297.砦の出口とおっさんと
さて。
帰るのはいいんだけど、表に戻るのは問題だな。この部屋からちょっと距離があるから、万が一衛兵とか一般人とかが戻ってきててもわからないし。
そういえば、この砦には裏口があるんだっけ。なら、そちらを使うか。
「裏から出て帰ろう。表だと鉢合わせするかもしれないし、裏口の確認もしておきたい」
『承知いたしました』
だからそう提案すると、三人とも声を合わせて答えてくれた。ああ、俺がトップなんだから提案って実質的に命令か。
でも、駄目だったらちゃんと言ってくれるから、そこは信頼している。
「スティ、先頭行ってくれ。裏でも、誰かいたら大変だ」
「お任せください」
「ルッタはヴィオンを城まで連れ帰ってやってくれ。シーラ、最後尾頼んだ」
「はっ」
「分かりました」
何か俺が陣形指示してるけど、実際戦争になった時ってどうしてたんだろうな。配下任せの時はともかく、俺が総大将やってたときとか。
ま、今は記憶がないこと分かってもらってるから、四天王とかに頼めると思うけど……やだな、戦争って。
「こちらから、森の中にある洞窟に出ます。そこから外に出れば大丈夫です……サンディタウンから少し距離はありますが、半日あれば」
「なるほど」
そんな感じでスティに案内され、洞窟に出て進んだ。途中で岩の壁をどけて通り抜け、元に戻す。隠し通路みたいなもんだから、結構慎重なんだよね。
そうして、洞窟の外に出てすぐ。
「んぉ?」
「何奴!」
背の低いおっさんと、鉢合わせした。とっさにスティが後ずさって距離を取り、重心を軽く落とす。対するおっさんの方はぽかん、とこちらを見ているだけで……アレなんだっけ、地人族? 多分それだ。
がっしりした身体に厚手の作業着、ツルハシやらスコップやらいろいろぶら下げてるおっさん、まるでドンガタの村で会ったガイザスさんみたいな……って。
あれ、まじでガイザスさんか?
「お待ち下さい、バングデスタ様!」
「っ」
「ルッタも駄目だ、あれ多分知ってる人」
「おや」
爪を振り上げかけたスティを、シーラが声張り上げて止める。剣に手をかけたルッタの方は、俺がその手を握ってストップさせた。
てかシーラ、スティの本名呼んでしまったぞ、大丈夫か。
なんて考えてる余裕のあるうちに慌てて前に出て、おっさんとの間に入った。そうだよなあ、考えてみりゃスティとルッタは知らない人のはずだから。
「ガイザス殿ではありませんか!」
「ありゃ? ……ああ!」
シーラに名前を呼ばれて、おっさん……ガイザスさんがやっと思い出したように両手を打つ。
て、まーじーかー。こんなところで会うなんて、思ってなかったよ。




