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第133話「パワー・オブ・フレンズ」




『ガッデム! アリッサゴメン、バレちゃった!』


 私の代わりに囮として逃げ回っていたセレナからのチャットがそう謝ってくる。

 見破ったミリィが喧伝した事で、追っていたPC集団の大半が煙に巻いた私の探索へと移り、どうにか逃げられているらしい。


「大丈夫、フィンリーとの話はもう済んでいるから」

『そう、良かった……それで、向こうさんはなんて言ってたのよ。やっぱログアウトしろって催促?』

「ううん、逆。逆だったよ、セレナ」

『あン?』


 フィンリーからの話をセレナにも伝えると、最初こそ疑っていたものの、やがて面白そうに声が弾む。


『ふーん、なるほどねー……ならフィンリーが妹を連れて来るまで逃げ回っとかなきゃって話ね』

「そうだね。けど、遠からず見つかっちゃうと思う」

『私らが止める、ってのも無理か。チッ、やっぱ物量差がどうしょもないか』


 セレナが言う通り、今も大勢のPCたちが行方を眩ませた私を探している。

 服装も髪の色も変えているけど、どちらも変更可能である事は知られているだろうし、ミリィならばアビリティで突き止める事すら可能だろう。


『言っとくけど、こっちからは迎えにいけないわよ。今もそれなりの数に追われてんの! アイツら完全に私らを分断するつもりだわ!』

「そうらしいね……」


 ここから見えるだけでも、私に扮したセレナが何人かのPCに追われているのが見てとれる。

 セレナがそうならセバスチャンさんも同様だろう。こちらに来れば居場所を報せるだけになる。


「どうにか1人でやってみる。セレナたちは――」

『こっちはこっちで暴れ回って人数割かせてやるわ! 私を相手にした事後悔させてやる! バーカバーーカッ! あ、アリッサに言ったんじゃないからね?』

「――うん、ありがとう。私も負けない、がんばるよ」


 勇ましくそう豪語するセレナとのチャットを終え、私は人通りに紛れて歩き出す。


「ティファ、ひーちゃん、ポシェットから出ないように気を付けてね」

『むう。仕方ありませんね、今回だけですよ』

『キュ〜……』


 私は変装しているけど、さすがに2人は目立つ。

 いずれ見つかってしまうにしても、再申請時間が完全に終了するまではどうにか――。


「すみません」


 ――ドキリ。

 背後から声を掛けられて心臓が高鳴る。


(見つかった……? いえ、それにしては騒ぎになっていない……)


 私は内心の同様を悟られぬように、なるべく顔を隠しながら振り向く。

 そこにいたのは見知らぬ女性。彼女は(アリッサ)を探しているらしく、掲示板で拾ったらしいフォト画像を私に見せてくる。


「この女性を探しているんです。見ませんでしたか?」

「……い、いえ……」


 幸いか、特徴の大半を変えている私に気付いた様子はなく、道端のティッシュ配りよろしく目についた人に尋ねて回っているらしい。

 私は怪しまれない程度にそそくさとこの場を後にする。

 ……いえ、後にしたかった、かな。


「――ゼッ、ハッ、鏡を見た経験は、無かったのですか?」


 ――ダッ!

 聞こえた荒い声に、考える間も無く駆け出した。


(再申請時間が終わっていないのに……まだ、早い!!)


 周囲からわっ!! と明らかに私の対応力を超える数のPCが群がってくる!


(マズいっ!!)


 想定した以上に早く発見されてしまい、私は足をもつれさせながら走るのだけど、上下なんて無いかの如く駆け抜けるPCたちを超えられる筈が無く、ひと呼吸を待たずに私の周囲は見知らぬ、それでも目的だけは確定的に明らかなPCと、サーバントと、ファミリアたちに囲まれてしまう。

 そして眼前に立ち塞がるのは黒いその姿――。


「チェックメイト、なのです」

「っ」


 唇を噛む。せめて後少し、もう少しだけでも時間を稼げたのなら、と悔しさに噛まずにいられない。


(まだ、まだだ……後少しで、あの子が来るんだ。やっと、ずっと、望んでいた展開になるんだ。なのにここで、今ここで、諦めるなんて選択肢を選ばされてたまるもんか!!)


