320.もひとつおまけに驚いた
「ええと、あの」
顔を上げたところでダルシアは、やっとこさ俺に気づいたらしい。いやまあ、大柄鳥姉ちゃんと大柄虎姉ちゃんの前にロリ獣人がいても、普通は気づかないだろうけど。
「こちらの方は」
「ああ」
スティとルッタか、それとも俺自身にかは分からないけどそう尋ねられて、答えたのはルッタだった。それに続けて、スティが俺のことを彼女に教える。
「こちらは、我らの主コータ様だ。いろいろあられてな、現在はその名を使っておられる」
「四天王様方の、主様ですか?」
「そうだ」
わざと、含みのある言い方で俺を紹介してくれたな、スティ。
さて、このダルシアという子は気づいてくれるかどうか、ちょっと興味がある。何か頑張って考えてるみたいだし。
「……」
ダルシアは俺をガン見して。
「……」
上向いて。
「……」
下向いて。
「……」
もういっぺん俺をガン見して。
「ひ、ひああああ大変大変失礼をっ!」
さっき引っ掛けたままのシーツを身体にまとわりつかせつつ、再びの土下座。うん、ばっちり俺の正体にたどり着いたらしいな。
「だから、土下座しなくていいから」
「だだだだめです失礼ですよもやアルニムア・マーダ様とはっ」
思わずツッコミ入れたら、頭を挙げずにぶんぶん横に振った。ちゃんと俺の本名……一応本名か、言ってる辺り本当に分かったようだ。
うん、ダルシアは全力でパニックに陥ってるな。さすがに、邪神がロリっ子化してるとは思いもよらなかっただろうしなあ。
「そこは疑わないんだ?」
「だだだだって、バングデスタ様やアルタイラ様の上にお立ちになる方といえばアルニムア・マーダ様しかおられませんもの!」
顔も上げてないのに彼女、顔真っ青で冷や汗ダラダラしてることが何となく分かる。というか、四天王の上って俺だけだったんだ。俺、副官とかつけてなかったっぽいな。
「間に誰もいなかったんだ?」
「我らが配下のまとめ役でしたので」
「なるほど」
しれっとルッタが答えてくれたので、こっちもあっさり納得しよう。昔の話だし……ああ、四天王が副官役だったわけな。それぞれの種族をまとめてくれて、それで。
……おい、人間の副官役いないな。カーライルにでもやってもらうかな?
「あ、あの、ものすごく申し訳ないのですが」
そんな事を考えているところにひどく聞こえづらい、小さな声でダルシアがぼそぼそと言ってきた。何か耳真っ赤なのが、浅黒い肌なのに分かる。てか、軽く尖ってるんだな。コウモリってこんな耳だっけか。
ま、それはそれとして。なんだろう?
「ん、どした?」
「下着の替え、ないでしょうか……」
……下着の替え?
あー、もしかしてもしかするかな。しょうがねえ、ファルンでも呼んでくるか。
いや、さすがに俺の中身は別としても、神様にぱんつの面倒見てもらったりしたらこの彼女、まじであの世行ってしまうかもしれないし。




