの顔はどこか幼げで、何だか子供のようで、私は虚を衝かれて呆けてしまった。


「……アリッサさん?」

「あ、ごめんなさい。えと……セバスチャンさんもそんな顔するんですね。無邪気って言うか。ちょっと意外でした」


 普段は大人(実際この上無く大人なのだけど)で理知的な人なものだから、さっきのような顔にはギャップを覚えた。


「う、ううむ。これはお恥ずかしい……“男は年を重ねても中身は子供だ”などと聞き及びますが、いざ自分が言われると違うものですな」


 珍しい事に、いつも微笑を浮かべ余裕しゃくしゃくなセバスチャンさんが狼狽えていた。

 ソワソワと落ち着かない様子のセバスチャンさんが、失礼ながら少し可愛らしかった。


「ふふっ。良いと思いますよ、そう言うセバスチャンさんも」

「恐縮です」


 互いに小さく笑みを交わし合いながら、私は少し黙考する。


(あ……楽しいな。うん、楽しい、でいいんだよね)


 そう、こうしておしゃべりで笑い合う時も、一緒に戦う中で得る何かを実感する時も、楽しい。

 だってここはゲームの世界。“楽しむ為の場所”、みんなが関わって“楽しくなる場所”、私だって誰かを“楽しませられる場所”。

 そこにはもちろん損得だってあるけど、絶対じゃない。それは一昨日も昨日もセレナがずっと教えてくれた事。

 今回もそうなんだ。


(私と、セレナと、天丼くんと、セバスチャンさん。みんないたら、きっと楽しい……セバスチャンさんも同じように思ってくれてる。だから一緒に行きたいなって言った)


 なら、理由はそれだけで十分。迷惑を掛けるのを気にするくらいなら、骨折り損にならないくらい楽しい旅路にすればいい。


「……あの、セバスチャンさん」

「はい、何ですかな?」

「フレンドになった時言っていましたよね、『いつか皆さんと一緒に冒険へ行ってみたい』って」


 それは別れ際の、ちょっとした会話の一文。約束ですらないけど、よく覚えていた。


「確かに」

「私もです」



「私もみんなと一緒に旅を、冒険をしてみたい。足手まといで役立たずな私ですけど、それでも構いませんか?」



 それを聞いたセバスチャンさんはいつもよりも深く、笑みを浮かべていた。


「……もちろんですとも。以前わたくしはこうも言った筈ですよ。『お守り致します』と、『望む所』と、既に承知の上ですとも。どうかお気遣い無く」


 そう言うと握手を求められた。ちょっと戸惑うけど、私も右手を差し出した。

 キュッ。

 私の手を握ったセバスチャンさんの手は、私よりずっと大きく、優しく、頼もしい。セバスチャンさん自身を表しているかのよう。


「アリッサさん、これからよろしくお願い致します」

「こちらこそ。よろしくお願いします、セバスチャンさん」


 こうして、心強い仲間がまた1人加わったのでした。


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