第36話「2つの力と、2人の力で」
“はじまりの街”アラスタを十字に貫く大通り。その内の1つ、南大通りはこの国の王都へと通ずるはじまりの草原に繋がっている。そして草原と街を隔てる為に存在する巨大な南門、私はその門の脇にぽつんと1人、立っていた。
ショップが林立する都合上、割合通る方ではあったけど、1ヶ月前のプレイ初日以降この門を通り抜ける事は遂に無かった。
そう、今日までは。
今日私はこの先に広がるはじまりの草原の攻略に乗り出す。これは東西南北に存在する4ヵ所のはじまりのフィールドの最後の1つであり、強くなる為の第一歩であり、何より連れ立っての旅路なのだから気合いだけは入っていた。
「ふう……」
……だと言うのに……。
周囲からの視線が、時折こちらを射抜く。向こうはチラチラと瞬き程度の間、見ているだけのつもりかもしれないけど……見られる側からすると分かるもので、目を合わせないのにも結構気を使っていた。
現実の私は目立つような顔立ちではないので、待ち合わせでぼーっとしていても注目された試しは無かった。
その感覚のままでいたらこの有り様。
(この前、いつも早く着いていると言われたけど、容姿の違いを自覚してなかった……)
数日前までならせいぜい初期装備なりが珍しいからだとか考えたかもだけど、もう私はアリッサの容姿がどんなものであるか知っている。
自分で言うのも酷く自賛でアレなのだけど……アリッサは綺麗なのだ。凄く。今まさに中身とのギャップが有り過ぎて対応に苦慮する程に。
クラリスやセレナを始めとして、基本整った容姿の女性PCが多いのはゲームである故かもしれないけど、アリッサのそれは更に頭一つ抜けて見えた。
そんなのが何をするでも無くぼーっと突っ立っていたら、周りとすれば気にもなるのかもしれない。
(居づらい)
行動がいつも通りで結果がこうも違うと、どうにも反応に困る。
ゲーム再開初日のナンパ紛いの行為に遭った経験から、こう言う場合の知らない人とのコミュニケーションに一抹の不安が残っていた。
(話し掛けられないだけまだマシなのかなあ……)
高揚していた気分に水を差されていた。こんな目に遭うのならいっそ鎧兜で顔を隠そうかと現実逃避に足を突っ込みかけていた私の耳に、私の名を叫ぶ誰かの声が喧騒の中からでも届いた。
「アリッサーッ!」
ブンブンと手を振りながら人ごみをかき分けて姿を見せたのは、このMSOでの最初の友達であり今日から一緒にパーティーを組むセレナだった。
その姿を見てほっと安堵の吐息が零れた。
「ごめん、待った?」
「ううん、私が早かっただけだから気にしないで……って、言うか来てくれてありがとう〜」
感動のあまり力一杯セレナの手を握る。
「は? 約束したんだから当たり前でしょ。なんでそんな泣き笑いになってるワケ?」
困惑するセレナに事情をかいつまんで説明する。前に強引な勧誘を受けた事、容姿の差異があり衆人環視に慣れていない事をかくかくしかじか〜、と。
「――そんな感じだったのです」
「アンタどんだけメンタル弱いのよ。アリッサのビジュアルならそれくらいついて回るコトでしょーが」
「ハァァ〜ッ」と長〜いため息。呆れられてしまった……。
「なら、いつまでもここで話してるのも……」
そう喋ったセレナと私の間に影が割り込んだ。
「ごめん、君たち少し時間いいかな?」
「……何?」
にこやかに笑いながら話し掛けて来たのは高級そうな(私からすれば大概の人がそうなのだけど)装備をまとった騎士風の男性だった。髪や肌に特徴が無い辺り、種族はヒューマンかな?
