332.腹が減ったの後始末
「んむ、んっ……ふう」
程々に吸い取って、離れる。ガレラから吸ったこともあって、そんなに量を取ってないからかダルシアは大丈夫そうだ。よしよし。
「ごちそうさまでした」
「お粗末さまでした。いかがでしたでしょうかっ!」
「悪くないぞ。さっぱりしてて、後味もいい感じだ」
「よかったです!」
素直に味の感想を述べると、彼女はめちゃくちゃ嬉しそうな笑顔になった。……下僕でもないのに精気吸って喜ばれるのって、結構珍しいんじゃなかろうか。
「あのう」
精気と食い物は別腹、ということでちゃんと昼飯も食う。コウモリ獣人の主食は果物だそうなんだけど、俺とか特にスティのためにシンプルな焼き肉とはいえわざわざ肉料理も準備してくれたんだよな。ありがたいなあ、うん。
で、その昼飯を食ってたらダルシアが俺に声をかけてきた。
「何で、コータ様は精気お吸いになるんですか?」
「ん」
そういう質問されたのは、初めてじゃないだろうか。とはいえ既に解答は分かっているので、それをちゃんと言葉にして返す。
「飯と同じで、俺が活動するのには必要らしいんだ。実際、吸うの控えてると腹減ってるみたいになっちまうし」
「なるほど。それじゃあ、ちゃんと吸わないと大変なんですね」
「それでも飯も食うから、結構効率悪いんだよな。神様って」
「そうですね。私たちはご飯とお水で何とかなりますもん」
ダルシアの言う通りなんだよなあ。食事と水でどうにかできるだけ、人間や獣人たちは俺よりマシだ。俺は、下僕なり配下なりから毎日とは言わないけど精気を吸わないと……死にはしないだろうけど、へろへろになったりするんだろう。
……案外前回の敗因、それだったりしてな。配下が皆いなくなって勇者が女の子だったりしたら、前の俺にとってはかなり厳しい状況だろうし。
そんなことを考えていた俺の耳に、ダルシアのどこかミンミカにも似た口調のセリフが飛び込んできた。
「でも、その分いろんな事ができるんじゃないですか? こう、ばりばりどかーんとか」
「何だそりゃ」
「神の天罰、だったかな。前に、よその村が何かすごく悪さをしたらしいんですがそのときに、その村の一帯がそんな感じに雷に打たれて」
「マジかー」
何そのまじで天罰。というか、誰がやった……どうせマール教の偉いさんとか、その辺だろうな。ルッタみたいに俺の配下がマール教にまだいる可能性はあるから、そいつらかもしれないけれど。
しかし、村一帯雷でふっ飛ばされるなんて、その村どんな悪行やらかしたんだろうな?
「うーん……俺は神様の欠片みたいなもんだからさ。多分、そこまでは無理だと思う」
とりあえず本当のことを言ってみると、ダルシアは「そうですか……」と何故かしょげてしまった。いやいや、そんな事できてもほいほいやるもんじゃないから。
北方城や東方砦に打たれないようにだけは、気をつけておかないとだけど。それに。
「あ、でもバングデスタ様やアルタイラ様がおられるから、大丈夫ですよね!」
「それは大丈夫だろうな、うん」
スティやルッタに守ってもらうしかないけれど、きっと何とかなるさ。
レイダは駄目だ、水に濡れてる可能性高いから感電しそうだし。