 ギシリと歯が鳴った。


「詰んでいると理解して、もう諦めるのです」

「…………嫌」


 懐からセバスチャンさんから貰った小瓶を取り出して、それを髪へと吹き掛ける。

 端から瞬く間に元の金色を取り戻していく髪を、吹き荒ぶ風が煽る。

 システムメニューを操作し、光が私を包む。それが収まる頃には――私の身にまとうのは白く輝くドレスかと見紛う百合の名を持つ装備。

 少しでも強く強く、在れるように――!


「チェック、だとは思う。けど、チェックメイトじゃない。私が諦めない限りはチェックメイトだなんて言わせない……だから! チェックメイトなんてあり得ない!!」


 数え切れない程の味方を背に佇むミリィを前に私は決意を込めてそう宣言する。

 その私の言葉に周囲がざわめく。おののくまでは行かなくても、迷うくらいはしてもらえたら御の字か。


「っ……は、はは」


 そんな中でミリィが笑う。

 堪えても吹き出してしまうかのような笑い方。お腹を抱えて、顔を覆って、笑っていた。


「本当に、バカらしいのです。貴女は本当に――らしい。だから、私も……」


 何かを言いかけて……しかし、次の瞬間にはもうその面影は無く、ただまっすぐな目で私を見据えている。


「だから私はそれに、今すぐ最後の一手を差してあげるのです。まだここからでもどうにかなるのですかね?」

「だから! どこまでだって諦めないって言ってる!! 諦めなければ、きっと――」



「その意気や良しッッ!! ですわッッ!!!」



 ――きぃんっ!!

 ざわめきを掻き消す程の大音声(、、、)が、この場にいる全員の動きを止める。

 誰も彼もがその声の主を探し、四方八方へと視線が逸れる。そしてそれは眼前にいるミリィもそう。あるいは、彼女だからこそ必死にその姿を探したのか。

 私もまた、そうしたかった者の1人ではあったけど、生憎と好機を前にして手放せる程の余裕がある訳も無く、わずかな隙を突いて駆け出した。


「オイ! 彼女が逃げるぞ!」「包囲網何やってんのよ!」「そっちが言えるセリフですかっ?!」


 無論、私が逃げ出したならすぐさま気付かれてしまう。それでも先程よりはマシだと進み続けるも眼前には軽装の女性が立ち塞がり、私へと手を伸ばしてくる。


「女同士なら、多少の身体接触でもハラスメント判定にはなりにくいってね!」

「っ、それでも諦める理由が無いっ!」

「盛り上がっている所失礼」

「「?!」」


 互いに虚を突くタイミングで、軽装の女性の突き出した手と私の肩が別の誰かに掴まれる。

 その手は私を引き寄せ、対して軽装の女性の手をあらぬ方向へと誘導する事でバランスを崩し、次の瞬間には自身の影に私を隠す。


「貴女は――鳴深、さん!?」

「ええ。お久し振り、と言う程でもないけど、元気そうで何よりだわ」


 クラリスと同じギルド、ヴァルキリーズ・エールに所属する鳴深さんはこちらを見ないまま軽い調子でそう言った。


「ど、どうして――!?」

「どうしてって、この騒ぎを起こしたのはうちのギルドのメンバーと聞くじゃない、止めにくらい来ると言うものだわ。それに、貴女にはこんな所で終わってもらっては困るでしょう?」

「そのッ、通りッ、ですわッッ!!」


 その大音声でもって人垣を、さながらモーゼの如く左右に割りながら、扇子を天高く掲げたエリザベートさんがドレスを揺らしながら歩いてくる。


「このエリザベート・ハルモニアッ!! アリッサさんとクラリスさんの危機と聞き及びッ!! 馳せ参じた次第ッ!! この事態を収束させる為ッ!! 身命を賭してッ!! 尽力させて頂く所存なのですわッッ!!!」