以前の失礼な人らとは違って丁寧な物腰のようだけど……。
そんな相手にセレナは興味無さそうに白けた返事をする。私は反応に困り、男性とセレナを交互に見るばかり。
「君たちは……2人だけかな?」
私たち2人に、そして左右に目をやってそう尋ねてくる男性。
あ。もしかして今まで私が話し掛けられなかったのって、待ち合わせの相手が分からなかったからなのかな?
それで来たのが女の子だったから声を掛ける事にしたとか……?
「だったら?」
「僕たちのパーティーに誘いたいんだ」
割と長身の男性はチラリと後ろを振り返る。そこには3人の男性がこちらに、と言うか男性に頻りに「そこだ、いけ!」「お前のルックスなら勝つる!」などと、若干抑え目のボリュームで声援を送っていた。
……まあ、確かに彼らの中では目の前の男性の容姿が一番整っているかもしれない。
「ご覧の通りの男所帯でね、君たちみたいな綺麗所がいると皆張り切るんだ。失礼の無いようにするつもりだけど、どうかな?」
「遠慮するわ」
「はは、そうか。はっきり言ってもらえると諦めもつくよ。時間を取らせて悪かったね」
すげなく断ったセレナに嫌な顔も見せずに男性は引き下がった。後ろの3人に合流すると肩を竦め、3人がガックリと意気消沈していた。
「ふう……何事も無くて良かった」
「こっちが普通なんだっつの……ま、注意するのは必要だとは思うけどさ。必要以上に過敏になると余計に目立つんじゃない?」
……ああ、前に花菜にも言われたんだよね。『超然としとけば近寄らない』とかなんとか。
でも、やっぱり人の目は気になって、そうしたらなんだか周りの視線が怖くなっちゃうんだよね……だから私にそんな真似は……。
「うう……やっぱりフードで顔隠そうかなあ」
新緑の外套にはフードが付いている、それに手を伸ばそうとすると……。
「バカ言ってんじゃないわよ!!」
と、セレナは大声で叫んでその勢いのまま私の両肩を掴む。訳が分からず驚く私に顔を近付けると力強くこう言った。
「アリッサが顔を隠すとか誰得?! せっかくこんなビジュアルゲットしたんだから磨かないでどうすんの! むしろここはこの上無く可愛くして、周囲に『あの子に手を出したらただじゃおかねぇ』的な雰囲気を作り出す方が牽制になっていいっしょ!」
「なんでそんな発想に至るかな?! ひっそり目立たなくしておいた方が波風立てずにすむよう」
「シャラップ! 隠すのにだって限界があるっての! そしてアリッサは限界を軽くすっ飛ばすレベルだと私の直感が告げてんのよ。だから私はアリッサの魅力を引き出したくてウズウズしてんの、諦めて私に料理されときなさい!」
「途中からセレナの願望にシフトしてるない?! あ、まだ着せ替え人形代わりにしたいとか思ってないでしょうね!?」
「ピスーピスー」
「口笛吹けてな――――」
そうして口論(?)を繰り広げていると周囲の視線が一段と増えている事に気付く。
「あ、う」
「だーから、そんなんじゃ余計に……はぁ。ま、すぐには無理か。行くよアリッサ、時間が勿体無い」
すごく今更な気もするけどその通りなので私たちはそそくさと歩き出す。ああ、恥ずかしかった。
「そんなオシャレ始める辺り、ちょっとは見られるのを意識したかと思ったのに」
「こ、これはマーサさんから貰ったの!」
「へぇ、良かったじゃん。似合ってるよソレ」
「そ、そうかな?」
途中でお店の窓ガラスで見たりしたのだけど、生憎と正面からではどんな感じか分からなかった。
でもオシャレに厳しそうなセレナからもそう言ってもらえるのは嬉しい。
「だから早くそれに見合う服をゲットしに王都に行こー、おー」
「やっぱりそこになるのー?!」
などとかしましく、私たちははじまりの草原へと向かうのでした。
◇◇◇◇◇
門を出ると100メートル程は芝生の原っぱがこのアラスタの周囲をぐるりと囲んでいる。私たちはその向こうに広がる草原の前で話し合っていた。
「そう言えばアレ、さっき話してたスペルカットの情報はどうだった?」
