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056.魔術師ならばちゃんとやれ

「はっ、拳ごときで何ができごっ」

「遅い」


 いや、魔術師なんだから詠唱しろよ。雑魚髭面のくせに、悪役ボス気取って台詞言おうとするんじゃねえよ。

 シーラ、その隙に踏み込んで顔面に拳叩き込むなんて余裕じゃねえか。ついでに腹にも打ち込んだ上回し蹴りって、なあ。


「詠唱が必須である、貴様のようなどへっぽこ魔術師に自分が負ける道理はない。無論、この街の衛兵にしてもそうだ」


 さすがに教会の壁とかにぶち当てられるほど、髭面はふっ飛ばされてはいない。何となくだけど、シーラは手加減した気がする。

 だってほら、髭面は痛みに顔を歪めながら立ち上がってきたものな。


「雷よ、我に力をどんどんよこせえ!」

「ワンパターンだな」


 いやほんと、シーラじゃねえけど俺だってそう思うよ。というか、変装魔術にかまけてアレしか使えなくなってんじゃねえか? この髭面魔術師。


「隊長殿、ガゼル殿。自分が先行する。後は頼んだ」

「承知。行くぞ、ガゼル」

「了解っす!」


 ばしん、ばしばしと落ちてくる雷の音に紛れるように、シーラと衛兵二人が言葉をかわす。

 次の瞬間、シーラが走り出した。少し遅れて隊長さん、ガゼルさんが続く。髭面からは見にくいだろうなあ、雷次々に落としているから。

 あれだけの雷をどんどん作り出せてるから、こちらからは近寄れないと甘く見てるのかな。あのおっさん。


「ほれほれ、近寄れるものなら近寄ってっ」

「言葉通りに」


 シーラはと言うと、雷をうまくひょいひょいと避けている。隊長さんとガゼルさんも、なんだかんだで避けているのはすごいと思う。俺、絶対無理だろうし。


「よっと」

「ぐげっ」


 シーラは姿勢を低くして、髭面の下からアッパーを入れた。わずかに足が浮いたところで、雷も途切れる。

 ちょうどそこへ、衛兵二人がたどり着いた。するりとシーラが横に避けたことで、髭面は衛兵たちに簡単にとっ捕まる。


「もう逃げられんぞ!!」

「禁術の使用、及び僧侶殺害に関する件で確保っ! 邪教信者との交友関係についても聞くから、そのつもりでな!」


 隊長さんが髭面を地面に押さえつけ、その口にガゼルさんが適当な布を突っ込んだ。詠唱防止か、基本だよな。

 しかし、邪教信者との交友関係について聞く、か……あれだな、尋問という名の拷問とか、その辺まで行ってそうだな。

 ……やだな。うん。




 教会の中にいた人たちもみんな無事だったようで……悪党に関しては死んでない、という意味で無事だったらしいけど。

 衛兵隊が悪党どもを引きずり出していくのを、俺たちはじっと見ていた。

 で、隊長さんが俺たちのところに来てくれて、頭を下げてくれる。ガゼルさんも、もちろん一緒だ。


「ご協力に感謝いたします」

「いえ。スカラ様のことは心が痛みますが、他の方々が無事で良かったですわ」


 ファルンがしれっと答えるのを聞いて、それからシーラが軽く伺ってくれた。もちろん、アムレクのことな。


「こちらの青年は、同行者が探していた兄君だそうだ。こちらで引き取ってよろしいだろうか」

「ああ、数日はこの街に滞在していただけるのであれば構いません。お話を伺うこともあるかと思うので、居場所だけはっきりしていただければ」

「承知した。それでいいか」

「はあい。ミンミカ、おにいちゃんしっかりみてます!」

「……すみません。ありがとうございます」


 ミンミカは元気に、アムレクはだいぶ凹んだ感じに答えてくれた。ま、多分脅されてだろうけどあの髭面に協力させられてたみたいだしな。話聞かれてもしょうがねえや。


「ガゼル、皆さんをお宿までお送りしろ」

「へい、承知っす。あの、ところで」


 ああ、ガゼルさんがいるの、それでか。すっかり俺たち担当になっちまって、何かおつかれさんというか。


「カーライルさん、大丈夫なんですか?」

「……体力、つけないと、いけないですね……」


 あと、杖一回使っただけでまだ立ち上がれもしないカーライルも、本当におつかれさん。

 こいつ、男という理由以外でも吸えないな。何かあったら、一瞬で干からびるから。

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