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実は異世界の神様だったらしい俺。それも邪神で少女神  作者: 山吹弓美
十四:メイヒャーディナルの峠
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239.山歩きはいかがかな

 メイヒャーディナルの峠は、観光地巡りというよりは山道散策といったほうが正しいと思う。

 山の中をのんびり歩いていくとたまに森が開けて、そこが何やらの場所だったりするんだよね。例えば今、道の向こう側に見える崖の下に突き刺さっている岩とか。


「……おっきい岩ですね」

「獣王バングデスタが、勇者メイヒャーディナルめがけてぶん投げた岩、らしいっす」

「投げた?」

「投げたんじゃないすかね。蹴ってもいいすけど」


 コングラが説明してくれるけど、それって聖地なのかね。戦場跡だけどさ。

 ちなみにこの岩、地面の中に突っ込んでいる部分も含めると一軒家まるごとサイズくらいとか。こっちでいう一軒家なんで、多分俺の知ってるのよりはちょいと小さいかもしれないけど。

 あとこの岩、実は縦半分にばっきりと割れている。で、ここから見てだけど多分、一メートルくらい間を開けて突き刺さってるんだな。どう見ても人工的なあの割れ方は、おそらく。


「で、真ん中がすっぱりと割れてるのはもしかして」

「勇者が一刀両断したらしいですね」

「すごいですね!」


 ミンミカが、目をキラキラさせて眺めている。それは良いけど、あまり柵から身を乗り出すなよ。こっち側も道のすぐ横、崖なんだから。

 とまあこんな感じで勇者が割った地面とか獣王がぶん殴って折れたままの巨木とか、そういうのにいちいち説明板がついているわけだ。これは一種のオリエンテーリングというかハイキングというか、なかなか体力のいる観光である。


「大丈夫ですか、コータちゃん」

「ごめんなさい、助かります……」


 うちのメンバーで一番体力がないのは……身体のちっこいこの俺であった。さすがに前世が社畜でも、身体がロリっ子じゃあかん。

 そんなわけで、カーライルに肩車してもらっている。疲れたらシーラに変わってもらう予定。


「ここまでの崖も、どれだけが元からあったものやら」

「一応下に川は流れているから、元々の崖もそれなりにあるんだろうがな」


 シーラとジランドは、時折道の下を覗きながらそんな会話を交わしている。ああ、勇者とバングデスタの戦闘で崖になっちまったところ、さっきの割れた地面だけじゃなさそうだもんなあ。

 というかバングデスタも大概だけど、勇者メイヒャーディナルもそれに付き合ってぼこぼこ自然破壊してるんだからすごいというか、よく戦えたというか、勝ったんだよな。どうやってだよ、おい。


「それで、決着がついた場所があちらだそうですわ」


 ファルンが手を伸ばして、やっぱりとある崖の方向を指さした。つか、観光客地味に多いな。しっかりファルンが指した方角見て感心したり、拝んでる人もいる。


「がけが、えぐれてますね?」


 人混みの後ろからぴょん、と軽くジャンプして前方を見たアムレクが、目を丸くしてこっち向いた。

 じわじわとした人の動きに合わせて俺たちが前の方まで行くと、確かに崖がえぐれてる……というか、バトル漫画でこう、登場人物がぶっ飛ばされて崖や壁にぶつかったときみたいなべこっとした凹みができている。


「多分、バングデスタ……さま、がぶつかった跡じゃないでしょうか」

「うわあ」


 カーライル、一応周囲に人がいるから『さま』の部分はめっちゃ小声になった。つけない、という選択肢はなかったんだな、お前。

 しかし、どう見てもバトル漫画の戦闘跡だね、これは。

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