「うん、ネットのサイトを見回ったら見つかったよ」
私は覚えておいた情報を報告していく。
「えっと、古代語で書かれた呪文書を解読する事でエクストラ修得する法術があるみたいなんだけど、どうも《古式法術》と同じようにスペルでしか発動しないんだって」
以前〈言語解読〉をエクストラ修得した際に花菜に古代語の事を聞いて、古代語から得られるスキルもあるかもとそれらしい事を想像していたものだけど、まさかそのものずばりだったので驚いた。
「古代のスキル、ねー。そりゃ《古式法術》ともぴったり重なるわ。それで《詠唱短縮》との組み合わせが発見されてた、ってワケね?」
「そうみたい」
分かったのは以下の通り。
・スペルカットに登録した法術の消費MPは+100−レベル%される。
・同様に再申請時間は+100−(レベル×2)%される。
「……つまり、MPが2倍だったのは四捨五入した数値だったワケね」
「うん。少なくともMPも再申請時間も、セレナの言ってたようにレベルアップで減らせるのは確かみたい」
「っしゃあっ! それを聞いたら気合いも余計に入るわね!」
そう言って、セレナは眼前に広がる草の海を挑発するように睨み付ける。
「さってと、確認しとくよ。まず今回の目的は攻略じゃなくてスキルの使用に慣れる事。具体的にはとちる事無く素早く詠唱出来るようにするのと、スペルカットをガンガン使って《詠唱短縮》のレベルを上げてく事なワケ。その為って事で《杖の心得》は後回しにするけど、OK?」
「う、うん。分かった」
〈コール・ファイア〉を使わない、って事はダメージは減っちゃうけど、それだけ攻撃回数が増えるから経験値も入りやすいもんね。
「モンスターの攻撃は出来る限りガードするつもりだけど、本職じゃないから過信はしないでよ。最低限注意は配っといて」
「りょ、了解」
草原は時々風が草をざわざわと揺らしていた。それに触発でもされたように、いよいよだと私の心もどこかざわついていた。
「……深呼吸」
「すはーすはー」
「緊張は解けた?」
「……なんとか」
まだ多少は、だけど。
セレナは大鎌をまるで重さなんて感じさせないくらい自由自在に振り回しての準備運動に勤しんでいる。
「じゃ、行こ。まずはデカくて狙いやすいボアからにするからそのつもりでね」
「ボアか〜、なんだか懐かしいな」
実に1ヶ月ぶりとなる草原は、多少高さのある文字通りの草の原っぱに時折岩があり、その中央を石が敷き詰められた幅広の街道が彼方まで続く見晴らしの良いフィールド。はじまりのフィールドの中でもっとも戦いやすいからクラリスも最初にここに私を連れて来たんだろうな。
「ああ、一度来てんだっけ。じゃ細かい説明は省いていい?」
「えと、うん。多分大丈夫だと思う、取扱説明書にも簡単に書かれてるしネットも覗いてるもの」
以前に何度も戦ったボアは猪のモンスターで鋭い角や勢い良く突進を繰り出す。ダメージは大きい反面攻撃は直線的で回避しやすい(前はクラリスがガードしてくれたから躱した事無いけど)。
その事を頭に入れておけば咄嗟の対処は可能……と思いたい。
私たちははじまりの草原へと踏み出し、サクサクと草地を進む。街道は歩きやすいけど、代わりにモンスターはあまり寄り付かない。楽は楽だけど今回はむしろ突発的な戦闘にも対応出来るようにならなきゃいけないので街道は避けていた。
「お、いたいたっ。アリッサ、まずはアイツにしよ」
声を上げたセレナが指差す先にはノッシノッシとゆっくりと歩くボアが1匹。
「う、うん!」
《古式法術》になって大きく変化した事があった。以前は複数の加護のレベルがあまり離れないように各加護のスキルをローテーション(火水風土光闇火……)を組んで使っていた。
7つの加護が《古式法術》1つに統合された今ではスキルの順番も回数も気にする必要は無くなってるから、スペルカットとカウントカットに登録したスキルをメインにして使っていく予定。
「じゃ、まずはスペルカットに登録したヤツからね」
「うん、分かった。“火の一射”」
