413.戦の前にひと会話
アルネイドが近づいてくると、武装した人々が結構集まってるのが見えてきた。スティはじめ、うちから派遣した衛兵たちがそれぞれ隊を指揮していて、付け焼き刃にしてはきちんとしてるなとちょっと感心。
「結構いるな」
「これでも、向かってくるマール教軍の三分の一ほどです」
「そこまで集まりゃ御の字だ」
全世界が自分たちの敵だって分かっているのに、そんなに集まってくれたんだ。俺にとっては感謝しかないよ、うん。
「あ」
広場近くの建物の裏に、スティがいるのが見えた。カーライルにも見えたようなので、ルッタとシーラを伴ってそこに降りる。スティはさっと腰を落として、俺が降りるのを手伝ってくれた。
「御自らお出まし、ですか」
「あっちも大ボスが出てきたっつーからな。なら、俺が出ないわけにはいかねえだろ」
「はい、情報は入っております」
そうだな。表向きはマール教教主、その実態は神サブラナ・マール。そいつが出てきたなんて情報、手に入った時点でこっちに回さないはずがない。そうして、俺が出てこないわけにも行かない。
「クァルード、分かっているんだろうね」
「無論。コータ様は生命にかけて、お守りする」
「頼んだよ」
カーライルの甲冑に俺の座る鞍があることに気がついて、スティは彼とそんな会話を交わす。俺としてはカーライルに死なれても嫌なんだけど、そうも言ってられないんだ。これから俺たちがやることは、殺し合いなんだからな。
「スティ、勝てそうか」
「正直難しい、というのが本音ですな」
他の連中から見えないところだから聞けたことだけど、スティは素直に首を振る。まあそうだよなあ、結局は寄せ集めの、付け焼き刃の軍隊だ。装備はいいものだけれど、それでもちゃんと訓練してるマール教にはきっと及ばない。
「ですから、基本は我ら四天王が敵の本軍を叩き潰すことになりましょう。配下どもには、取りこぼしの始末を」
「それくらい、実力は開いてんだ」
「敵軍に勇者はおらぬようですし、それならば何とか」
なるほど。四天王と勇者がだいたい似たり寄ったりの実力で、そいつらと普通の軍人や何かとは格段の差があるわけだ。
だからマール教は、勇者の育成を急ごうとした。その前に俺たちが動いたわけだけど。
「ただ、別軍では勇者が戦果を上げているようです。ですので、ここでは負けるわけには参りません」
「分かった。ルッタ、シーラ、スティ、カーライル」
『はっ』
「みんなの力を信じてる。ここで、せめてサブラナ・マールの力を俺程度まで削ってくれ」
四天王とシーラに、そういうことを頼む。最終的には、俺とやつで決めなければならない決着だしな。
それでどっちが勝っても、この戦いは終わりだ。というか、終わらせてやる。
要は、俺が勝てばいいんだからな。
「承知しました。サブラナ・マールはこの私が、ぎたぎたに叩きのめします」
「やりすぎんじゃないよ、カーライル」
「ルシーラット、力を貸しなさい。我らが神のために」
「もちろんです、アルタイラ様」
そうして多分、彼らは俺の思いを受け取ってくれて、そうして頷いてくれた。




