387.はるばる来たぜ神の都
神都サブラナ。
今、この世界の中心とも言えるこの都は、深い深い堀と石積みの高い高い塀に囲まれて存在している。全体的に丸い敷地で、……うん、街一個余裕で入るわ、この円。
「はい、確認いたしました」
で、その塀の中に入るために入域証を示して、チェックしてもらう。敬虔な信者のふりをしてないと面倒くさいから、というファルンの助言に従って、外見上子供の俺はおとなしくしてる。
「ようこそ、神の都へ。我らが神の恩恵を感じ、幸せにお過ごしくださいませ」
「ありがとうございます。大変光栄ですわ」
確認が終了して、受付の僧侶さんが深々と頭を下げる。その口調がものすごく夢でも見ているみたいで、正直これでよく仕事になるなと俺は胸の中だけで考えている。
いやほんと、いくら観光客の数が制限されてるからって、よく入域証確認の仕事が務まるよ。そして、しれっとその相手をできるファルンも……ああ、彼女はもしかして慣れてるのかな。
「……つ、疲れる」
何とか門をくぐり抜け、都の領域内に入った途端思わず俺は、肩を落としてしまった。カーライルは「肩凝りましたね」と自分の腕をぐりぐり回し、ミンミカとアムレクは『つかれたー』とただでさえ垂れてる耳がもっとべとーっと垂れている。
「あの方々は本当にそう思っていらっしゃいますから、余りお気になさらず」
「自分にはよく分かりません」
「いやほんと、僧侶様のおっしゃる通り気になさらんほうが良いねえ」
平然としているのは本当にファルンだけで、シーラもうんざり顔を隠さない。レイダは……ゴクゴクと水筒の水を飲みながら、どこか遠い目をしている。うん、お前も現実逃避したくなる気分てことか。
「しかし」
あ、いや違うか。レイダが遠い目で見ているのは、この周りの風景だ。神都サブラナの、整った街並みだ。
「神の都、というだけのことはあるよねえ」
「きらきらきれいですー」
感心した言葉に、ミンミカのはしゃぐ声が重なる。
きらきら、という言葉の通り、この都にある建物はまるで金箔か何かでも散りばめてあるかのようにきら、きらと光の粒をまとわせている。よく見ると、石造りなんだけどその石にガラスみたいな粒が含まれているらしく、それが光を反射してるようだな。
「街並みも整然としていますし、清潔ですね」
「神様の都が不潔だったら、それだけで信仰したくなくなりますよ」
シーラが石畳の道と、その横を流れる水路を眺めながら言う。カーライルは相変わらず肩を軽く動かしながら、確かに俺でも嫌だなという感想を述べた。いや、俺、対立する神様だけど。