火の球の生成と同時、視界内にスキル名と2種類のカウントダウンが表示される。加護が1つになり、次のスキルの使用に正確な時間を計らないといけなくなった為にRATリストの機能である『RATビジョン』をオンにしたのだ。
はじまりのフィールド第1層のモンスターはこちらが接触しない限りは攻撃してこないので焦る事無くカウントが0になるのを待つ。
「“汝、虹のミスタリアの名の下に我は乞う”“我が意のままに形を成し、魔を討つ風の一欠を、この手の許に導きたまえ”。“其は、彼方を撃ち抜く一塊なり”。“吹け、風の一射”」
言われた通り間違えないように心掛けてスペルを唱える。
(基本的には殆ど同じ文章だし、そこまで難しくはない、かな? ……前は12連続で順番にスキルを唱えなきゃいけなかったし、それを考えれば……うん、何とかなりそう)
とちる事も無く発動に成功し、杖の先に異なる2つ目の光球が生成される。待機状態に出来るのは1つだけなので〈ウィンドショット〉はターゲティングしていたボアにすぐさま飛んでいく。
私はそれに遅れないように、杖の先に今も出番を待つ〈ファイアショット〉を解き放つ。
「リリース」
燃え盛る火の球が、風をまとった光球を追い掛け、まったく警戒していないボアのわき腹目掛けて激突すると同時に盛大に弾けて光を散らす。
「ブヒッ?!」
巻き起こるつむじ風と燃え上がる爆炎が起こした衝撃にボアがよろめく……けど倒れるような事は無く、四肢に力を込めて踏み止まった。
攻撃を放った私への怒りに爛々と瞳を輝かせて睨みつけるボアは、前傾姿勢となって後ろ脚で地面を荒々しく蹴り始める。あの動きは……突進!
「来るわよ、私の後ろに隠れてて」
「う、うんっ」
「ブヒィィッ!!」
指示通りにセレナの後ろへ身を隠す。ボアはそんな私へと一直線に突っ込んできた!
「よっと」
あれだけの勢い、あれだけの巨体、けどセレナは大鎌を盾代わりにして危なげ無くボアの突進を凌ぐ、HPも殆ど減っていなかった。
「わ、さすがセレナ」
「いやこれくらいレベル差考えれば当たり前だから」
そんな談笑の間も絶え間無く地面を蹴立てていたボアがその動きを止めた。あれは――?!
「セレナ、前!」
「だいじょーぶだいじょーぶ、下がってて。ハッ!」
ボアがその鋭い牙での振り払いを仕掛けてきた。左右に首を振り近くの相手を攻撃するものだけど、セレナはその直前に後方へジャンプして回避した。
1歩、2歩、3歩と軽やかにステップを踏んで、先に離れていた私の側に近寄るセレナ。戦い慣れてるなあ。
「ホラ、ぼけっとしない。またボアが来るから受け止めてる間に追加で仕掛ける!」
「あ、うん!」
視界内、2段目の再申請時間が0になったのですかさずスペル詠唱に移る。その間も攻撃してくるボアをセレナはガードし続けてくれる。
「“汝、虹のミスタリアの名の下に我は乞う”“我が意のままに形を成し、魔を討つ土の一欠を、この手の許に導きたまえ”。“其は、彼方を撃ち抜く一塊なり”。“轟け、土の一射”」
今度はカウントカットの〈ソイルショット〉を先にする。
短縮されてる再申請時間が0になる直前にセレナに合図を送る、タイミングを見計らい〈ウォーターショット〉を唱える。
「“水の一射”、リリース!」
2つのスキルによる攻撃がボアに命中するも、やはり倒し切れない。HPの残量からして後2発当てればギリギリ何とか倒せると思う。
「ごめんセレナ、もう1回!」
「任せて、その為に私はここにいるんだから……でも、なんかコイツ相手にこうまで苦戦してると、最初の頃に戻ったみたいよね」
「今の私にはその例えはきついよー」
再申請時間の間には軽いおしゃべりが交わされる。ボアは何度となく攻撃を繰り返しているものの、そのことごとくをセレナは防ぎ切る。
本職じゃない、なんて言っていたけど、その姿は初日に私を守り続けてくれたクラリスと同じくらい頼もしい。
セレナに守られているうちに再申請時間は瞬く間に過ぎ去り、再び火と風の組み合わせでの攻撃する!