 鳴深さんの隣にまで来ると、カッ! と音高くヒールを鳴らして、私たちを囲むPCたちに向き直る。


「また厄介な人が来たのです……!」

「ミリアローズさんッ!! まずは落ち着いて話をお聞きなさいッ!!」

「チッ、面倒なのです! 各員突貫! あの喧しいのは無視して構わないのです!」

「なんとひどい言われようッ!? しっ、しかし挫けるものですかッ!! 皆々様ッ!! どうかワタクシたちの話を――ぎゃあッ!!?」


 ミリィの指示にわらわらとサーバントとファミリアが殺到する。もみくちゃにされ、その姿が見えなくなるまで埋もれてしまった。


「いけない! アリッサさん、耳を塞いで!」

「え、え?」


 言われるままに両手で耳を塞いだ直後の事。



『「ワッ、タッ、クッ、シッ……負けませんッ、わああああああああああッッ!!!」』



 どばっ!!

 最早爆音の域にでも届きそうな声が、群がっていたサーバントとファミリアを吹き飛ばしたのだ!


「うわっ、うるさっ?!」「オイ、ありゃヴァルエの騒音姫(テラーシャウト)じゃねぇか?!」「嘘だろ!? なんてこった!?」「きゃあ!? テトラちゃんが痙攣してるぅ?!」


 主たちは吹っ飛んだサーバントとファミリアに駆け寄り、一気に場は混乱する。


「な、なな?!」

「エリーは《歌唱の心得》の加護持ちでね。効果範囲を拡げる為に声のボリュームを思いっきり高めているの。感覚がセーブされている自分たちと違って音に敏感なサーバントやファミリアたちならその効果は抜群よ」

「た、単純な声量だけでここまで……ハッ!?」


 まさかと思ってポシェットを開くとそこには悶絶しているティファとひーちゃんの姿が……。


「あーあ……」

「あらら……と、ともかく、陣形が乱れてる今が脱出するチャンスよ。ここは自分たちが抑えるから貴女は逃げなさい」

「で、でも抑えるって、この人数を……?!」

「大丈夫。さすがに2人だけで来た訳ではないわ」


 鳴深さんの言葉に合わせるように、倒れていたエリザベートさんを助け起こしているのは先程のドワーフの女性だ。

 彼女は私が見ている事に気付くと手を振って応じてくれる。


「貴女を捕まえるのに参加した全員ではないけど、何人か力を貸してくれるそうよ。人数に差はあれ足止め程度なら出来るわ」


 鳴深さんは先程と同様に何人か迫るPCたちを、軽々といなしていく。

 あまりに力を必要としていないからだろうか、いくらPCたちに土を着けても暴力行為とは判定されないらしくGMコールが表示されていない。


「すごい……!」

「それに、自分たちの存在自体も足止めになるでしょうしね」


 その言葉が正しかったのか、各所から少しずつ疑問の声が上がり出す。

 元より、助力を乞うたミリィが女性の味方を標榜するヴァルキリーズ・エールの一員なのが、私を捕らえようとPCたちが協力した下地の一端でもあった。

 だからこそネームバリューのあるエリザベートさんが私に加勢した事で混乱が発生している。


「一時的でも迷いが出たなら、連携は多少なりと崩れるわ。自分が抑えられている内に……!」


 両手両足しか使えない以上許容量は存在するらしい。サーバントとファミリアの大半をエリザベートさんが食い止めているとは言え徐々に押し込まれ、更に上下左右から攻められれば手が回らなくなる。


「さあ! 行きなさい!」

「っ、はいっ!!」


 その背中に押され、私は駆け出した。

 あの子が来るまで、絶対に持たせてみせなきゃいけないのだから。



◇◇◇◇◇



 場はいよいよ混沌としてきていた。

 私を捕らえようと動くPCと、彼らが従えるサーバントとファミリア。

 果たして真相は何なのかと迷いを抱き、一時様子見の姿勢を取ったPC。

 我関せず、むしろ騒ぐ人たちを迷惑そうに見ているPC。

 普段ならば見られないPVPを肴に楽しげに見物しているPC。

 そして――。


「もらったーっ!!」

「っ」


 スキルクロスの終了時を狙いすました女性PCが迫る。咄嗟にスキルクロスを使おうとしたのだけど、口が開くより先に私と女性PCの間に割り込んでくる人影が!


