5話 出奔
「うわ~気持ちいいですね!」
銀色の髪を棚引かせながらキャッキャと助手席ではしゃぐリディさん。こうしているところを見ると年頃の女の子にしか見えない。
下手すれば俺と同い年くらいか? とにもかくにも魔力駆動の車に乗ったのは初めてらしく、えらく楽しそうだ。
「そういえばリディさん。他のメンバーに出かける事言わなくても大丈夫だったんです?」
「大丈夫ですよ。ずっとこの魔法道具で随時連絡できてますから」
そう言うと髪をかき上げ、耳元を見せてくる。
見るとそこには耳に小型の魔法道具が装着されている。
「親父のですか」
「あたりです。やっぱり親子だったら見ればわかるんですね! 凄いです」
魔法道具職人ってだけで大分少ないからな。
生まれながら魔力をどう扱うかっていう回路が他の人とは違う必要があるし。
「そういえばロイさんって何歳なんです?」
「23歳です」
「えっ! ホントですか! 実は私も23歳なんですよ! 奇遇ですね!」
やっぱり同い年だったか。
「リディさんってどうして『リヒト』に入ろうと思ったんです?」
純粋な疑問だ。俺と同い年。でも俺は『リヒト』に入ろうとかそう思う以前にそもそもその存在すら知らなかったくらいだ。
どうしてそんな若くで国を変えようと動けるのか、それが知りたかった。
「……今はまだ言えません。ロイさんがまだ信用に足る存在ではありませんので」
「はっきり言うじゃねえか。あ、すいません。つい」
「フフッ、良いんですよ。敬語じゃなくても。同い年ですし。何だったら私語を使い合う方がより信用度も上がっていくと思うので」
「そうか? じゃ、よろしく頼んだリディ」
敬語を使い慣れていない俺は速攻でタメ口へ切り替える。
なんてったって、俺より2倍くらい歳の差があるであろうしかも客のルイスさんに対してずっとタメ口だったぐらい敬語が使えないダメ人間だからな。
「き、切り替え早いね。よろしくね、ロイ」
そう言って微笑みかけてくるリディに俺は不覚にも少しの間心を奪われてしまう。
そう、これは俺が悪いのではない。リディが悪いのである。
魔力出力を誤ってしまった車はそのままクルクルと回転し始める。
「やっばいやっばい」
「ちょっとロイ! 死んじゃう死んじゃう」
慌てて俺は魔力を停止させ、その場に車を止める。
すると車は音もたてずにその場で崩れ落ちていく。
「……ごめん」
「あっ、いい~よ、っと、った、ぜ、ぜえ~んぜん、だいじょぶ」
未だに頭をくらくらさせながら地面に座り込んでいるリディを見るに多分大丈夫じゃない。
こういう時、運転手じゃない方が余計にひどい酔い方をするはずだもんな。
「はあ、また車、作り直すか」
そう言って俺が地面へと手を伸ばそうとしたその時であった。
俺達の前を何者かが通り過ぎたように見えた。
いや、通り過ぎたんじゃない。行く手を阻むように複数の男たちが立ちはだかる。
不味いなこの状況。
慌てて後ろを見るも、既に後ろ側も男たちに取り囲まれていた。
「よおよお、お二方。金出せ金」
「おっ! そっちの嬢ちゃん、滅茶苦茶美人じゃねえか!」
「こりゃ当たりだぜ! 持って帰って親分に献上だ!」
見ればわかる。かんっぜんに盗賊だ。
「すまん、リディ。俺が車の操作を誤らなければこんな事には」
「……」
まあそりゃ怒るよな~。運転誤ってしかも無防備なところに盗賊登場!
更に俺、ただの足手まとい! 状況が終わってんだよな。
だがせめて、リディだけは逃がしてみせよう。この護身用アイテムを使って……。
「魔力で防御壁を作ったわ。次は目と耳を塞いで」
「ん?」
リディの言葉を理解できなかった俺は反射的にリディの方を向く。
そして次の瞬間、俺はその言葉の意味を十分に理解する。
周囲が眩く光ったかと思うと、凄まじい轟音が鳴り響いた。
「目があッ! 目があッ!」
「いや、言ったよね!? 何で目瞑んなかったの」
「あの一瞬でそこまで対応できねえよ」
未だに目がチカチカしながらも何とか視界がクリアになっていく。
周囲を見渡し、そして俺は状況を理解する。
「ごめんね。とにかく、雷の魔法で盗賊共は焼き殺したよ。さっ、これで行けるね」
うん、この人、めちゃくちゃ強い魔法使いなんだね。そして結構、やり慣れてんな。
死屍累々と積みあがっている盗賊たちの身体を横目に見ながら俺は再度、車を作り上げるのであった。
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