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027.雑魚はさっさとお仕置きよ

 さすがにシーラもカーライルも、手配書にあった顔だと気がついたようだ。カーライルが俺を抱える腕に、力が入ったから。

 俺は慌ててミンミカの手を引っ張って、自分の方に引き寄せる。


「ふえ? コータちゃん?」

「おとなしくしてて。大丈夫だから」

「二人とも、動かないでください」


 俺の言葉の後にカーライルが低い声で言ってくれたのに、ちょっとホッとした。うちの連中じゃ今のところシーラが一番強い、ってのは分かってるんだが、まあイケメンの特権ってところだな。おのれイケメン。

 とはいえミンミカは涙目で、垂れた長い耳がぴるぴる震えてる。ロップイヤー、俺は嫌いじゃないな。いやそうじゃなくて。


「こいつの連れか。下手くそな似顔絵だが、本当に特徴だけはよく捉えている」

「ぷぎゅ」


 一方シーラ、もう潰れてるのにぐりぐり追い打ちかけてどうするんだよ。かわいそう、とは思わないけどさ。あとそれ、漏らしてるから汚れるぞ。

 ま、そこら辺はともかく。シーラの冷たい悪態に、二人はがーと反論というか噛み付いてきた。で。


「黙れ黙れ、マール教の手先共が」

「お前も鳥人なら、アタシらにマール教がやったことを忘れてるわけじゃないだろうに」


 あれ。鳥人のほう、女性なんだ。声と、マントの下からちらっと見えた密かなおっぱいで気がついた。

 シーラと違って全身羽毛で、胸とか股間とかの急所だけ革鎧で包んでる。これは獣人もあまり変わりないな。マントかぶってるってことは……ああ、翼小さいや。封印解ける前のシーラと同じくらい。


「だからといって。何の後ろ盾もなしに喧嘩ふっかけるとか、ただの間抜けでしかないな」

「何をっ!」

「勝てない戦はただの無謀でしかないぞ?」


 割と小者な発言する相手に対して、シーラは上から目線っぽい台詞で煽る。まあ、相手は多分雑魚で対するシーラは『剣の翼』ルシーラットだしなあ。上から目線もやむなしか。

 ……そうすると、俺が究極の上から目線になるな。いや、俺はめんどくさいからやめておこう。

 そんな、しょうもない俺の思考を知らない目の前の連中は。


「駄目だな、お前たちも」

「何……」

「二人がかりでその程度。それで喧嘩を売るな、面倒だ」


 ぐしゃ、べき。


「……ぃあああああ!」

「ぐふううううっ!」


 あっさり、決着がついていた。二人がシーラに突っ込んでいった次の瞬間、仲間と同じように地面に転がって。

 シーラの右手が鳥人の首にラリアット入れて、左手が獣人の鼻面をむんずと握りつぶしたんだよな。あーあ、ご愁傷さまだ。

 ……この力でシーラは、最後まで俺についてきてくれたんだ。いや、これでも多分手加減してるけど。


「こちらですう」

「はい!」


 どこかのんきなファルンと一緒に僧侶さん、そして衛兵の人たちが来たのはその直後だった。




「手配にあった、邪教の信徒どもですな。我らが引き取ります」

「衛兵の方か。では、よろしくお願いいたします」

「任されました。ほら、とっとと立て」


 それなりにきちっと揃った革鎧をつけた衛兵たちが、泡吹いてひっくり返ってる三人をシーラから受け取った。それぞれロープでぐるぐる巻きにして、ずるずると引きずっていく。


「まあ、皆様」

「彼女、よろしくおねがいします」

「あ、あの、あの」

「大丈夫ですよ。マール教は皆の上に等しく癒やしをもたらすのですから」


 僧侶さんの方には、カーライルがまだ怯えてるミンミカをお願いすることにしたようだ。この町の僧侶さんなら、獣人をひどく扱うこともなさそうだし。もともとこの町、獣人も結構いるみたいだしな。

 しかし、皆の上に等しく癒やし、ねえ。ふうん。


「承知しました。お話を伺いたいので、皆様も来ていただけると助かるのですが」

「それはもちろん」

「もちろんですよ。ね、コータちゃん」


 ファルン、俺にちゃん付けして呼ぶの楽しそうだなあ。ま、いいけどよ。


「はあい」


 だから俺も、自分じゃキショイけど外見に合わせた返事をした。これ、いつかは慣れるのかね?

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