「アリッサちゃん逃げてー!」

「へ?」

「あ、ずっけ。抜け駆けすんな!!」

「はい?!」


 私が《古式法術》を惜しげも無く使った為に、味方をしてあわよくば情報を教えてもらおうとする人たちすらも出始めていたのだ。


「お前らっ! 彼女が危険な状態だって理解しとらんの?!」

「そこまでするにゃ理由でもあるんじゃねーのかよ!」

「どんな事情でも健康を害してまで遊ぶとかダメでしょ!」

「遊びならこんな騒ぎになった時点で逃げてるって!」


 などなどなど。武器を用いれない分、彼ら彼女らは舌戦でもって相手を退けようと怒号を交わし合う。

 それが四方八方から轟き、一種異様な光景が出来上がっているのだ。


「ずいぶん人気が出たわねー。ま、お陰でちょっとは余裕が出来たけど」

「セレナ!?」


 いつの間にかいつもの装備に着替えたセレナ(パラメータが下がるかららしい)が、にやにやと笑いながら私の前に降り立つ。


「ルールとマナーを求めるのがゲーマーとしてだとしても、同時にどのような状況でも楽しみを見いだすのもゲーマーだ。このお祭りじみた空気の中では十二分に起こり得る事態だったのかもしれん」

「セバスチャンさん!」


 どこからともなく姿を現したセバスチャンさんは周囲に注意を払いながらそう語る。


「妙なテンションに突入してるってのは間違い無さそうだがな。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損損、ってアレかね」

「天丼くん……生きてたんだ」

「なんで俺だけそんな反応なんだよ?!」


 計らずも再び集ったパーティーのみんなに、思わず涙腺が緩みそうになる。


「で、妹の方はどうなってんのよ。アレから20分近く経ってるわよ?」

「連絡はまだ……フィンリーの家からならもう私の家に着いている頃だとは思うんだけど……あっ!」


 突然表示されたウィンドウは、私の情報端末からメールが転送されてきたと告げていた。

 差出人は――!


「彩――っ、じゃないフィンリーから!」

「内容は――ってちょっ、邪魔してんじゃないわよ!」


 次々と襲い掛かるサーバントやファミリアを千切っては投げ千切っては投げるみんなに守られながら、私はメールを開く。



『Fromアリッサ

 今送りました!

 ログアウトしないよう見張っています。早く見つけてあげてください!』



 ――景色が色褪せて、ざわめきも消えて、まるで時が止まったような感覚だった。

 やがてぼんやりとメールの意味が頭の中に染み込んでいく――!


(っ!! 来ている! あの子が、今、この世界に来ている!!)


 その事実を理解しただけで視界が滲んでしまう。会える事への喜びなのか、会えるからこその戸惑いなのか今は判別出来そうもない。


「アリッサ! どうだったの?!」

「ぁ、あ、っ」


 私の反応から察したのか、セレナは場を天丼くんとセバスチャンさんに任せると素早くシステムメニューを操作し始める。

 恐らくフレンドリストからクラリスのおおよその場所を特定するつもりなのだ。私もシステムメニューを開いて確認する。


「ちょ、これって……ここ(、、)じゃないの?!」


 私も目を剥く。フレンドリストから確認出来るのは地区単位の大まかな位置情報だけ。

 でも確かに、そこには『北区・ポータルポイント』と表示されていた!


