410.装いいろいろやっていこう
「いつの間に、こんなのを……」
ガイザス工房に呼ばれて、見せられたものに対する俺の最初の感想はそれだった。
「コータ様は我らの神ですからね。最低、格好だけでもきちんと付けて頂いたほうが士気も上がるというものです」
「わはは、よう似合うておりますぞ」
あっという間にルッタとシーラに着せ付けられて、意外に軽いそれに驚く。で、それを見たカーライルとガイザスの感想がこれで。
かぶるときに角がじゃまにならない兜、色はともかくサイズが可愛らしい胸当てとスカート、手甲にすね当て。まあ要するに、俺サイズの甲冑だ。ほんと、いつの間にこんなもん作ってたんだ、ガイザス。
なおインナー、というか黒いドレスもついてきた。これ絶対奥さん製だな、うん。
「私の分も、作っていただいたんですよ」
「お前のも?」
カーライルが笑いながらぽん、と手を置いたものに目を向ける。……顔にかぶせるのとか足用の爪とか、どう見ても人間用のものじゃねえし。
「……龍用か、これ」
「戦のときはあの姿になりますので、こちらの方がいいんです」
「そりゃそうか」
だよなあ。人のカーライルで戦うより、龍のクァルードで戦ったほうがどう考えても戦力になるし。
「他の皆は」
「こっちが鳥人のお姉ちゃんたち用ですな。微調整は終わっとります」
「たち?」
俺のもの、カーライルのものとなると次は……ルッタだよな。それで『たち』、複数形ってことはだ。
「……シーラも作ってもらったのか」
「はい、アルタイラ様と同じ形状のものを作っていただきました」
ルッタ直属の配下で『剣の翼』なんていう二つ名持ちだ。ルッタと同じもの付けたって、誰も怒らないよな。俺も含めて。
同じ種族なら、同じタイプの武装でも何ら問題はないわけだし。
……スティは普段からそれなりに武装してるからともかく、レイダはどうなんだろうな。
「ネレイデシア様は武器だけをご所望だったとかで」
「そりゃ、海の中じゃ変に鎧つけると邪魔だったりするからな。そっちのほうが、やりやすいんでございましょう」
なるほど。……海で金属鎧とか沈みそうだし錆びそうだし、自分たちで革鎧とか作ってんのかね、あいつら。
「他の衆には、量産型の甲冑を配っておりますじゃ。微調整が必要な者には弟子を派遣してやっとります」
「うん、重要だよな」
量産型、といっても着るほうが量産型なわけじゃない。それぞれに体格の違いとかがあるんだから、微調整をキッチリしてくれてるのは助かる。
「……って、もしかしてウサギ兄妹も」
「お揃いでかっこいい、と二人揃って喜んでおりましたな」
「あ、分かる」
あの二人は、結構脳天気なところあるからな。それでいて、なんとなくだけど戦場の空気ってのも分かってるというか……まあ、草食系だから、なのかもしれないな。




