407.城に戻っていろいろと
急いで城に戻ったが、幸いこちらは何の問題もないようだった。念のため各地の情報を求め、アルネイドも含めて態勢を整える。
アルネイドの方はスティに行ってもらって、訓練は万端のようだ。ガゼルさんが結構腕が上がってるらしくて、ちょっとびっくりしたかな。
「教主は無事だったらしいですよ。全世界のマール教に対して、マーダ教撲滅の詔を発したとか」
「やっぱ、あれじゃ死なねえかあ……」
カーライルが持ってきた情報に、顔をしかめる。こいつの真上からの一撃で無事って、どれだけ丈夫なんだよ。あんまり人、というか神のこと言えないけどさ、俺も。
「てことは、俺もあのレベルなら大丈夫ってことか」
「試しませんからね」
「分かってるって」
カーライル、そこのツッコミは素早いんだな。いや、俺だって痛いのはいやだし。もし死んで全盛期モードで復活ー、なんてことになるんだったとしても、実際のところはどうだか分からないしな。
「で、教主は神都サブラナから動いてないか?」
「今のところはそのようです。もしかしたら、こちらにわざわざ出向いてくる可能性は否定できませんが」
「俺の本拠地だもんな。やってきそうな気がする」
ですよねー、としか言いようがない。あの男が、俺をほっとくとは思えないし。
教主として来るか、サブラナ・マールとしてかはもう置いておく。どっちでも大して変わりやしないからな。
で、俺たちと一緒に北方城まで戻ってきてしまったレイダに、ふと視線を向ける。
「レイダは、自分の配下いいのか?」
「何かあったら、ズノッブが上手いことやってくれるさ。馬鹿なやつに配下任せたつもりはないしねえ」
「なるほど。そりゃそうだな」
「それに、そんな事を言うんならあんただって、バッティロスやサンディタウンは大丈夫なのか、ってことになるだろう?」
「……そうか」
う、上手いこと反撃されてしまった。各地に置いてある配下たちがちゃんと仕事をしてくれてるなら、それを信じろってことか。そうだよな。
というか、バッティロスはともかくサンディタウンは俺の配下扱いなのか? まあ、グレコロンは下僕にしてあるけど。
「コータ様」
シーラがやってきた。ファルンのこと、頼んであるんだよな。
「ファルンはどうだ?」
「目を覚ましましたが、どうやらこれまでのことを覚えていないようです」
「……やっぱりか」
俺が彼女のことを教主にばらしたことで、ファルンは俺のことを忘れて……多分、ナーリアの村にいた頃まで記憶が戻ってるような気がする。
「俺たちのことを覚えていないなら、少し離れた街に置いてきてやってくれ。マーダ教のことなんかもう、何もわからないだろうし」
「……よろしいのですか」
「仕方ねえよ」
シーラ、お前と違って彼女はあくまでも下僕、だったんだ。記憶が途切れてしまえばそれまでの関係。
後は、元のマール教の僧侶に戻って、普通に暮らしてくれればそれでいい。