「そりゃログインしてきたんならポータルに居たって不思議じゃねぇだろがよ」

「しかし――!」


 このポータル前は現在激戦区だ。無関心なPCたち含め、相争うPC・サーバント・ファミリアがあらゆる場所を駆け巡る、それこそ一種戦場じみている。人探しにこれ程不向きな場所があるだろうか?


「メールは?! チャットは?!」

「ど、どっちも応答無いよお……」


 若干涙目でそう告げると「泣くな」とゲンコツで頭頂部を殴られた。ひどい。


「探さなきゃいけないんだったら、泣いてる暇なんてありゃしないでしょうがよ! しゃっきりしろ!」

「その通りだ。ずっと君はこの時を待っていたのだろう。なら今更取り乱すな。がむしゃらに、走るくらいはしてみせろ」

「そうすりゃこのバカ騒ぎも終わらせられるだろうからな。早く楽にしてくれや」

「――うんっ」


 みんなに背中を押された私は力強く頷いた。

 その返答に満足したようにみんなが口許に笑みを浮かべている。


(ああもう本当に……なんて、素敵な人たち)


 押された背中はひたすら熱く、体中を巡る血液はまるで沸騰でもしているかのよう。


「さーてー、じゃあどう探すかだけど……」

『お困りですね?』


 不意に響いたのは小さな、でもよく通る声。ポシェットから顔を覗かせていたのはもちろんティファ、なのだけど、その自信満々な表情は……?


『ふっふっふ。どうやらこの導きの妖精、ティファ・ティアンノの出番のようですね』

「ティファ……? も、もしかしてクラリスの居場所が分かるの?!」

『分かる訳無いじゃないですか、そもそも私はクラリスと言う星守と会った事も無いのですから』

「じゃなんでそんな自信満々なワケよ?! こっちは今忙しいんだっつーのに!」

『決まっています。アリッサ』

「う、うん、何?」


 神妙な顔のティファは、目線を合わせる位置にまで飛ぶと、その小さな手を私に差し出してきた。



『私と、契約を交わしなさい』



 きょとん、と思考が停止する。それは私以外もで、訝りなどしている。そんな中で早々に復帰したのはやはりと言うかセバスチャンさんだった。


「契約、と言うと精霊との契約のようなものかね?」


 ポシェットから顔を覗かせるひーちゃんを指し示す。

 精霊に気に入ってもらえたなら契約を交わしてひーちゃんのように力を貸してくれるようになるのだけど……?


『そうです。私たち妖精と深く絆を紡いだ星守が契約を交わせば、加護《妖精の導き》を得る事が出来る筈なのです』

「それが何だってーのよ? ひーちゃんみたく戦うとか? アンタ強いの?」

『鈍い人ですね、貴女は。《精霊術》と言う加護を聞いた事は無いのですか』

「確か、契約している精霊と同じスキルが使えるようになる……待って。じゃあ……?」


 答えに満足したらしいティファは応用に頷いている。


『《妖精の導き》でも同じ効果を得られるのです。つまり、私が使える力をアリッサも使えるようになるのです。えっへん』

「いや、だからそれがどう役に立つんだよ?」

『ああもう本当に鈍いですね! 決まっています。私がどうやって(、、、、、、、)広い広い(、、、、)ライフタウンから(、、、、、、、、)アリッサを(、、、、、)探し出したと(、、、、、、)思っているのですか(、、、、、、、、、)!』

