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429.すまないけどおしつける

 ぐしゃり、と潰れたようなサブラナ・マールの身体から、いくつもの光がぽんぽんと吹き出しては消えていく。そのうち身体そのものもゆるりと光り出し、そうしてふわりと浮かんだままこっちに近寄ってくる。


「ルッタ、見てくれ」

「はっ」


 さすがに俺が直接触るのもあれだったんで、ルッタに様子を見てもらおう。

 彼女がそっと手を伸ばす。軽く触れた瞬間光が消えて……あーなんだ、ぶっちゃけると赤ん坊が出てきた。髪の色が同じだから多分、こいつはサブラナ・マールなんだろう。


「おお、小さくなりましたね」

「俺より小さくなったな」

「あぁん、うわああああん」

「え、あ、おおよしよし」


 まあ赤ん坊なんで、泣く。抱え込んだルッタが慌てて軽く揺するんだけど、そうそう泣き止まない。……まさか、腹減ったじゃねえよな、おい?


「これは……」

「多分、魂も小さくなったみたいだ」

「そうなんですか?」


 とりあえず赤ん坊はルッタに任せておいて、俺の考えを皆に話す。さっき吹っ飛んでった光たちが多分、サブラナ・マールの魂の欠片なんだろう。身体が小さくなったから弾き飛ばされたのか、欠片になってったから身体が小さくなったのか、どっちだろうな?

 ま、どっちでもいいんだが。俺と同じ目にあってるのは事実だし。


「では、先程弾けて消えたのは」

「魂の欠片、ってところだろうな。多分、俺より少ない欠片だけがこの中に残ってるんだろう」


 何とか泣き止んだ赤ん坊を、ルッタが何というか困った顔であやしている。うんまあ、さすがに殺すわけにもいかないし、かといってこのままってのもなあ。

 でも、ほうっておくわけには行かないわけで。


「いかがなさいますか」

「このまま放っておいて死んだら、多分最盛期スタイルで復活だぞ。俺が確かそうじゃなかったっけか?」

「そういうお話だったような……同じ神ですものね、あり得ますか」


 シーラがふむ、と考え込む。赤ん坊を抱えているルッタがうわあ、って感じの顔になった。ま、相手の大ボスにとどめを刺せないのはお互い様だからな、うん。


「かといって、コータ様ではその、ちょっと」

「だよな。カーライルにも無理そうだ」


 龍型のままのカーライルに、言葉を濁されつつお前にゃ育てるの無理だと言われる。それはお前もだろうな、と思った結果、シーラも込みで視線がルッタに集まった。うん、ごめん。


「というわけで、ルッタ。普通に育てろ。俺に従順にする必要はない」

「え?」

「どうせ俺みたいに、ちらっと思い出すかもしれないしな。その時はその時だ、また迎え撃ってやるよ」


 すまんルッタ、シーラも何となく無理そうだしスティはどっちかと言うと師匠とかそっち系だしレイダはある意味論外だし。

 ウサギ兄妹なんて子供が子供を育てるみたいでもっと論外だし。


「……捨て置くわけにも参りませんしね。分かりました、拝命いたします」


 と言っても、ルッタに押し付けるのはちょっとだけ気がとがめたけどな。

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