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220.後はお前に任せたぞ

「ほどほどにせねば、自分の同行者たちがどうなるか分からんぞ?」

「汚い真似を!」


 シーラが悪役っぽい台詞を吐き、それにルッタが怒る。しかしこの戦闘、どうやってケリつけるつもりなんだろうな。

 うまいことなんとかしろよ、シーラ。


「さあ、急ぐぞ」

「はいっ」


 シャングリアと名乗った彼女に連れられて、その場を離れる。

 しばらく進むと、木々が音を吸収するのか鳥人剣士どうしの戦闘の音が聞こえなくなった。ここらでそろそろかな、と俺は足を止める。で、か細い声で呼んでみるのはある意味ロリっ子特権か。


「あの、シャングリア様」

「何かな?」


 俺に呼ばれて、彼女も足を止める。それから慌てて俺の方に近づき、しゃがんだ。よし、では。


「いただきます」

「んうっ?」


 まあ、いきなり幼女にキスされたら驚くよな。シャングリアは目を見開いた状態で、カチーンと固まっている。

 それで自分の精気を吸い取られるのも、幼女の姿をした邪神に気を吹き込まれて下僕にされるのも、この鎧娘は気づけなかった。

 残念でした、マール教。


「んふう、うー、ううっ」


 すうっと精気を吸い取ると、すぐに抵抗が弱まった。こいつはさっぱりした薄味で、正直水みたいな感じしかしないな。

 で、精気を抜かれて体力が落ちたところに俺の気を流し込まれて、彼女は抵抗する気力すらなくなって。


「ふう、ごちそうさまでした」

「お口に合ったのなら、幸いです。ご主人様」


 唇を離した俺の前には、両の太ももをもそもそとすり合わせながら俺のことを主人と呼ぶ、下僕が一人いた。

 さて、こいつをどうするかだけど。


「お前は確か、サングリアスの配下だな?」

「はい。サングリアス様は父方の本家を継がれるお方ゆえ、その補佐として同じ任務をいただく部隊に配属されました」


 あ、やっぱり身内か。本家の跡継ぎ娘と、そのおつきに任命された分家の娘ってところか。

 なら、何も問題はないな。


「サングリアスは既に俺の下僕だ。他の部隊の連中に気取られないように気をつけながら彼女の補佐を務め、マール教やマーダ教に関する情報を集めろ。情報はファルンのもとへ送れ」

「はい、ご命令のままに」

「それと、お前たち二人や俺とその配下以外の人物がいる場所ではこのことは忘れていろ。ただし、情報収集だけは怠るな」

「もちろんでございます。ご主人様のご命令には、全て従います」

「よし」


 取り急ぎ、こいつにできそうなことと秘密保持のための命令はきっちり突っ込んでおく。おとなしく頭を垂れてくれたので、大丈夫そうだな。


「それと、お前が俺の下僕であることがマール教側の第三者に漏れた場合、お前は俺の命令も含めてすべてを忘れろ」

「機密保持のためでございますね。承知いたしました」


 この辺もきっちり理解してくれているようで、何よりだ。

 じゃあ、最後に一つ命令をしておくか。


「俺の配下であるシーラを、ルッタにお前がやったと気づかれることなくうまく逃がせ。そうだな、獣でも暴れたとか何とか言えばいいか」

「この近くでしたら、猟師がよく獲物を追っております。先ほどもちらりと見かけましたゆえ、やってみましょう」


 ……俺、もしかしてちょっと無理言ったかな? ともかく頑張ってくれよ、シャングリア。

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