「タイミング外さないようにね。いくよ……3、2、1、今っ!」
「“火の一射”、リリース!」
ボアを押さえ付けていたセレナが横に飛ぶ。ボアは突進を再開しようとするも、鼻先には私の杖が待ち構えていた。
その杖の先から放たれた2つの光球がボアの顔面を弾き飛ばす。セレナが止めていた事もあってボアは勢いも無くよろめきながら2、3歩進むとずしゃっと前のめりに崩れ落ちる。
「ふう……良かった、倒せた」
「やったじゃん。最初にしちゃ上出来」
掲げた2人の右手が心地よく打ち鳴らされる。
「最初、かどうかは微妙だけどね。でも上手くいって良かった」
「じゃ、この調子で行こ。さって、獲物ー出てこーい」
「あ、ちょっと待ってよー」
大鎌を振り回しながら進むセレナの後をアヒルの子供みたいについていく。それがやけに可笑しくて、いつの間にやらくつくつと笑ってしまっていた。
「ちょっとー、何笑ってるワケ?」
「あ、うん。何だか――」
「――何だか、楽しいね」
昨日の最低な戦闘を味わったからこそ今、そう思う。1人じゃない。それがすごく、楽しくて嬉しくて、とってもとっても幸せだから。
そう言うとセレナは目を逸らしてしまう、でもその顔は隠し切れないくらい口の端がむずむずと上向いていた。
ぱすんっ。不意に背中を叩かれ、私は軽く咳き込む。
「ケホ」
「あ〜、あ〜……ったく。何を、今更」
「……そだね」
確かに、本当に、今更だった。もう私たちは2人いれば楽しめるようになっている。だから、今更。
互いにそっぽを向きながらの笑い合いはセレナ言う所の“獲物”を見つけた事でおしまいとなった。
「よっし! 行くよアリッサ、次の準備はいい?」
「もうっ、すぐに出来ないの知ってるくせに! 待ってよセレナー!」
駆け出したセレナを追い掛ける。目標はすぐそこに、近付いても反応が無いのはいつもの事。
「“水の一射”」
短い詠唱を終えれば、杖の先には水の球。溢れる光は昼間とは言え私の肌を青く染め、照らし、ほんのりとした涼やかさを感じさせる。
それを確認した私たちは頷き合い、視線は正面の猪へと固定される。
そっと手を触れた胸は高鳴ってる。
(緊張してる? それとも……高揚してるのかな?)
深く静かに吐き出す息の後、綻ぶ唇がその答えだと思えた。
「“汝、虹のミスタリアの名の下に我は乞う”“我が意のままに形を成し、魔を討つ土の一欠を、この手の許に導きたまえ”。“其は、彼方を撃ち抜く一塊なり”。“轟け、土の一射”、リリース!」
そうして私たちはまた前へと歩く、進む、走り出す。
くるくると軽やかに舞うように楽しげに、連なって飛び立つあの橙の土球と青い水球みたいに。
どんな壁だって打ち砕ける力みたいに、私たちは駆け抜けていけるんだ。




