031.どうしてここに来たのかな
ごっくん、とほどほどに飲み干して、いつものようにご挨拶。
「ごちそうさまでした」
「おそまつ、でした」
普通にミンミカも答えてくれたので、良しとしよう。
あー美味かった、ってビールあおるおっさんじゃねえんだけどな、俺は。……もっと酷いか。人様から精気吸い取ってる邪神だしな。
ついでに軽く吹き込んでおいたんだが、ミンミカは効いてるのかいないのか、ほにゃんととろけた笑顔を見せている。と言ったらちょっとエロいかもしれないけれど、何しろウサギなので半分眠そう、くらいにしか見えないところは何だかな。
「そういえば」
俺が吸ってる間見張っていてくれたみんなのうち、ファルンがふとなにか気づいたように首を傾げた。床にぺたんと座っていたミンミカを立たせてベッドの端に座らせながら、軽く尋ねる。
「ミンミカさんは、探し物でスラントに来られたと言ってましたわね」
「うん。おにいちゃん、さがしてます」
素直に答えるのもミンミカは結構もともとっぽいから……まあ、元から俺の信者だし、いいか。
というかお兄ちゃん、か。これはどういう意味だ、と思ったのはカーライルも同じだったらしい。俺に椅子を差し出してきたので、ありがたく座らせてもらおう。木の椅子だけど、ちゃんと座布団乗っかってるので座り心地は悪くないな。
「『お兄ちゃん』は、本当の兄上のことでいいのか?」
「はいです。アムレクおにいちゃん、エンデバルにいるかもしれないから」
「エンデバル?」
ミンミカの兄のアムレク、推定雄ウサギ獣人。エンデバルにいるかもしれない、というのは何でだろうと思ったんだが、すぐわかった。
エンデバルでマーダ教の信者が面倒起こしたからだ。彼女はマーダ教信者だし、兄が同じでもおかしくはない。
第一、問題起こすくらいだからそれなりの数、マーダ教が潜んでいるってことだ。
「マーダ教の信者なのは、同じか?」
「ミンミカのかぞくは、みんなコータさまをしんじているです」
「なるほど」
シーラの質問にこくこくと頷いて答えたミンミカは、ピアスがついたままの自分の耳をそっと手で押さえた。彼女にとっては、大事な物なんだろうな。
それはさておいて、要するにどういうこった。
「……ミンミカは、自分と同じマーダ教の信者である兄上を探してエンデバルに向かっていた。その途中で、スラントにマーダ教の信者が入っている恐れがある、という話を聞いた。それを兄上かもしれない、と思って来たということかと」
「あ、そゆことか」
カーライル、分かりやすいまとめありがとう。何しろ、マーダ教って隠してないといけないからそういうヒントは逆に重要だもんなあ。
とはいえ、ミンミカのあては外れた、ということになるな。ウサギいないし。
「手配書に書いてあったのはあの三人だけだったから、ミンミカのお兄さんはいなかった……よな」
「はいです。あのひとたち、ミンミカしらないです」
「だよねえ」
あいつらもマーダ教だったけど、ミンミカもそうだったとはどうも気づいていなかったようだ。気づいてたらこの子割と単純だし、言いくるめて仲間に引き入れたりしてそうだもの。
「となると……次の目的地は、エンデバルで良さそうですね。コータ様」
「ああ」
カーライルの質問に形を借りた確認に、俺は頷く。エンデバルにいるマーダ教信者が、全員とっ捕まったとはどうも思えないからだ。
今までに見たマール教の信者がどうも間抜けだったりおっとりだったり、いまいちだからなんだけど。
「ちゃんとした信者なら、味方につけておきたいからな」
超少数派であるマーダ教のトップとしては、少しでも味方の数は増やしたいんである。
といっても、ミンミカ襲ったあいつらのような連中は味方にしたくねえけどな。あれ、俺の名前借りて善良な市民脅してるだけ、っぽいし。
「コータさま、エンデバル、いくですか?」
「ああ、そのつもりだ。ミンミカも一緒に行くだろ?」
「はい、もちろんです!」
たれ耳ぴるぴる震わせつつ即答。あかん、懐いた小動物っぽくて可愛いわこいつ。役に立つかどうかはともかく、手元に置いといて可愛がるにはちょうどいい。悪役にはペット必要……あれ、ペット枠か、ミンミカ。
まあ、いいけどな。