「――あ、」



『私たち導きの妖精は星守の居場所を(、、、、、、、)知る事が出来る(、、、、、、、)のです。今私がここにいる事それ自体が、力の有用さを示す証左でしょう!』



 その言葉を理解すると同時、私は大きく目を見開く。


「それって、星刻鳥の羽の事……?!」


 本来の用途は別だけど、あれには妖精にこちらの位置を報せてくれる機能が付与されている。

 広いアラスタで、ティファが私の下宿先を見つけられたのもこの羽のお陰なのだ。


『そうです。私たちでは形として残さねばなりませんが、貴女たち星守には絆を明確なラインとして構築する(すべ)があるのでしょう?』

「術ってなんだ?」

「絆……そうか、フレンド機能か」

『そうです。それを利用すれば、星刻鳥の羽のような媒体を用いずとも位置の特定は可能な筈です』

「ふむ。大方フレンド機能の拡張、常時マップに詳細な居場所が表示されるようになると言った所か。成る程だとするならば願ってもいない朗報だな」

「や、やるじゃないのよアンタ!」

『でしょう。えっへん。さぁ、アリッサ!』


 ティファが手を振るや、私の眼前にウィンドウが表示される。


『私も、貴女の力に!』

「――っ、うん!」



 ポーン。


『【加護契約】

 《妖精の導き》の加護を与える星との結び付きが強まりました。

 契約を交わし、星の加護を得ますか?

 [Yes][No]』



 ずいぶんと久し振りの加護契約画面に懐かしさを覚える間も無く、周囲の怒号に急き立てられ[Yes]をタップ。そしてシステムメニューを操作して加護構成を変更する。


『アリッサ。スキル名は〈リンクネクサス〉ですよ!』

「分かった、〈リンクネクサス〉!」


 その言葉と同時に、視界内のマップに表示されている光点が一新された。

 私の周囲には3つの強い光点があって、それはセレナ・天丼くん・セバスチャンさんと判別出来るようになっている。

 それを確認してシステムメニューから、より詳細なマップを表示させる。

 そこには同様に強調された光点があるのだけど、更にそこにはPC名がタグとして追記されていた。


「――っ、いた!」

「どこ?!」

「あそこ……あの建物に重なってる!」


 指差すのはポータルの傍に乱立しているマンションのような建築物の内の1つ。距離はおおよそ400メートルかそこら。

 マップは真上からの視点からなので何階かは分からないけど、確かにそこに『クラリス』と表示されている。


「あそこに、いる、いるんだ!」

「動いてはいないのか?」

「は、はい、全然動きは無い、です」

「って事はこっちの様子でも窺ってんのか? まぁ、目立ってるだろうし、監視はしやすいだろうなぁ……」

「あるいはどうしていいか分からないのでとりあえず隠れているか、か……ともあれ場所が割れたならばこちらから動くまで」


 周囲には相変わらず、沢山のPCに、サーバントに、ファミリアたち。

 先程までなら焦燥させられるくらいの光景だった筈なのに、今の私にはどうでもいい相手としか映っていなかった。

 高鳴る鼓動を抑えようと、胸元をギュッと握り締める。


「みんな、お願い……」


 セレナが、天丼くんが、セバスチャンさんが、ティファが、そしてひーちゃんも、こちらに注意を向ける。



「お願い、力を貸して。私、あそこに、あそこまで行きたいっ!」



 もう頼る事にも躊躇いは無い。ただただあの子の許へ、私と言う人間はその為なら何だってする。

 ……それでも。


「だそうだ。セレナさん、天くん、どうにかしてアリッサさんを送り届ければ、どのような形であれ事態は決着する。手を貸さん道理は無い、さて異論はあるかね?」

「無ぇよ。泣いても笑ってもこれで最後だ、悔いなんざ欠片も残らねぇくらいの全力全開でやったろうじゃねぇか!」

「こっちも、じょーとーに決まってんじゃない。にしても、ったく最後まで世話焼かせてくれるじゃないあのバカ、後でしこたま文句言ってやる」

『セバスチャン。私たちを忘れてもらっては困りますね。先程のように役に立つ事おびただしいに違いありませんよ』

『キュイ!』


 セバスチャンさんも、天丼くんも、セレナも、ティファも、ひーちゃんも、みんなみんなそう言ってくれる。


「…………ありがとう」


 だから私は滲む視界を拭える。迷いも恐れも欠片も無く、ただただ前を……前だけを見つめられる。

 1歩を踏み出す。

 ざわめく周囲を物ともせず、行く道を塞ぐすべての誰かを無いもののように……轟然と、吼える。



「行くよ。今行くよ……クラリス!!」





 やっぱみんな揃うと書いてて楽しいや。




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