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348.食事の中身もいまいちで

 ひとまず、晩飯を食いに行く。前と同じ、宿の中にある食堂だ。

 ただ、メニューが入れ替えられて品数が少なくなっている。その上に横線とかで消してあったりするから、更に注文できるものが少ない。


「あまり種類を揃えられず、申し訳ありません」

「大変なんですか?」

「そりゃもう。お嬢ちゃんもお父さんたちと一緒に大変だね」


 注文しに行くと、厨房のおじさんが本気で済まなそうに頭を下げてきた。いやまあ、なんとなく理由はわかるから気にはしないけど。

 ところでお父さん、ってカーライルのことかよ。何か微妙にヘコんでるぞ、残念イケメン独身神官。


「ここ最近、マール教からの通達でマーダ教を警戒しているんですが……そのせいか、流通が滞ってるんです」

「この街、食料は外から来てるんでしたか」

「ええ。肉ならある程度狩ってきてもらえるんですが、野菜が……」


 シーラが尋ねると、おじさんは深く頷いて難しい顔になった。ああ、なるほど。栽培しなきゃいけない野菜は、どうしても外から輸入しなくちゃならなくなるからな。

 その分、そばの森で狩ってこられる可能性のある肉より入る見込みが減ってしまうってことか。

 まあ、スティは肉食だから特に問題ないけど。……ないよな?


「なら、後で俺もなにか狩って来ましょうか」


 そのスティが、ほんの少し考えた後でそう提案してきた。野菜がなければ栄養が偏るけれど、当面腹を満たすくらいなら何とかなるだろうしな。


「お願いできますかね?」

「了解。血抜きもしとくから、その分サービスしてくださいよ」

「ありがとうございますー」


 と、そんな感じで注文した焼肉定食には、とりあえずということで酒が無料で一杯ついていた。さすがにドリンクバーとかはないっぽいからな、この世界。


「おう、これじゃあしっかり狩ってこないといけませんな、俺は」

「頑張ってね、スティお姉ちゃん」

「もちろん」


 ロリっ子ぶってる俺にウインクして見せてから、スティはわずかに顔を寄せて小声で言ってきた。


「ついでに外見てきます。朝まで戻らなきゃ雲隠れでもしてください」

「分かった」

「まったく。スティさんは狩りが好きなんですから」

「カーライルさん、あなたも少しは見習ってください」

「私がそういうのが苦手だってことは、あなたが一番ご存知ですよね?」


 俺も小声で答える。うまいこと、シーラとカーライルが会話して周囲にばれないようにごまかしてくれたようだ。

 それから食べ始めた食事は、基本的に素材の味と塩味だった。多分、香辛料も少なくなってきているからだろう。

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