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365.昔のことと今のこと

「久しいな。レイシス、フィンメリア」

「る、ルッタ様……」

「馬鹿! あいつは裏切り者よ!」


 恐らくは部隊のトップ二人の名前を呼んで、ルッタはシーラを引き連れて彼女たちの前に降り立った。ああ、元配下だから名前知ってんのか、ルッタ。

 どっちがどっちかは分からないけれど、片方がまだルッタに忠誠心が残ってるのに対してもう片方は割り切ってるか。ま、このへんは個人差だよな。


「裏切りか……言葉は正確に使え、と教えなかったのですか? アルタイラ様」

「教えたつもりだったがな」


 その二人に対しシーラが、そしてルッタが冷たい声で答える。そうしてルッタが、二人に向き直って声を上げた。


「正気に戻っただけ、と言ったほうが正しいな。何しろ我々は、翼王アルタイラと剣の翼ルシーラット、なのだから」


 ざわり、とざわめく教育部隊と、住民たち。俺の四天王とその一の配下が顔を揃え、やってきたんだからなあ。致し方ないか。


「もともと私やルシーラットは、アルニムア・マーダ様の配下だった。それをサブラナ・マールが心を惑わせ、己の配下として捕らえていたのだ」


 手っ取り早く言うと確かにそうなる自分たちの境遇を、ルッタがまるっとまとめて口にした。

 で、その二人を俺が取り返した……ってことになるのか。こう、いろんな経過を無視すると確かに。

 取り返した手段がアレだけどな。


「さて。単純に話を聞いた上で、伺おう。邪神はどちらだ」

「ば、馬鹿な!」

「サブラナ・マール様がそんなことをするはずがっ!」


 うん、シーラの質問にそう答える辺りはやっぱり信者だよねえ、と思う。一応、今の世界ではいい神様というかそういう扱いなんだから。

 ただ、今の扱いがそうだからって本人……神様だけど、が実際そうかというと、なあ。俺が俺だし。


「アルニムア・マーダ様の四天王はそのことごとくが蘇り、今この世界にある。その我らが今まで動かなかった……そこに、サブラナ・マールが何もしなかったという保証はあるのか?」

「それは、サブラナ・マール様と過去の勇者がお前たちを封印したから……っ」

「既に解けたがな。弱い封印だ」


 ルッタが何か、元配下を煽ってる。向こうから手を出させたいのかな、あれは。


「マール教が相手を煽ってそちらから手を出させるのは、よくある話ですから」

「あ、なるほど」


 カーライルの解説で納得した。ルッタがマール教にいたときにいつもやっていたことを、今回は相手にやってるわけね。


「貴様あ!」


 おお、ルッタを裏切り者と断じたほうが剣抜いて斬りかかった。煽り耐性低いな、おい。

 それに、敵わないだろ、お前。


「弱いぞ」

「きゃあ!」


 ほら、ルッタじゃなくてシーラにあっさり剣を弾かれた。それも、シーラはほとんど動いてねえじゃんか。


「ルシーラットに敵わんのか。かつての配下を、私はここまでしか育てられなかったのだな。我ながら情けない」


 はあ、と大きくため息をつくルッタに、俺はいや、お前のせいじゃないんじゃね? と言ってやりたい。

 お前とシーラが強すぎるからだよ、多分。

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