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306.無理をさせるな馬鹿神官

 飯を食って……ああ、結局例の兄ちゃんにほどほどにおごってもらったんだけど、それでホッとして部屋に戻って寝て、翌朝。


「お、おはようございます、コータ様……こちらの鍛冶師に依頼されたということで、追加の資金を持ってまいりました……」

「コータさまああああああ」

「うわっ」


 起きてすぐ、宿舎にシーラと、それから半泣きのカーライルがなだれ込んできた。いやもう、残念イケメンここに極まれりって感じか?

 というかシーラ、カーライル一人くらいなら簡単に連れてこられるだろうに何で疲れた顔してるんだよ。翼も何かヘタれてるし。

 いや、夜飛んできたから、ってのもあるんだろうけれど。


「……シーラ。カーライル、何で連れてきたんだ?」

「コータ様のことが心配だー、としがみついて離れませんでしたので、仕方なく」


 あ、それでか。メンタルのほうが疲れたんだな、そりゃそうか。

 こーたさまあああ、なんて残念な神官が泣きながら連れて行けーとしがみつくんだ、飛んでくるにしても疲れるわ。何と言うか、ご苦労さま。


「何かおつかれ……ベッド空いてるから寝ろ」

「ありがとうございまふ……」


 しょうがないからそう言ったら、シーラはふらふらベッドに歩いていってそのまま顔からダイブした。ばふん、という音に重なるように一言だけ、吐き出して。


「おやふみなはい」

「お、おう」

「おやすみ、ルシーラット……」


 スティもルッタも、そのままぐうぐう寝始めたシーラを唖然として見ている。おい、どがつく残念イケメン神官、どれだけシーラを疲れさせたんだ。あと足元でえぐえぐ泣くの、そろそろ終われ。


「砦の探索に行かれるまでは我慢できましたが、その後の話をシーラ様より伺ってもう、我慢できませんでしたっ」

「あーごめん、わかったわかった」


 ダメ親父か親馬鹿炸裂か、お前は。いやまあ、ある意味俺の父親代わりなんだろうけどな、お前は。

 とはいえ、カーライルまで来てしまって城はどうすんだよ。聞いてみるか。


「というか、城の方は大丈夫なのか?」

「ファルン殿が回してくれておりますし、今のところ問題はございませんので」


 即答してくれたのはいいけれど、ファルンは一応マール教の僧侶だぞ。いや、俺の下僕だけどね。

 すると、寝てたはずのシーラがむくりと上半身を起こして一言。


「すぐに自分が戻りますので、その点でも問題はないかと」

「ごめんな、シーラ……」

「ふぁい」


 言うだけ言って、再びバタンキュー。あー、これは戻るにしてもまず休ませるしかないな、うん。

 ひとまずジェイレン呼んで事情説明して、追加料金払っとくか。このへんは、いくら下僕相手でもきっちりしないとな。

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